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side story

【花火も嫉妬も】



長手牡丹の線香花火は、青い火花を散らしている。
「それ、ホクちんに作ってもらったんだよね」
花火をしよう、とマスターを誘い出した。
彼女が好きだと言っていた線香花火にしたくて、ホクサイに頼んで作ってもらった。ただし、火を青くしてくれと頼んだ覚えはない。
やっぱり、と彼女は苦笑した。
「あんまりあの子の邪魔をしちゃだめよ。彼は、血を青くする研究で忙しいんだから」
「平気平気〜! ほっきゅんてば天才だから、こんなのチョチョイのチョイっしょ?つったらす〜ぐ作ってくれたよん★」
「ラブワンは、人を煽てるのが上手ね」
言っている間に、彼女が垂らした青い光は、ぽとりと暗い地面に落ちる。
花火のくせに地味だし、呆気ない。
既にマスターは二本目に火をつけている。
彼女は、このしけた花火が好きなようだ。
ねえ、それって、青いから?
「貴方の瞳の色みたいね」
青く散る火花に目を細めて、彼女は言った。
違う。
そいつはオイラの青じゃない。
ぱちぱちと散る青い閃光を、掌でぐしゃりと握り潰す。
「……火傷しちった」
驚いた表情の彼女に、爛れた掌を見せつけた。
「手当てしてよ。マスター」
花火も嫉妬も、派手なほうが俺らしい。





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