side story
【イケメン福笑い】
「貴方の素晴らしい顔面を用いて、福笑いを作成してみました」
ファルのお手製、ラブワンの顔面をモデルに作成された福笑いセットが、畳の上に広げられる。
「えーっ、何でラブワンの顔面で福笑いなんてしなきゃなんないのぉ? 作るならぼくの可愛いお顔で作ってよ〜」
むうと頬を膨らませて機嫌を損ねるきゅるちゅに、「すみませんねぇ」とファルが和やかに謝った。
「貴方の愛らしい顔を福笑いで台無しにするとなると、マスターがお怒りになるかと思いまして」
「ふ〜ん。まあいいや! どうせラブワンの顔面ぐちゃぐちゃになるんだし(福笑いで)」
「きゅるたんエグ〜い★」あはっと尖った声でラブワンが笑う。
顔の輪郭が描かれた紙と、目、鼻、口などのパーツが描かれた細かな部品がバラバラと落ちている。その部品を一つ一つ手にとって眺めては、彼女はうっとりと溜息をついた。
「さすがラブワンだわ。目ひとつ、鼻ひとつとって見ても、どれもこれも整っているわね」
「明らかに悪意のある部品も混ざってるけどな」89がぼそりと呟いた。
「なんて素敵な鼻」と彼女が手にとっているそれは、確かに鼻のパーツをしているが、鼻の穴から血が垂れている。さらに、普通の眉の他に海苔のようなごん太眉毛もある。極めつけは、噛んで丸められたガムがくっついている星型サングラスのパーツだ。誰だオイラのグラサンにガム付けた奴。
「さすがファル。芸が細かいな」鼻血の出ている鼻のパーツを眺めて、アインスがふむと頷いた。
「うわ〜面白そう〜! ねえミカエルクン、ボクちゃんにお手本見せてよ〜」
ねえねえとホクサイに袖を引かれたミカエルは、「いいよ」と穏やかな声で答える。彼はすっと優雅な動作で畳の上に跪き、顔の輪郭が描かれた紙に手を触れた。
「この紙の上に、パーツを並べていけば良いんだね?」
ミカエルは、指先でパーツの一つ一つを確かめる。囲碁をさすかのようにぱちりぱちりとそれらを並べ、まるで目が見えているかのように、見事にラブワンの顔面を完成させた。
「ミカたんさっすが〜! オイラの顔があっという間に完成だね!!」右手の親指と小指を立てたラブワンが、フゥッ★と甲高い声で喜びを表現する。
「誰やそれ」ミカエルの完成させた福笑いを覗き込み、ゴーストがひっそりと囁いた。「えらいイケメンやな」
「うわっ。ゴスちんいたの??」
「ワイはこんなええ男知らんな……」
「確かにもっと崩れてたかも〜!」あは、とホクサイが無邪気に微笑む。鼻のパーツを取り替えて、鼻血を出している方を並べた。
「イケメン死ねェ!!」響き渡る怨嗟の声。
どさくさに紛れた89が、ごん太眉毛を二枚、パァンと紙の上に叩きつけている。
「89、これメンコじゃないわよ」興奮した89を、どうどうと彼女が宥めていた。
「なかなかええんとちゃうか」ごん太眉毛と鼻血のパーツに替えられた完成形を眺め、ゴーストが認める。
「鼻血は仕方ないにしても、その眉毛はおかしいよね? オイラの眉毛もっとスマートだよね!?」ラブワンは、この状況下で比較的まともそうなアインスとマスターに助けを求めた。「ねっ、二人とも!!」
「実は、お前の顔を真面目に見たことがなくてな。よく分からん」畳の上で胡座をかいたアインスは、腕組みをしてうーむと唸る。
「私も、貴方の顔を見ていると(イケメン過ぎて)腹が立つから、いつも焦点を合わせないようにしているの」目を泳がせながらラブワンを見つめて、彼女が応える。
えっ……うそでしょ??
「何面白そうな事やってんの〜?」くちゃくちゃとガムを噛みながら、ベルガーがだらりと歩いてきた。
「福笑いでラブワンの顔を再現しているんだよ」ミカエルが落ち着いた声で答えた。まともに福笑いに興じているのは、この貴銃士だけだった。「ベルガー、君もやってみるかい?」
「んなもん、とりあえず星のグラサンかけときゃラブワンの顔っぽくなるだろ」言いながら、ベルガーはぺっと包み紙にガムを吐き出す。それを指で摘み、ぺとっとラブワンの星型サングラスにくっ付けていた。
「待ってベルたん何でオイラのグラサンにガムくっ付けたの」
「何か足りないと思ったらそれか〜!」
ホクサイが膝を打ち、福笑いの両目のパーツを取り除いて、ガム付きの星型グラサンのパーツに取り替える。
ラブワン福笑いの完成だ。
「見てマスター! ラブワンクン!!」
ぱああと満面の笑みで両手を広げたホクサイがそう言うと、ぱちぱちと拍手が湧き起こる。
「すご〜い! 本物ソックリ〜!!」福笑いと本物のラブワンを見比べながら、きゅるちゅが愉快そうに笑った。「特にサングラスのガムのとことか、再現率半端な〜い♡」
「ええほんと。みんな上手に出来たわね」
彼女はうふふと微笑んでいる。
「…………っえ?」
星型グラサンにガムを付けられたまま、ラブワンは呆然と立ち竦んだ。
「人の顔で遊ぶだなんて……。悪趣味ねぇ」
「新年早々、愚弟と意見が一致するなど不愉快極まりないですね」
「んま、そんな事言って。あの福笑い作ったのファルちゃんでしょう? や〜ねぇ、白々しい」
離れた場所では、エフとファルの兄弟銃が憎まれ口を叩きながら、福笑いに興じる仲間たちを見守っている。
「ナインティちゃんは、あんな大人になっちゃだめよ?」
冒頭から『おなかグーグー。おもちクレ』とブラックボードに記したままのナインティが、無言のまま頷いた。
「貴方の素晴らしい顔面を用いて、福笑いを作成してみました」
ファルのお手製、ラブワンの顔面をモデルに作成された福笑いセットが、畳の上に広げられる。
「えーっ、何でラブワンの顔面で福笑いなんてしなきゃなんないのぉ? 作るならぼくの可愛いお顔で作ってよ〜」
むうと頬を膨らませて機嫌を損ねるきゅるちゅに、「すみませんねぇ」とファルが和やかに謝った。
「貴方の愛らしい顔を福笑いで台無しにするとなると、マスターがお怒りになるかと思いまして」
「ふ〜ん。まあいいや! どうせラブワンの顔面ぐちゃぐちゃになるんだし(福笑いで)」
「きゅるたんエグ〜い★」あはっと尖った声でラブワンが笑う。
顔の輪郭が描かれた紙と、目、鼻、口などのパーツが描かれた細かな部品がバラバラと落ちている。その部品を一つ一つ手にとって眺めては、彼女はうっとりと溜息をついた。
「さすがラブワンだわ。目ひとつ、鼻ひとつとって見ても、どれもこれも整っているわね」
「明らかに悪意のある部品も混ざってるけどな」89がぼそりと呟いた。
「なんて素敵な鼻」と彼女が手にとっているそれは、確かに鼻のパーツをしているが、鼻の穴から血が垂れている。さらに、普通の眉の他に海苔のようなごん太眉毛もある。極めつけは、噛んで丸められたガムがくっついている星型サングラスのパーツだ。誰だオイラのグラサンにガム付けた奴。
「さすがファル。芸が細かいな」鼻血の出ている鼻のパーツを眺めて、アインスがふむと頷いた。
「うわ〜面白そう〜! ねえミカエルクン、ボクちゃんにお手本見せてよ〜」
ねえねえとホクサイに袖を引かれたミカエルは、「いいよ」と穏やかな声で答える。彼はすっと優雅な動作で畳の上に跪き、顔の輪郭が描かれた紙に手を触れた。
「この紙の上に、パーツを並べていけば良いんだね?」
ミカエルは、指先でパーツの一つ一つを確かめる。囲碁をさすかのようにぱちりぱちりとそれらを並べ、まるで目が見えているかのように、見事にラブワンの顔面を完成させた。
「ミカたんさっすが〜! オイラの顔があっという間に完成だね!!」右手の親指と小指を立てたラブワンが、フゥッ★と甲高い声で喜びを表現する。
「誰やそれ」ミカエルの完成させた福笑いを覗き込み、ゴーストがひっそりと囁いた。「えらいイケメンやな」
「うわっ。ゴスちんいたの??」
「ワイはこんなええ男知らんな……」
「確かにもっと崩れてたかも〜!」あは、とホクサイが無邪気に微笑む。鼻のパーツを取り替えて、鼻血を出している方を並べた。
「イケメン死ねェ!!」響き渡る怨嗟の声。
どさくさに紛れた89が、ごん太眉毛を二枚、パァンと紙の上に叩きつけている。
「89、これメンコじゃないわよ」興奮した89を、どうどうと彼女が宥めていた。
「なかなかええんとちゃうか」ごん太眉毛と鼻血のパーツに替えられた完成形を眺め、ゴーストが認める。
「鼻血は仕方ないにしても、その眉毛はおかしいよね? オイラの眉毛もっとスマートだよね!?」ラブワンは、この状況下で比較的まともそうなアインスとマスターに助けを求めた。「ねっ、二人とも!!」
「実は、お前の顔を真面目に見たことがなくてな。よく分からん」畳の上で胡座をかいたアインスは、腕組みをしてうーむと唸る。
「私も、貴方の顔を見ていると(イケメン過ぎて)腹が立つから、いつも焦点を合わせないようにしているの」目を泳がせながらラブワンを見つめて、彼女が応える。
えっ……うそでしょ??
「何面白そうな事やってんの〜?」くちゃくちゃとガムを噛みながら、ベルガーがだらりと歩いてきた。
「福笑いでラブワンの顔を再現しているんだよ」ミカエルが落ち着いた声で答えた。まともに福笑いに興じているのは、この貴銃士だけだった。「ベルガー、君もやってみるかい?」
「んなもん、とりあえず星のグラサンかけときゃラブワンの顔っぽくなるだろ」言いながら、ベルガーはぺっと包み紙にガムを吐き出す。それを指で摘み、ぺとっとラブワンの星型サングラスにくっ付けていた。
「待ってベルたん何でオイラのグラサンにガムくっ付けたの」
「何か足りないと思ったらそれか〜!」
ホクサイが膝を打ち、福笑いの両目のパーツを取り除いて、ガム付きの星型グラサンのパーツに取り替える。
ラブワン福笑いの完成だ。
「見てマスター! ラブワンクン!!」
ぱああと満面の笑みで両手を広げたホクサイがそう言うと、ぱちぱちと拍手が湧き起こる。
「すご〜い! 本物ソックリ〜!!」福笑いと本物のラブワンを見比べながら、きゅるちゅが愉快そうに笑った。「特にサングラスのガムのとことか、再現率半端な〜い♡」
「ええほんと。みんな上手に出来たわね」
彼女はうふふと微笑んでいる。
「…………っえ?」
星型グラサンにガムを付けられたまま、ラブワンは呆然と立ち竦んだ。
「人の顔で遊ぶだなんて……。悪趣味ねぇ」
「新年早々、愚弟と意見が一致するなど不愉快極まりないですね」
「んま、そんな事言って。あの福笑い作ったのファルちゃんでしょう? や〜ねぇ、白々しい」
離れた場所では、エフとファルの兄弟銃が憎まれ口を叩きながら、福笑いに興じる仲間たちを見守っている。
「ナインティちゃんは、あんな大人になっちゃだめよ?」
冒頭から『おなかグーグー。おもちクレ』とブラックボードに記したままのナインティが、無言のまま頷いた。