ホームズ家の姉妹

 ワトソンは堪えた。ホンモノの火掻き棒はなんて強いのだ。先っちょでぐぐぐと押し返すが、質量がハンパない。

「そんな程度じゃ嫁にはやれませんな」

「嫁じゃなく肉奴隷。いやいや私としては弟さんのすべらかな肉体も悪くはないのですが、法律に引っかかるので上の口しか使ったことがありません」

「なんと」マイクロフトの先っちょは少しひるんだ。「一緒に暮らして、もう何年にもなるのに?」

「ここで実はホームズの前歯が欠けていることを思い出していただきたい」ワトソンは自らうなずいていった。「そうです。あれは喧嘩などではなく、私の火掻き棒のためにホームズが自分で抜いたのです」

「二重の意味でかね」マイクロフトの返しはウィットにとんでいた。しかしその後が余計だった。

「たしかに彼はバキューム使いの異名を持っていたな。いやなに、私が呼んでいたのだが。おしゃぶりの吸い口の代わりに兄さんのお豆さんを食べさせてと、私の胸に乗ってきたものだよ。おかげで私の乳首はひとつしかない」

 ワトソンは不本意だったが神妙にうなずいた。

「独身を貫いているのはそのせいです」

「ばっ、ば馬鹿をいうな。ワトソン私が独身を通している理由は。私が。私がどく、独身」

 茶髪で栗毛の妹をちらりと見て、唾をゴクリと呑み込んだ。残りの妹たちの軽蔑の眼差しで、探偵の股間のおしゃぶりもこんにちはしかけた。

 ホームズは怒りに任せて兄の股間をひねった。兄はぎゃーと口からあわぶくを噴いて失神した。

 攻略キャラとしての三女のスペックは、残りの姉妹を足してもお釣りがくるほどだった。問題がないわけではなかったが。

「お兄ちゃん……今の話、ほんと?」

 はあはあと息をはずませ、汗を飛び散らせながら兄は振り返った。

 両手にはロイロット博士の火掻き棒――彼も実際は股間のそれをクロッカスで隠しながら退散したのだが――と同じ運命をたどった汚物が、二つの手に堂々と握られていた。

「ベス、エリザベス。愛しのエリー。それは誤解だ!」

「絶対うそよね。兄貴は昔からそっちの方面にだらしなかったもの」ジョーは耳まで真っ赤にしながら、直視できずに後ろを向いていた。「可愛いベスの枕元でぞうさんごっこして親父に半殺し。マイキーとはお医者さんごっこして注射器が手放せなくなったのよね……」

 三女はぱっと部屋から飛び出した。

「可愛い私たちのベス」長女はしくしくと泣き出した。

「ものすごく不憫よね」次女はおいおいと泣き出した。

「そうかしら。姉さんもなかなかのタマよ」四女は鼻で笑った。

「ベス! ベス……!」ホームズの声は悲痛だった。

「伸ばした手がわずかに届かない。その果てなき繰り返し」

 ワトソンがホームズの手を軸にしながら、一度曲げられた棒を回転させて気合いで元に戻した。「そういう意味だったのか」
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