リンクと料理
【マモノカレーと赤い月】
「お、今日は赤い月か」
ヒガッカレ馬宿にやってきた時、東の空から赤い満月が顔を出し始めていた。
「相変わらず赤いな」
赤い月が昇る時、倒した筈の魔物が復活するのは厄介だったが彼らの武器や盾も同時に復活するためリンクにとっては便利な現象という印象だった。
「あ、そうだ」
ふと何か思い出したリンクはごそごそとポーチを探り、小さな小瓶を取り出した。
その小瓶には紫の液体が入っており、中で何やら蠢いているようにも見えてかなり不気味だった。これは巷で噂のマモノエキスというもので、魔物に詳しいキルトンという男から買ったものだった。その際リンクはキルトンから秘密のレシピを教えてもらっていたのだが、試す機会が中々なかった。
「マモノカレー、作ってみようかな」
ちょうど空には禍々しい赤い月が昇ってきている。得体の知れない料理を作るのにおあつらえ向きのシチュエーションだった。
◇ ◇
ゴーゴーニンジンやケモノ肉をじっくりと煮込み、ゴロンの香辛料を加えると同時にこの料理の主役であるマモノエキスを投入した。料理鍋の中身はみるみる紫色に染まり、香辛料とは違う刺激臭がし始める。しばらくして出来上がった紫のカレーとあらかじめ炊いておいた白飯を皿に盛り付ければ、その異様さが際立った。
「これ……本当に食べられるのかな」
岩でも食べるリンクでも、今回ばかりは躊躇していた。なにせ魔物の成分が詰まっていると言われるマモノエキスだ。食べて何が起こるか分からない。
「……食べなきゃ食材が無駄になっちゃうか」
そう自分に言い聞かせて、覚悟を決めた。
刺激臭のする紫のルーをスプーンで少しだけ掬ってみる。意を決して目をつぶり紫の物体を口の中に素早く流し込んだ。
「!」
それは今まで食べたことのない味だった。
刺激臭はつらいが、味は未知であり美味であった。マックスドリアンと似た系統のクセになる味だ。
そこまで認識した後はあっという間だった。リンクは懸命にスプーンを動かし、マモノカレーを口に運ぶ。その速度はいつもの食事より圧倒的スピードだった。
「これは……やみつきになっちゃうな」
すっかり空になった皿を見つめて、リンクは苦笑する。
「ゼルダ姫を救い出したら作ってあげようかな」
記憶の中のあの人は何にでも興味津々だった。このエキスについても食いついてきそうである。その状況を想像すると楽しくなった。
「その為にも早く厄災を倒さなきゃな」
体力気力共に充分。神獣は全て解放しているし、強力な武器もいくつも所持している。元々この地を訪れたのも古代兵装の矢の補充のためだ。足りないのはあの廃城に乗り込む覚悟と勇気だけだった。
「もう少しだけ、待っていてください」
デスマウンテンの向こう、中央ハイラルの方を見つめながらリンクは誰とも無しにそう呟いた。
「お、今日は赤い月か」
ヒガッカレ馬宿にやってきた時、東の空から赤い満月が顔を出し始めていた。
「相変わらず赤いな」
赤い月が昇る時、倒した筈の魔物が復活するのは厄介だったが彼らの武器や盾も同時に復活するためリンクにとっては便利な現象という印象だった。
「あ、そうだ」
ふと何か思い出したリンクはごそごそとポーチを探り、小さな小瓶を取り出した。
その小瓶には紫の液体が入っており、中で何やら蠢いているようにも見えてかなり不気味だった。これは巷で噂のマモノエキスというもので、魔物に詳しいキルトンという男から買ったものだった。その際リンクはキルトンから秘密のレシピを教えてもらっていたのだが、試す機会が中々なかった。
「マモノカレー、作ってみようかな」
ちょうど空には禍々しい赤い月が昇ってきている。得体の知れない料理を作るのにおあつらえ向きのシチュエーションだった。
◇ ◇
ゴーゴーニンジンやケモノ肉をじっくりと煮込み、ゴロンの香辛料を加えると同時にこの料理の主役であるマモノエキスを投入した。料理鍋の中身はみるみる紫色に染まり、香辛料とは違う刺激臭がし始める。しばらくして出来上がった紫のカレーとあらかじめ炊いておいた白飯を皿に盛り付ければ、その異様さが際立った。
「これ……本当に食べられるのかな」
岩でも食べるリンクでも、今回ばかりは躊躇していた。なにせ魔物の成分が詰まっていると言われるマモノエキスだ。食べて何が起こるか分からない。
「……食べなきゃ食材が無駄になっちゃうか」
そう自分に言い聞かせて、覚悟を決めた。
刺激臭のする紫のルーをスプーンで少しだけ掬ってみる。意を決して目をつぶり紫の物体を口の中に素早く流し込んだ。
「!」
それは今まで食べたことのない味だった。
刺激臭はつらいが、味は未知であり美味であった。マックスドリアンと似た系統のクセになる味だ。
そこまで認識した後はあっという間だった。リンクは懸命にスプーンを動かし、マモノカレーを口に運ぶ。その速度はいつもの食事より圧倒的スピードだった。
「これは……やみつきになっちゃうな」
すっかり空になった皿を見つめて、リンクは苦笑する。
「ゼルダ姫を救い出したら作ってあげようかな」
記憶の中のあの人は何にでも興味津々だった。このエキスについても食いついてきそうである。その状況を想像すると楽しくなった。
「その為にも早く厄災を倒さなきゃな」
体力気力共に充分。神獣は全て解放しているし、強力な武器もいくつも所持している。元々この地を訪れたのも古代兵装の矢の補充のためだ。足りないのはあの廃城に乗り込む覚悟と勇気だけだった。
「もう少しだけ、待っていてください」
デスマウンテンの向こう、中央ハイラルの方を見つめながらリンクは誰とも無しにそう呟いた。