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マスターちゃんとホクサイくん

【世界帝軍の女子トーク】



「お嬢ちゃんは何を着ても似合うから、そんな心配無用じゃないかな? ボクちゃんが口出しするまでもないね」
ファッション雑誌を広げて、今度父とディナーに行くのだけど、どんなワンピースが良いかしら、と彼女が尋ねた時のことだ。
「…………」
でもあんまり露出が激しかったりするとファルさん辺りが煩いから、程々にすると良いよ〜と後に続いたホクサイの言葉を、彼女は完全に聞いていなかった。
彼女は、彼の言葉の真意を掴もうとするが、それは虚しく手をすり抜ける。「何を着ても似合うから口出しするまでもない」とは、褒められているように聞こえるが、一方で投げやりで雑な答えとも受け取れる。
「お嬢ちゃん?」彼女が固まったまま何も言わないので、ホクサイはおやと首を傾げた。「ぼーっとして、どうしたの」
「…おまえに話を振った私が間違ってた」
「え、いきなり何?」



「全然参考にならないんだもの」
後日、先の出来事を女子会で愚痴ると、エフがとんでもない事を口にした。
「アンタそんな事言って、実はときめいちゃったんじゃないの?」
「いやそれはねぇ」何故か同席しているベルガーが、ないないと手を振りながら首も横に振った。「ホクサイだぞ。うん、ねーよ」
「……………」
「うっそ待って娘ちゃんマジでアイツにときめいてんの? やっべ、よくわかんねーけどすげぇウケる」
「やっぱりね〜。話し方が完全に愚痴に見せかけた惚気だったもの」
「やだぁー!! お姉ちゃんはきゅるちゅのだもん!! ホクサイなんかに心持ってかれないで〜〜!!!」
きゅるちゅがわっと声を上げて、「お姉ちゃん」の腕に泣き縋る。「あ〜あ、泣かせた泣かせた〜」とベルガーは愉快そうにうひゃひゃと笑った。
「まずときめいてないし、よって惚気じゃない。そして心も持ってかれていません」
三人の指摘を一掃して、彼女は大きな溜め息を吐いた。
「まあでも確かにアイツたち悪いよな。言う事に裏がないっつーか、悪気がねぇんだもん」
「天然たらしよね」うんうん、とエフが頷く。
「てんねんたらし?」それ何語、と彼女は訝しげに眉を顰めた。
「えーっ、僕はホクサイのこと、結構裏があると思ってるよ〜。何でみんな騙されちゃうの? 信じらんな〜い」
腕にしがみ付いたままのきゅるちゅに、「どういうこと?」と彼女が尋ねると、
「お姉ちゃんは知らなくていい事だよ♡」
と清々しい笑顔で跳ね返された。
「なんかぁ、ザンネンな感じだよね♡ プルシアンブルーとか言ってなければ、結構マトモな奴だと思うんだけど」
「やめてやれよ。ホクサイからその、なんとかブルー?を取ったら、何も残らねぇぞ」
「ベルガー、何言ってるの?」
いい加減離れて、ときゅるちゅを押し戻しながら、彼女は何でもないように言い放った。
容貌かおが残るじゃないの」
「「「……………」」」
三人とも思わず閉口する。
「あの人、割と可愛い顔してるの。愛想は悪くないから笑顔も良いし、貴銃士の中では上出来(な顔)よ」
「うっっっっわ〜〜〜〜〜」
「お姉ちゃん、ほんと面食いだよぉ…」
「いいじゃないの。それが貴方たちの長所の一つでしょう?」
彼女は完全に開き直っている。
「じゃあ、ファルちゃんの容貌かおとどっちが好み?」
興味津々と言った様子で尋ねるエフに、「愚問ね」と彼女は微笑んだ。
「ファルに決まってるでしょう」


くしゅんっ、と彼は珍しくクシャミをする。
「どうしたファル。風邪か」
アインスの心配をよそ目に、ファルは「いえ…」とハンカチで鼻を抑えながら呟いた。
「どうせ馬鹿共が噂しているのでしょう」


***


「お嬢ちゃんは何を着ても似合うからな〜。色で迷うくらいだったら、全色買っちゃえば?」
この中だったら何色が似合うと思う?と雑誌を広げて尋ねると、彼はあははと冗談めかしてそう言った。
「……ホクサイって天然たらしよね」
先日の女子会で覚えた新語を早速使ってみる。これは言ってみたかっただけで、他意はない。
またまたお嬢ちゃん、どこでそんな言葉覚えてくるんだい〜?とホクサイはへらへら笑い出す。
「天然じゃないよ?」
へらへら笑った顔のままさらりとそう言った。




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