リトの英傑短編まとめ
【クムの秘湯の盾墓場】
――あれは僕らが英傑になったばかりの頃だったかな。
あの時はガーディアンの起動もまだ不安定で、たまに暴走することがあったのはあんたも知ってるよね?
王様があいつをあの姫のお付きの騎士にと決めた時もそうだったっけか……。
ま、とにかくその後も似たような事が何度かあったんだよ。
タバンタ村出身の兵士になりたての一兵卒がいたんだけど、そいつが暴走したガーディアンのビームで危うく死にかける事故があったんだ。
あの時は城にダルケルもあいつもいなくてさ。
ミファーが治癒の力使ってなんとか一命を取り留めたんだ。
だけどそれがすっかりトラウマになったらしくて、怪我が治ってすぐ兵士を辞めて故郷に戻ったって姫から聞かされたよ。
普通はここで話終わるんだけどさ、そいつ……村に戻った後も毎日夢にガーディアンが出て来て酷く魘 されてたらしい。
――余程怖かったんだろう。
食事もまともに食べられなくて、家族が不安がってるって話も聞いた。
終いには起きてる時でもガーディアンの幻覚が見え始めて、医者もとうとう匙投げたらしいってね。
なんでそんな話を僕が知ってるかって?
タバンタ村はリトの村と近いから、何もしなくても色々話が入ってくるんだよ。
その話を知ってしばらく経ったある日、野暮用でタバンタ村に寄ったら何やら村が慌ただしくてね。
何事かと聞けば例の元兵士が突然いなくなったから出来れば探すのを手伝ってほしいって頼まれた。
僕は二つ返事で元兵士の捜索に協力する事にしたよ。
そいつが城で大怪我した時、僕は殆ど何も出来なかったからせめてその位はと思ってね。
ツツキキ雪原やブリザー谷、兎に角色々飛び回って探し回った。
ヘブラ山山頂近くの山小屋を訪れた時、小屋の前で困った顔した盾サーファーの一団がいた。
話を聞くと『こんな寒い中防寒具も着てないおかしな奴から盾を無理やり奪われた』なんて言うんだ。
『それがないと殺される』と騒いでたともね。
そいつは盾を強奪した後、何かに怯えるように盾サーフィンのコースを滑って行ってしまったと聞いて、僕は密かに嫌な予感がしたんだ。
盾サーフィンの上級コースのゴールであるクムの地まで急いだんだけど……そいつ、クムの秘湯の片隅で凍えて息絶えてたよ。
皆から奪った大量の盾を抱えたままね。
盾が沢山あればガーディアンのビームも凌げると思ったんだろう。
発見してすぐ村の連中呼んで色々確認とってもらった後、僕が家族の元に運んだよ。
あと一歩って所だったのに、間に合わなくて……僕も、悔しかった。
………………。
あ、この話……ミファーには絶対に内緒だからな?
助けた奴が後々頭おかしくなって結局死んだなんて話、あのお姫様が知ったらきっと酷く落ち込むだろうしさ。
そうそう、その後盾はどうするか盗られた連中に聞きに行ったら皆気味悪がって誰も返してほしいって言わなかったよ。
元々あまり人が入らないような場所だったから今もそのままさ。
残された盾も多分もうサビがきて使えなくなってるだろうね。
◇ ◇
なんだよウルボザ、すごくげんなりした顔して。
あんたが酒の肴に背筋が寒くなる話をしてくれって言うから、わざわざこんな長話してやったのに。
――怪談話……?
フン、馬鹿馬鹿しい。
そんな年にもなって若い娘みたいな事言ってるあんたの方が僕はよっぽど恐ろしいね。
じょ、冗談だってばっ……!
真に受けないでよ。
あ、あんただって散々人をトリ肉扱いしてくるじゃないか。
おあいこだよ、おあいこ!
ほら、だから早くそのおっかない右手を下ろしてくれよ。
僕だって毎回あんたの雷にビリビリさせられたくはないんだからさ……!
――あれは僕らが英傑になったばかりの頃だったかな。
あの時はガーディアンの起動もまだ不安定で、たまに暴走することがあったのはあんたも知ってるよね?
王様があいつをあの姫のお付きの騎士にと決めた時もそうだったっけか……。
ま、とにかくその後も似たような事が何度かあったんだよ。
タバンタ村出身の兵士になりたての一兵卒がいたんだけど、そいつが暴走したガーディアンのビームで危うく死にかける事故があったんだ。
あの時は城にダルケルもあいつもいなくてさ。
ミファーが治癒の力使ってなんとか一命を取り留めたんだ。
だけどそれがすっかりトラウマになったらしくて、怪我が治ってすぐ兵士を辞めて故郷に戻ったって姫から聞かされたよ。
普通はここで話終わるんだけどさ、そいつ……村に戻った後も毎日夢にガーディアンが出て来て酷く
――余程怖かったんだろう。
食事もまともに食べられなくて、家族が不安がってるって話も聞いた。
終いには起きてる時でもガーディアンの幻覚が見え始めて、医者もとうとう匙投げたらしいってね。
なんでそんな話を僕が知ってるかって?
タバンタ村はリトの村と近いから、何もしなくても色々話が入ってくるんだよ。
その話を知ってしばらく経ったある日、野暮用でタバンタ村に寄ったら何やら村が慌ただしくてね。
何事かと聞けば例の元兵士が突然いなくなったから出来れば探すのを手伝ってほしいって頼まれた。
僕は二つ返事で元兵士の捜索に協力する事にしたよ。
そいつが城で大怪我した時、僕は殆ど何も出来なかったからせめてその位はと思ってね。
ツツキキ雪原やブリザー谷、兎に角色々飛び回って探し回った。
ヘブラ山山頂近くの山小屋を訪れた時、小屋の前で困った顔した盾サーファーの一団がいた。
話を聞くと『こんな寒い中防寒具も着てないおかしな奴から盾を無理やり奪われた』なんて言うんだ。
『それがないと殺される』と騒いでたともね。
そいつは盾を強奪した後、何かに怯えるように盾サーフィンのコースを滑って行ってしまったと聞いて、僕は密かに嫌な予感がしたんだ。
盾サーフィンの上級コースのゴールであるクムの地まで急いだんだけど……そいつ、クムの秘湯の片隅で凍えて息絶えてたよ。
皆から奪った大量の盾を抱えたままね。
盾が沢山あればガーディアンのビームも凌げると思ったんだろう。
発見してすぐ村の連中呼んで色々確認とってもらった後、僕が家族の元に運んだよ。
あと一歩って所だったのに、間に合わなくて……僕も、悔しかった。
………………。
あ、この話……ミファーには絶対に内緒だからな?
助けた奴が後々頭おかしくなって結局死んだなんて話、あのお姫様が知ったらきっと酷く落ち込むだろうしさ。
そうそう、その後盾はどうするか盗られた連中に聞きに行ったら皆気味悪がって誰も返してほしいって言わなかったよ。
元々あまり人が入らないような場所だったから今もそのままさ。
残された盾も多分もうサビがきて使えなくなってるだろうね。
◇ ◇
なんだよウルボザ、すごくげんなりした顔して。
あんたが酒の肴に背筋が寒くなる話をしてくれって言うから、わざわざこんな長話してやったのに。
――怪談話……?
フン、馬鹿馬鹿しい。
そんな年にもなって若い娘みたいな事言ってるあんたの方が僕はよっぽど恐ろしいね。
じょ、冗談だってばっ……!
真に受けないでよ。
あ、あんただって散々人をトリ肉扱いしてくるじゃないか。
おあいこだよ、おあいこ!
ほら、だから早くそのおっかない右手を下ろしてくれよ。
僕だって毎回あんたの雷にビリビリさせられたくはないんだからさ……!