Aの火傷


 台の上に座らされて、下をすべて脱がされた。フロックの裾が汚れるからと降りようとするが阻まれる。ワトスンは自分の上着は剥いでシャツの袖を捲り上げた。

 焦らされるのに飽きて、足を擦り合わせる。勃起した場所から思考を逸らすが、うまくいかない。「手術の時間は終わりだ、ドクター。早く……」

「僕は遊びに来たんだ」

 ワトスンは特に表情を変えることなく、反対側の壁の端に寄った。その目線の動きで、彼が大体何を企んでいるのか読めてしまう。妄想にやや反応したが、腹筋を使って堪えた。

「手球はよしてくれ。君の医者としての能力を疑うわけじゃないが――」
「取り出せない物をなぜ使うと思うんだい。その調子じゃ今日現場から手がかかりを持ち帰れなかったのも、無理はないな」

 ワトスンは選んだキューを伸ばし、パチンと閉じた。一瞬で血の気が引いて、台の横から逃げようとする。ラシャの上でワトスンが私の腰を後ろから抱き抱えた。長いシャツの裾から手が入り、その冷たさに声をあげる。腹を這いずり回る指に悶え、すり抜けようとしたが、ワトスンが胸の急所を探る方が早かった。

「ぁ……」

 指で摘まれた突起の痛みに、ウウと顔をしかめる。優しく撫でられると力が抜け、転がすとぞくりと神経が逆立った。

「僕を――女性と同じに扱うな」
「そんな風に思ったことはない」

 首筋を舌でなぶられ、襟首から侵入するものの冷たさに背を反らした。手球は背中を伝ってゴトンと落ちる。その上に座らされ、体内に侵入しようとするつるりとした感触に悶えた。

「ワトスン!」
「入らないから大丈夫だよ」
「少し。入ってる……、ああっ、ひ、……ひゃぁん。く――くそっ、は、いっ……!」
「それは困る。青い紅玉より黒真珠の方が出しにくかった。結局ピンセットで――」
「い、……言うな! そ……れより、っ……ぁっ」

 体重がかかるせいで穴の入口に深く食い込んだ。両手でかろうじて自分の体重を支えるが、逆懸垂のような真似は長くはもたない。

「早く、は、早く取れ、……ぁ、ワトスン」
 私はなんとか自力で抜け出そうと、後ろにずらし前に屈みとやってみたが、台から足が垂れているせいで踏ん張るものがない。爪先に力を入れると、玉が奥へ進もうとする。拒むと前の方に移ろうとして、筋が余計に刺激を受けた。

「ああっ……あ……い、やだ。ぁ……はぁっ!」

 届かぬ足のせいで反り返って腰を高く持ち上げる。弾かれた屹立から白いモノが少量飛び、ワトスンのベストを汚した。どう動いても自分から異物を迎え入れてしまうが、愛人は面白がってるのか片手で口元を押さえていた。キューは脇に挟んだままだ。

 違う。興奮している。屹立した股間の赤黒い姿に、片膝をようやく端に立て、理性を手放した。

「っ――ぁっ」

 、と最後の力を振り絞ると、もう円周の一番大きなところまで入りかけていたものがラシャを擦り、逆転して体の後ろを摺り抜けた。ガラン、コロロロと音がした途端、ワトスンが「お見事」と呟く。ホールに玉が入ったのだ。

「……ッ!」

 素早く床に足をつけ、蹴り飛ばそうとした。意に反して前のめりになった体を、ワトスンに支えられる。しかし結局膝が折れて、床につくことになった。

「大丈夫かい」
「――」

 目の前に大きくそびえ立つワトスン自身をべちんと手で叩いた。

「ぐっ……! なっ―――!」
「遊びすぎだ。自分ばかり。僕が欲しいのは、あんな」

 予告なしに唇をつけると少し跳ね上がった。側面に舌を這わせ、もう自分が何をしているのか理解できないほどに、啜りあげる。襞を確認するように皮に噛みつくと、ワトスンがくぅと喘いだ。

「イイかい」
「ぬ、抜いてくれるのか」
「――自分でしたまえ!」

 目線を上げてその手を取る。からかったつもりが、その目の情欲をさらに煽ってしまう結果を招く。脇に手をやり力を込めて持ち上げられ、同じ場所に座らされた。肩に頭を乗せるように言われ、熱々とした膨らみを握らせる。慰めてくれと囁かれた。

「僕の手は他の遊びに忙しいんだ」
「ワト、ス」

 唇を捕らえられ、啄むようにキスを受ける。親指で亀頭に溜まった雫を弄ると、余裕を見せていたワトスンの息が早まった。かなり上から口づけるので、私が口内を犯しているみたいだ。調子に乗って玉を引きずり出し、左右に捩る。新しい玩具は気にいった。

 横座りさせられ、キューの先を後ろに当てられるまでは。

「いゃっ――まっ、待……て!」
「じっとするんだ」
「ぁっ……ああっ……な、中には……ッ」
「手が休んでるよ」

 ティップが嵌まってる細い側だった。革の先がつぷと入ると、憂れきった穴の粘膜が伸びて、少し掻き交ぜられただけで痛みは感じなくなる。入口だけを何度も引っ掻くようにされ、気が変になりそうだった。キュッキュッと音が響き、台の上で腹ばいにされる。

「や……やめっ、ぁふぅ――あ、い……やだぁっ! ……あああ、ああっ」
「おかしいな。欲しいんじゃなかったのかい」
「こ、これじゃ……ない! ふ、ふぅ、ぁあぁ、ん!」
「ああ、ホームズ。そんなに溜まっていたのかい? 零しては駄目だ。染みになってしまう」
「や、い! ぁぁあ――……!」

 垂れ流す精液を掬うためだけにワトスンの指がペニスを撫で、その刺激だけですべてが溢れ出しそうになるのに堪えた。

「んッ……」
「ホームズ」

 留められぬ断続的な快感の勢いに、ワトスンが怒ったように言った。「君ばかり遊んでるじゃないか」

「は、早くっ挿入れ! イ……イく……っ! だ、駄目だ……」
「飲み込むには早いんじゃないかね」

 ワトスンが棒を取り出す。安堵感に振り返って、後悔した。くるりと回したキューを脇に挟み、持ち替える。柄の部分はさらに太かった。


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