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マスターちゃんとホクサイくん

【あいして。】



命令と同時に、セーフティーを外した。
「愛して」は、「殺して」と同義だ。
人間が愛を営むように、銃であるボクらは死を施す。急所を狙えば、銃殺は瞬殺だ。苦しませずに、一瞬で逝かせる。それがボクらのやり方。
「ホクサイ」凛とした呼び声に顔を上げると、背を向けたままの彼女が問うた。「貴方は誰のものなの?」
「キミのものだよ」
「ええ」満足そうに弾む声。「私のものよ」
好きとか愛してるとか、好意を伝える言葉など、掃いて捨てるほどある。
それらは人間の台詞だ。
物であるボクらは、ただ従順さによってのみ、それを示す。
「永遠にキミのものだ」
脳髄に銃口を向ける。
人差し指に纏う魂の重量。
撃鉄を起こしたはずなのに、引き金は重い。





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