このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

可愛い子には旅をさせよ

【エピローグ】



「どうだね。休暇を取って少しはリラックスできたか?」
「逆にストレスが増えました」
アインスに眼鏡を狙撃されて頭も負傷したファルは、マスターの治癒によって怪我は治ったものの、納得いかないような顰めっ面で佇んでいる。随分なお出迎えですね、と嫌味たらたらだ。
「お嬢様は様子が変ですし、先程窓から庭園を窺ったら、アインスの花壇が真っ青になっているではありませんか。おまけにセダンが魔改造されています。私が居ない間に一体何が起こったんです。というか、一週間も大人しくできないんでしょうか、彼氏彼女らは」
怒濤のように口先を突く貶し文句に、マスターはふっと口元を緩める。まったくおまえの言う通りだ、と目元に皺を寄せて微笑む。
「マスター。なぜお笑いになるのです」
「いや。娘がおまえに似てきたなと思っただけだ」
「は?」
「あの子も口が達者だ。この私も太刀打ちできない。忽ち丸め込まれてしまう。どうだね? おまえにそっくりだろう」
「…そうですね」ファルは反論するのも面倒になり、適当に返事をしておいた。
「お嬢様は、才色兼備でいけません」
「当然だ」マスターはファルの顰めっ面に、ははと朗らかな笑みを浮かべた。
「この私の娘だからな」





9/10ページ