マスターちゃんの好男子辞典
【エピローグ/戦場の幻影】
「すっきりしたわね」
貴銃士たちの分類を終えてやっと部屋に戻る気になった彼女は、車椅子を押しているエフにそう声をかけた。
「せやな」
「何それ。ゴーストみたいな喋り方」
「ゴーストやで」
あっと彼女は片手で口元を覆い、しまったと心の中で呟いた。彼の存在をすっかり忘れていた。
「……何でおまえが私の車椅子を押しているの?」
振り返り、ゴーストの表情を伺ってみる。特に怒った様子はなく、いつも通りの涼しげな顔つきだ。
「エフがアインスの兄さんを見つけてディナーに走ってったから、ワイが代わりにあんさんの車椅子押したろ〜思て」
「もしかして、私とエフが練り歩いてる時も一緒にいた?」
「きゅるちゅのとこからおったで……」
「結構前からいたのね」
彼女は可笑しそうにくすくすと微笑む。そして思い出したように、最後の半紙を取り出した。
「エフに渡しそびれちゃったから、おまえにあげるわ。受け取って頂戴」
ゴーストは、静かにそれを受け取る。見ると半紙には「美形」と書かれている。
「美形って。エフのことかいな」
「エフだけじゃないわ。おまえもよ」
んごっ、とゴーストは変な声を上げそうになった。すんでの所でそれを呑み込み、「ワイが美形?」と困惑した表情を浮かべる。
「マスターの感性というか…、発想力にはホンマ敵わんわ」
「今の、褒め言葉だと思って受け取っておくわ」
彼女は声を弾ませる。
右足の痛みも忘れるほど、今日は愉快な一日だった。
【美形】
美しい顔立ち。
「すっきりしたわね」
貴銃士たちの分類を終えてやっと部屋に戻る気になった彼女は、車椅子を押しているエフにそう声をかけた。
「せやな」
「何それ。ゴーストみたいな喋り方」
「ゴーストやで」
あっと彼女は片手で口元を覆い、しまったと心の中で呟いた。彼の存在をすっかり忘れていた。
「……何でおまえが私の車椅子を押しているの?」
振り返り、ゴーストの表情を伺ってみる。特に怒った様子はなく、いつも通りの涼しげな顔つきだ。
「エフがアインスの兄さんを見つけてディナーに走ってったから、ワイが代わりにあんさんの車椅子押したろ〜思て」
「もしかして、私とエフが練り歩いてる時も一緒にいた?」
「きゅるちゅのとこからおったで……」
「結構前からいたのね」
彼女は可笑しそうにくすくすと微笑む。そして思い出したように、最後の半紙を取り出した。
「エフに渡しそびれちゃったから、おまえにあげるわ。受け取って頂戴」
ゴーストは、静かにそれを受け取る。見ると半紙には「美形」と書かれている。
「美形って。エフのことかいな」
「エフだけじゃないわ。おまえもよ」
んごっ、とゴーストは変な声を上げそうになった。すんでの所でそれを呑み込み、「ワイが美形?」と困惑した表情を浮かべる。
「マスターの感性というか…、発想力にはホンマ敵わんわ」
「今の、褒め言葉だと思って受け取っておくわ」
彼女は声を弾ませる。
右足の痛みも忘れるほど、今日は愉快な一日だった。
【美形】
美しい顔立ち。