side story
【さよならグランバード】
!アテンション!
・主人公は世界帝軍=現代銃マスター(♂)の娘ちゃん。
・なんで待ち合わせしてるのとか細かい事は置いておきます。
・現代銃は鉄壁のボディガードという理想。
・恭遠さんはノーブルカフェに行きたい。
***
恭遠・グランバードは、道に迷っていた。
原因は、レジスタンスの用意した地図が古過ぎたからに他ならない。しかし、今ここでそれを嘆いてもどうにもならない。まずは人に尋ねてみよう。
彼は、建物の入口の側に立っている、小柄な黒髪の女性に声を掛けた。
「すみません」
時刻を確認しようと腕時計を見ていたところ、ふいに声を掛けられる。
彼女が顔を上げると、目の前に一人の成人男性が、何やら申し訳なさそうな表情で佇んでいる。
「何か?」
彼女はそう首を傾げながら、なかなかいい男ね、と内心で微笑んだ。
「最近この街にオープンした、新しいカフェをご存知ないですか? 知り合いが働いているもので、顔を出したいのですが……道に迷ってしまって」
少々気弱だが、実直で礼儀正しい。常識があり、穏やかで優しそうな印象だ。凡庸だが、それゆえに間違いがない。
待ち合わせを放棄して、この男性とお茶でも飲みに行こうかしら、と彼女は考える。
うん、悪くない。
なんてね、と一連の考えを自己完結させて、彼女は彼の困り顔に微笑みかけた。
「そのカフェでしたら、きっと……」
その時、約束をしていた現代銃が現れる。
・第一部隊
「ナンパなら、他を当たってもらえませんかね」
ファルは、にっこりと人の良さそうな笑顔を浮かべている。彼の本性を知っている彼女からしてみれば、気持ち悪いほどの爽やかな微笑みだった。
「彼女は私の連れですので」
「待ってファル。この人、道を知りたいのだそうよ」
「おや、そうでしたか。どちらまで?」
「ええと…」
急に現れた紳士の笑顔に気圧されて、恭遠はついおどおどする。完全にナンパ男だと思われて、威嚇されている。女性に声を掛けるべきではなかった。
「地獄まででしょうか」男が微笑みを保ったまま尋ねる。
「え?」
聞き間違いだろうか、と思ったのも束の間。
「オイ」
ドスのきいた声が、背後から響く。
振り返ると、帽子を被ったえらく長身な男が、サングラスを持ち上げて、鋭い視線で恭遠を睨んでいた。
「失せろ。ナンパ野郎」
「おやおや、アインスったら。柄が悪いですねぇ」
「ほんと。まるでヤクザね」
さっさと逃げて行く不憫な恭遠の背中を見送りながら、二人は正直な感想を口にする。
こいつら似た者主従だな、とアインスは苦々しい顔をした。
「ファル。お前が付いていながら」
「いいんですよ。私が脅すより、貴方が凄んだ方が早いですから」
「つーか、何でお嬢がここにいる?」
「私がお誘いしたのです。お嬢様はワインがお好きですから、是非にと。いけませんでしたか?」
「俺が何度誘っても来ねぇくせに」アインスは、納得いかんという表情で彼女を睨むように見つめる。「ファルの誘いだったら来るのか?」
「だって、イケメンと美味しいワインが飲めると聞いて」
「イケメンとワインが狙いか」
「お嬢様を何度も食事に誘っている?」ファルは目を細めて、面白そうに微笑んだ。
「貴方がですか?」
・第二部隊
「おいおい、オッサン。軽々しくその子に声掛けてんじゃねーよ」
「あはは。ベルガーくんいきなり本音〜?」
ウサギ耳のフードと青い迷彩服の男二人が、恭遠を左右から挟み撃ちにする。右の彼はピンク色、左の彼は銀色と、髪色が大層派手で目立つ。今時の若い子はこういう派手なファッションを好むのだろうか、などとオッサン呼ばわりされた恭遠は呑気に考えた。
「ベルガー、ホクサイ。よしなさい」分かりやすく敵意を剥き出しにする彼らに、彼女は呆れて溜息をつく。「その人、私に道を尋ねてきただけよ」
「ばあか。それ常套手段じゃん」ベルガーは片眉を釣り上げる。
「お嬢ちゃんってば、世間知らずで心配だな〜」笑いながらホクサイは恭遠ににじり寄る。目が笑っていない。
「あんさんはこっちな」
ベルガーとホクサイが恭遠の両脇を固めた隙に、いつの間にやらゴーストに腕を引かれて彼女は歩き出していた。
「貴方いたの?」
「最初からおったで…」
お馴染みのやりとり。
「ワイはあんなん柄じゃないわ。ここはあの二人に任せよか」
「さ〜て。この人どうしよっか、ベルガーくん」
「お前の怪しい研究の実験台にしたらいんじゃね」
「いいかも〜」
アハハとホクサイが声を上げて笑っていた。
・第三部隊
「おねえちゃんっ。今日はスイーツもりもり食べ放題に付き合ってもらう約束でしょ」むうと頰を膨らませた不貞腐れ顔のきゅるちゅが、彼女の腕にしがみつく。「こんなオジサンに心動かされないでよね!」
「ごめんなさい。つい」彼女は正直に謝った。
「あらま。なかなかいい男」
後から歩いてきたエフが、恭遠を見てウットリと目を細める。
「マトモな感じで調教し甲斐がありそうね♡」
「っも〜、エフったら。相変わらず変態なんだから〜」彼女の腕にしがみついたまま、きゅるちゅは呆れた顔になる。「別にいいけどね。僕はお姉ちゃんとスイーツブュッフェに行ってくるから、そのオジサン好きにしたら?」
「そうさせてもらおうかしら」エフは嬉しそうに微笑み、恭遠の片腕にそっと手を添えた。
「え? あの……」動揺するグランバード。
「じゃあね〜」
きゅるちゅは彼女の腕を引っ張り、念願のスイーツブュッフェに足取り軽やかに向かう。
「ごゆっくり」
彼女は肩をすくめ、ほどほどにね、とエフにアイコンタクト。
「二人とも可愛いんだから、気をつけるのよ〜」
エフは片手を振って二人を見送り、「さて」と恭遠の片腕を両腕でがっちりホールド。
「アタシたちも行きましょうか」
「……どこへ?」
「うふ。際どい質問」
男の腕力で恭遠を引きずりながら、エフは楽しそうに微笑んだ。
____
ナンパ男撃退法
【第一部隊】ファル、アインス
ファルがじわじわと誘導尋問を仕掛け、ラスボス(アインス)が睨みをきかせて駆除完了。
【第二部隊】ベルガー、ホクサイ、ゴースト
おらおらガン飛ばし組が対象を脅しているうちに、ゴーストくんがそっと彼女を連れ去る。
【第三部隊】きゅるちゅ、エフ
きゅるちゅがお姉ちゃんに甘える弟を演じ、彼女を対象から引き離す。エフは対象を逆ナン。好みでなかった場合は「鏡見て出直して来い」と毒吐く。
!アテンション!
・主人公は世界帝軍=現代銃マスター(♂)の娘ちゃん。
・なんで待ち合わせしてるのとか細かい事は置いておきます。
・現代銃は鉄壁のボディガードという理想。
・恭遠さんはノーブルカフェに行きたい。
***
恭遠・グランバードは、道に迷っていた。
原因は、レジスタンスの用意した地図が古過ぎたからに他ならない。しかし、今ここでそれを嘆いてもどうにもならない。まずは人に尋ねてみよう。
彼は、建物の入口の側に立っている、小柄な黒髪の女性に声を掛けた。
「すみません」
時刻を確認しようと腕時計を見ていたところ、ふいに声を掛けられる。
彼女が顔を上げると、目の前に一人の成人男性が、何やら申し訳なさそうな表情で佇んでいる。
「何か?」
彼女はそう首を傾げながら、なかなかいい男ね、と内心で微笑んだ。
「最近この街にオープンした、新しいカフェをご存知ないですか? 知り合いが働いているもので、顔を出したいのですが……道に迷ってしまって」
少々気弱だが、実直で礼儀正しい。常識があり、穏やかで優しそうな印象だ。凡庸だが、それゆえに間違いがない。
待ち合わせを放棄して、この男性とお茶でも飲みに行こうかしら、と彼女は考える。
うん、悪くない。
なんてね、と一連の考えを自己完結させて、彼女は彼の困り顔に微笑みかけた。
「そのカフェでしたら、きっと……」
その時、約束をしていた現代銃が現れる。
・第一部隊
「ナンパなら、他を当たってもらえませんかね」
ファルは、にっこりと人の良さそうな笑顔を浮かべている。彼の本性を知っている彼女からしてみれば、気持ち悪いほどの爽やかな微笑みだった。
「彼女は私の連れですので」
「待ってファル。この人、道を知りたいのだそうよ」
「おや、そうでしたか。どちらまで?」
「ええと…」
急に現れた紳士の笑顔に気圧されて、恭遠はついおどおどする。完全にナンパ男だと思われて、威嚇されている。女性に声を掛けるべきではなかった。
「地獄まででしょうか」男が微笑みを保ったまま尋ねる。
「え?」
聞き間違いだろうか、と思ったのも束の間。
「オイ」
ドスのきいた声が、背後から響く。
振り返ると、帽子を被ったえらく長身な男が、サングラスを持ち上げて、鋭い視線で恭遠を睨んでいた。
「失せろ。ナンパ野郎」
「おやおや、アインスったら。柄が悪いですねぇ」
「ほんと。まるでヤクザね」
さっさと逃げて行く不憫な恭遠の背中を見送りながら、二人は正直な感想を口にする。
こいつら似た者主従だな、とアインスは苦々しい顔をした。
「ファル。お前が付いていながら」
「いいんですよ。私が脅すより、貴方が凄んだ方が早いですから」
「つーか、何でお嬢がここにいる?」
「私がお誘いしたのです。お嬢様はワインがお好きですから、是非にと。いけませんでしたか?」
「俺が何度誘っても来ねぇくせに」アインスは、納得いかんという表情で彼女を睨むように見つめる。「ファルの誘いだったら来るのか?」
「だって、イケメンと美味しいワインが飲めると聞いて」
「イケメンとワインが狙いか」
「お嬢様を何度も食事に誘っている?」ファルは目を細めて、面白そうに微笑んだ。
「貴方がですか?」
・第二部隊
「おいおい、オッサン。軽々しくその子に声掛けてんじゃねーよ」
「あはは。ベルガーくんいきなり本音〜?」
ウサギ耳のフードと青い迷彩服の男二人が、恭遠を左右から挟み撃ちにする。右の彼はピンク色、左の彼は銀色と、髪色が大層派手で目立つ。今時の若い子はこういう派手なファッションを好むのだろうか、などとオッサン呼ばわりされた恭遠は呑気に考えた。
「ベルガー、ホクサイ。よしなさい」分かりやすく敵意を剥き出しにする彼らに、彼女は呆れて溜息をつく。「その人、私に道を尋ねてきただけよ」
「ばあか。それ常套手段じゃん」ベルガーは片眉を釣り上げる。
「お嬢ちゃんってば、世間知らずで心配だな〜」笑いながらホクサイは恭遠ににじり寄る。目が笑っていない。
「あんさんはこっちな」
ベルガーとホクサイが恭遠の両脇を固めた隙に、いつの間にやらゴーストに腕を引かれて彼女は歩き出していた。
「貴方いたの?」
「最初からおったで…」
お馴染みのやりとり。
「ワイはあんなん柄じゃないわ。ここはあの二人に任せよか」
「さ〜て。この人どうしよっか、ベルガーくん」
「お前の怪しい研究の実験台にしたらいんじゃね」
「いいかも〜」
アハハとホクサイが声を上げて笑っていた。
・第三部隊
「おねえちゃんっ。今日はスイーツもりもり食べ放題に付き合ってもらう約束でしょ」むうと頰を膨らませた不貞腐れ顔のきゅるちゅが、彼女の腕にしがみつく。「こんなオジサンに心動かされないでよね!」
「ごめんなさい。つい」彼女は正直に謝った。
「あらま。なかなかいい男」
後から歩いてきたエフが、恭遠を見てウットリと目を細める。
「マトモな感じで調教し甲斐がありそうね♡」
「っも〜、エフったら。相変わらず変態なんだから〜」彼女の腕にしがみついたまま、きゅるちゅは呆れた顔になる。「別にいいけどね。僕はお姉ちゃんとスイーツブュッフェに行ってくるから、そのオジサン好きにしたら?」
「そうさせてもらおうかしら」エフは嬉しそうに微笑み、恭遠の片腕にそっと手を添えた。
「え? あの……」動揺するグランバード。
「じゃあね〜」
きゅるちゅは彼女の腕を引っ張り、念願のスイーツブュッフェに足取り軽やかに向かう。
「ごゆっくり」
彼女は肩をすくめ、ほどほどにね、とエフにアイコンタクト。
「二人とも可愛いんだから、気をつけるのよ〜」
エフは片手を振って二人を見送り、「さて」と恭遠の片腕を両腕でがっちりホールド。
「アタシたちも行きましょうか」
「……どこへ?」
「うふ。際どい質問」
男の腕力で恭遠を引きずりながら、エフは楽しそうに微笑んだ。
____
ナンパ男撃退法
【第一部隊】ファル、アインス
ファルがじわじわと誘導尋問を仕掛け、ラスボス(アインス)が睨みをきかせて駆除完了。
【第二部隊】ベルガー、ホクサイ、ゴースト
おらおらガン飛ばし組が対象を脅しているうちに、ゴーストくんがそっと彼女を連れ去る。
【第三部隊】きゅるちゅ、エフ
きゅるちゅがお姉ちゃんに甘える弟を演じ、彼女を対象から引き離す。エフは対象を逆ナン。好みでなかった場合は「鏡見て出直して来い」と毒吐く。