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ツン甘貴銃士

【かわいすぎか。】



「きょりゅくん可愛い……」
恐竜を可愛らしくデフォルメしたキャラクターを、彼女は溺愛している。「きょりゅくん」と呼ばれるそいつは、今ゴーストの自室を絶賛侵略中だ。なぜなら、彼女の私物がきょりゅくんグッズばかりだから。
「今日は食器を買いに来たんやろ…」
ゴーストはきょりゅくん人形を手に取る彼女を呆れた様子で見つめ、「没収」と人形を取り上げる。
「……そうだったわね」
むんと決意を新たにして、彼女は食器をざっと眺める。
「どれがいいかしら。ゴーストはどう思う?」
「これなんかワイの好みやわ」
「それきょりゅくんよねっ!?」
彼がスッと差し出したのは、きょりゅくんの絵が描かれた平たいお皿だ。
「いちいち煩い女やな。他に良いデザインが無かっただけゆうんに」
「棚いっぱいにあるわよ。そんな甘やかしてると、ゴーストの部屋がきょりゅくんに侵食されるわよ」
「ジュラ紀か。それとも白亜紀か」
「何そのボケ。凝りすぎて分からない」
結局、そのきょりゅくん皿を買った。



「ありがとう。片方持つわ」
「ええて。一つ持つのも二つ持つのも変わらんわ」
「それが変わるの」
ふふっと彼女は微笑み、ゴーストの左手の袋を奪うと、空いたその手をきゅっと握りしめる。
「ほらね。こうすれば、おまえを迷子にせずに済むでしょう?」
「………手」
「ん?」
「こっちの方がええんとちゃう」
彼の細く綺麗な指が、彼女の右手に絡みついて握り直す。恋人繋ぎ。
「………そうね」
「……………」


(ワイを迷子にせんよーにとか言うて、ほんまは手ぇ繋ぎたいだけとか………かわいすぎかっ!!!!)
(ゴーストの指細い…キレイ……)


二人はこの後、尋常じゃなく手汗をかいた。





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