五周年企画SSまとめ

 明朝、兄貴が訪ねてきた。

 出来の悪いほうの兄貴だ。つまりアレだ。アレアレ。ケッタクソ悪いヘッタクソな楽器で私の安眠を妨害するほう。

「ホームズさん。いい加減その銃を下ろしてくれねぇか――俺ゃそんな物騒なもん向けられるほど悪いこっちゃコレっぽっちもしてねぇんで」

「下ろすとも。君がそのフッサフッサのモッサモッサの中身スッカラカン頭からカツラをはずしたらな」


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♪しゃりんきー
♪6フィートのヒミツはね
♪教えてあげないよ
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【お客様のお声】

「同居人や弟を見下すために買いましたが満足しています」

※効果には個人差があります。



 私は彼が差し出した電報を奪い取ると同時に、後ろを向いた。そのすきに逃げ出そうと背中を見せた相手の髪を360度廻ってムンズと掴む。彼は叫んだ。

「イデデデデデ! よせやい!」

「新種の接着剤か? この匂いはテムズ川のドブさらいに扮しているんだな。手首に『JW我が命』の刺青」私は呻いた。

「あの頭のイカれたかわいそうな医学博士も気の毒なこったね。結婚してからもコスプレ趣味のストーカーにつきまとわれちゃ」

「それはジェニファー・ワトスンの略でっさ旦那。電話帳でワトスンを探せば一番上に来る大女優の! 匂いは三ヶ月風呂に入ってねぇから! 髪は地毛……」

「ふうん。じゃ、この電報にある『エタウバレケヨウゴツ。イコヒゼバレケルワウゴツ』の意味はわからんだろうね? おそらく兄貴のことだ。子供でもわかるようなタヌキ暗号じゃないかと」

 私は男に文面を見せた。彼は目を細め首を傾げた。

「タが一個しかありませんや。俺が思うに――」


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【お客様のお声】

「老女に変装するのに不便じゃないかって? ボズウェルが適当にごまかしてくれますから心配ないです」

※効果には個人差があります。


「もちのろんだ。最初からわかっていた。こいつは難関だな。文字列をずらすのか? ゴツゴツが二回も入ってるのを見る限り、よほど男に不自由してさみしいんだろう。バレケも二回。――バレ毛? 貴様やっぱり!」

「旦那。逆から読むとか」

 私は一瞬黙った。「そんな馬鹿な。後ろから読むなら『都合悪ければぜひ来い。都合よければ――』」

 ヴァイオリンの音色が窓の外から聴こえた。私はその方角をにらみつけた。

 男は許可もしてないのに部屋へ入り、私の後ろから窓の外を見た。

 下では黒眼鏡をかけたヴァイオリン弾きが目にも止まらぬ速さで腕を動かしている。

 階下の男が叫んだ。「ふざけんな! 何時だと思ってやがる!」


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【お客様のお声】

「足が長いとやはり女性にモテるんですよね」

※効果には個人差があります。


 ピタリと止む音楽。

 そこだけ一流オーケストラも裸足で逃げ出すような音で、ハチジ、と弾いた。うっかりウットリと耳を澄ませて聴き入れば、発情期の猫並の音がまた。

 私は超絶技巧を繰り出しながらニヤッと笑うヴァイオリン弾きに中指を立てた。

「僕は在りし日のミュージカルスターより更に男前だとあの人に言って来い。さあ。さあさあさあさあ!」

「まあ、その必要はないんだがね」

 パタン、と後ろで扉が閉まる。暗号文を持ってきた浮浪者は、振り返った私の目を見て両手をあげた。



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【お客様のお声】

「シークレットなんちゃらだと靴を脱いだらバレますしね。お互い気まずいったらないですよ」

※効果には個人差があります。


「シーガソン、とりあえずお手てに持ってる玩具を渡しなさい」

 私は鼻を鳴らした。やはりこちらがくそったれ兄貴だったか。

「お兄ちゃんは永久にマイクロフト一人」

「私にとっての弟も永遠に一人。まあ時に妹が増えたり従兄弟が増えたりするけども、基本的には君一人だ」

「何のようなの。それで」

 兄のシャーロックは銃口を気にせず窓際に戻り、転調しながら音楽を奏で続けるヴァイオリン弾きに合図した。

振り返った兄貴はにっこり笑って――。
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