ブレワイ&厄黙二次小説

【英傑達の雷獣退治】

 我は雷獣。金色こんじきライネルと呼ばれる個体である。
 目立つ色をしているからか、色んな魔物や人、亜人に戦いを挑まれてきた。その都度挑まれた相手を殺していたら、やがて誰も我に近づかなくなった。
 群れるのは性分ではない。我は独りを謳歌しながら、誰かがまた戦いを挑んでくることを今か今かと待っていた。
 そんな時だ。彼らがやってきたのは。

 ◇ ◇

 それは鳥が頭上空高く旋回する穏やかな昼下がりだった。

(…………?)

 我の縄張りに侵入する影が現れた。数は三人。三人はゾーラ、ゴロン、ゲルドと種族はバラバラだったが揃いの青い衣を身に着けており、質の良い武器を持っていた。
 あれはきっと噂に聞く“エイケツ”と呼ばれる特別な力を持った者達だ。

(……ダガ)

 我は強い。他の雷獣より遥かに強いことを今までの戦いで証明してきた。そんな我が矮小な人や亜人に遅れを取ることなどあってはならなかった。
 彼我の距離はまだ遠いが、弓の射程範囲だ。
 我は赤いゾーラに目をつけ、電気の矢を放つ。ゾーラは電気に弱いのは魔物の中でも常識だ。
 するとゾーラの隣にいた大柄のゴロンが前に出てきて立ち塞がる。確かにゴロンには電気は効きづらい。だが獣神の弓で放たれた矢の破壊力は計り知れない。ゴロンであっても浅くない傷を負うだろう。

(……ドウデル)

 二射目を準備しながら、彼らの様子を伺う。するとオレンジ色の光がゴロンを包んだかと思うと、放った電気の矢を全て跳ね返していた。

(ナニガオキタ……?)

 “エイケツ”はそれぞれ特殊な技を持っていると聞くが、なるほど今のがそれのようだ。

(――オモシロイ)

 間髪入れずにゴロンが転がりでこちらに突っ込んでくる。弓から大剣に持ち替えてそれに応じた。

「うぉおおおおおお!!」

 ゴロンの転がりを大剣で受け止めれば、その凄まじい力にジリジリと押し負け後退させられる。すごい力だ。だが甘い。

「?! 俺様が弾かれただとォ!?」

 大剣を強引に横に振り抜けば、ゴロンはバランスを崩してその場に尻もちをつく。

(モラッタ……!)

 振り抜いた勢いそのまま、ゴロンを大剣で叩き潰すその刹那……。

「甘いよ!」
「っ!!」

 指が鳴る音が聞こえた次の瞬間、特大の雷が我に落ちてきて膝を屈する。空は晴れているのに、一体なぜ……?

「よし、このライネルにも私の雷が効くようだね」

 雷による痺れとダメージに耐えて立ち上がると、後方にいたゲルドの女がニヤリと笑う。驚くべきことに、このゲルドは雷を操れるらしい。

(ナラバ……!)

 ゲルドの女に肉薄して大剣を振り回す。

「くっ……!」

 ゲルドの女は持っていた盾で大剣を防ごうとするが、無謀なことだ。まずは一人。あの雷を封じれば、後の戦いも有利に進められるだろう。

(――ソウイエバ)

 噂に聞く“エイケツ”は五人であると聞いていたが、あと二人はどこだ?

(!)

 何か、頭上から風を斬るような音がするのを耳が捉える。即座に空を見上げれば、大きな鉤爪が顔面に迫っていた。

「!?」
「ふふっ、やっぱり頭上に僕がいるって気付いてなかったみたいだねぇ」

 間一髪避けたが、思わず驚愕が口から漏れた。
 空高く旋回していた鳥はリトの戦士だったのだ。あれだけの高さからこの速度で急降下して我に攻撃してくるのはかなりのリスクがあった筈。それを難なくやりきったこの青いリトも他の三人と同じ“エイケツ”であることが確信できた。

「これでも喰らいなよ……!」
(……!)

 青いリトが大きな木製の弓を構える。もう片方の手には複数のバクダン矢。放たれる直前に大きく後方に跳躍して回避した。

「ふん、やるじゃないか」

 そう言って、青いリトは他の三人と足並みを揃えるように彼らの近くに降り立つ。
 仕切り直しだと言わんばかりに。

「一つ言っておくけど……」

 青いリトがまた嘴を開く。この戦士、他の三人と比べて随分と口が回るようだ。

「五人目の英傑はここには来ないよ。この戦いは僕ら四人の力を国に示す為のものだからね」

 言っていることはあまり分からなかったが、五人目の“エイケツ”はここにはいないらしい。

(…………)

 密かにホッとする我がいて驚愕する。このような事態、生まれて初めてのことだった。
 複数の相手と戦って勝ったことは何度もあるが、その時とは条件が違いすぎる。
 確実に勝ちにいける方法を考えなければ……。

(――――)

 おもむろに地面を軽く蹴る。狙いは定まった。あとはそれがうまくいくかだけだった。

「ガァア……ッ!!」
「来るよ、皆!」

 咆哮し、大剣を構えながら最高速度で突進する。

「危ないミファー!」
「!!」

 脇目も振らず赤いゾーラに突進し大剣を振り下ろせば、ゾーラは持っていた細身の槍で我の大剣を受け止める。

「く……っ、うぅっ……!」
「大丈夫か?! ミファー!」
「私なら、大丈夫……だからっ!」

 赤いゾーラがそう叫べば、他の三人は歯がゆそうに引き下がる。

(――バカメ)

 我はほくそ笑む。このゾーラが他の三人より力がないのは明白。赤いゾーラが我との鍔迫り合いに負けて倒れるのは時間の問題だった。

(……?)

 ふと、赤いゾーラが微かに笑ったような気がした。

(……ウォッ?!)

 次の瞬間赤いゾーラの姿が消え、鍔迫りあっていた力が急になくなり我は前方に倒れ込む。よくよく周囲を見れば、赤いゾーラはここから少し離れた所にいた。鍔迫りあっていた力をうまく外に逃がして、自身も我と距離を取ったようだ。

「力は、受け流すこともできるんだよ!」
(シマッタ……!)
「よくやったミファー!」

 チャンスとばかりに、ゲルドは指を鳴らし青いリトはバクダン矢を放つ。避ける暇さえ与えられず、雷とバクダン矢が断続的に我に直撃する。雷で怯んだ隙にバクダン矢でヘッドショットされては、この猛攻から脱することは我でも不可能だった。

(クソッ……!)

 十数分後、雷の落ちる音とバクダン矢の炸裂音が止んだ時、我の体力もゼロになっていた。
 自慢の美しい金色の毛並みは今は黒焦げで見る影もなく、プスプスと煙が上がっていた。

(――……!)

 どうと地に伏せる。四肢から塵になっていく。無様な敗北者である我の最期を“エイケツ”の四人は静かに見守っていた。その高潔さが今は清々しい。
 最期に彼らの戦いぶりを讃える為に残った力を振り絞った。

「ミゴト……ナリ」

 それだけ言って、我は塵になった。
 悔いはない。こんなに楽しい戦いは後にも先にもないだろう。
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