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マスターちゃんの好男子辞典

【バッド・ボーイ/狐面の静観者】



「あっれー、マスターちゃん! エフも一緒なんて、何企んでんの? なんか面白い事やってんだろ〜?」
「マスター、こんなとこ彷徨いて大丈夫なのかよ。怪我、まだ治ってねぇじゃん」
廊下のど真ん中で殴り合い寸前の口喧嘩を展開していたベルガーと89は、彼女の出現によって暗黙の停戦協定を結ぶ。
「………」
彼女は二人の問いかけには答えず、じっと真剣な瞳で彼らを見つめている。
「やっべ、マスターちゃんが俺に見惚れてる」
「はっ! お前頭の中までピンクなのかよ」
「あ?」
早くも剣呑な雰囲気を漂わせる彼らを無視して、「どう思う?」と彼女はエフに尋ねた。
「どうって言われてもねぇ…」
ふんとエフは小馬鹿にするように笑う。こんなガキ臭い男二人が、好男子に分類されるはずもない。彼女もそう思って質問してきたのだろう。
「難しいわね。この子たちの魅力は見目よりも中身だから……、属性だったら分類できると思うんだけど」
「属性? また新しい概念引っ張り出すのね」
「まあいいわ。こういう時は、あの言葉を使いましょう」
彼女が広げた半紙には、「イケメン」と無駄に達筆な文字で書かれている。
「89に至っては、『イケニート』という呼称もあります」
「誰がニートだ」解せん、と89は顔を歪める。
「ニート!!!」
ベルガーが身を捩り、これでもかと草を生やした。

「あ? マスターちゃんを口説けだって? 急にんな事言われてもなぁ。つーか全部好きだから褒めるとこ分かんねぇ」
「口説けなんて誰も言ってねーよ、脳味噌沸いてんのか。……は、俺も? いや……その……、かわ、………悪くねぇと思うぜ」
「あーはいはい、89はマスターちゃんのこと『可愛い』だってよ」
「バッ……おまっっ……!!?」
「言いかけて止めるとか。どんだけチキンだよ」

停戦協定が破られようとしている中で、「はあ可愛い」と彼女は幸福な気持ちで頷く。
やっぱりこの二人は見た目より中身ね。



【イケメン】
「かっこいい男性」を表す広義な俗語。「魅力的な」という意味の「イケてる」と男性を意味する英語「men」の合成語と考えられているが、その解釈も多岐に渡る。





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