side story
【賛美歌を君に】
白い雪の降る夜だった。
暖炉の炎だけが、暗い部屋の中で煌々と燃えている。
私の命のロウソクは、あとどのくらい灯るのだろう。
上半身を起こし、クッションのような枕に背中を沈めては、暖炉の眩さに目を細めた。
天蓋のついた広いベッド。
今はここが、私の庭。
「今夜は君に、賛美歌を聴かせたい」ミカエルは言った。
彼は窓辺に寄りかかり、私の返答を待っている。
「鎮魂歌の間違いじゃなくて?」小首を傾げて、くすりと笑った。
「ここは戦場ではないし、今夜は聖夜だ。そんな無粋なことはしない」
「まさか、聖歌隊を連れてきて、教会をまるごと持ってきただなんて言うつもり?」
「…………」
「うそ」彼の無言の肯定に、開いた口が塞がらない。「本当なの?」
「君の言う通り、教会をまるごと城へ持って行きたかった」腕組みをして、ふむとミカエルは息をつく。
「さすがにそれは、無理があったね。パイプオルガンがどうしても動かせなかったんだ。だから、聖歌隊だけを連れて来た」
私が呆気にとられていると、「お聴きよ」と窓を開け放つ。
「天使たちの歌声だ」
外気の冷たい空気と共に、部屋に流れこむ美しい歌声。
庭園に整列した聖歌隊の各々が、祈りのロウソクを手に佇んでいた。
白い雪の降る夜だった。
暖炉の炎だけが、暗い部屋の中で煌々と燃えている。
私の命のロウソクは、あとどのくらい灯るのだろう。
上半身を起こし、クッションのような枕に背中を沈めては、暖炉の眩さに目を細めた。
天蓋のついた広いベッド。
今はここが、私の庭。
「今夜は君に、賛美歌を聴かせたい」ミカエルは言った。
彼は窓辺に寄りかかり、私の返答を待っている。
「鎮魂歌の間違いじゃなくて?」小首を傾げて、くすりと笑った。
「ここは戦場ではないし、今夜は聖夜だ。そんな無粋なことはしない」
「まさか、聖歌隊を連れてきて、教会をまるごと持ってきただなんて言うつもり?」
「…………」
「うそ」彼の無言の肯定に、開いた口が塞がらない。「本当なの?」
「君の言う通り、教会をまるごと城へ持って行きたかった」腕組みをして、ふむとミカエルは息をつく。
「さすがにそれは、無理があったね。パイプオルガンがどうしても動かせなかったんだ。だから、聖歌隊だけを連れて来た」
私が呆気にとられていると、「お聴きよ」と窓を開け放つ。
「天使たちの歌声だ」
外気の冷たい空気と共に、部屋に流れこむ美しい歌声。
庭園に整列した聖歌隊の各々が、祈りのロウソクを手に佇んでいた。