闇落ちリンクの話

【プロローグ】


 ―――ハテール地方、ハテノ村。

 王家の姫が厄災封印の為に命を落として一年後、退魔の剣の主であるリンクは故郷であるハテノの村を訪れていた。
 既に父も母もおらずすっかり埃っぽくなった生家の二階で立ち尽くすハイリアの英傑はしかし、酷く無表情な顔を張り付かせていた。
 彼の視線の先には机に置かれた自身の日記といつか王家の姫や英傑達と撮った一枚の写し絵があった。
「――――」
 それをひとしきり見つめた後、リンクは誰かに語りかけるように口を開く。
「父さん……俺、父さんみたいに立派な騎士には結局なれそうにないよ」
 それだけ言って、リンクは持ってきた大量の薪の束に炎の矢を放つ。バクダン矢でないのは炸裂音で他の村人に気付かれてしまうからだ。
「母さんごめん...…でも俺、決めたから」
 チリチリと炎が床板に燃え移るのを確認してから、かの騎士は密やかに生家から去っていった。
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