食べると言う字
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ミヤコとの待ち合わせ当日。
晴れた良い日だった。
お目当ての場所は室内施設だけれど、雨が降らないに越したことはない。
駅近くの噴水の前で待っていると、
「ごめんね、遅れた!」
「ううん、大丈夫」
約束の時間から10分遅刻してミヤコがやってきた。
何やら紙袋を手にぶら下げて。
「その袋何?」
「芸人さんへの差し入れ。ここに来る途中買ったから遅れちゃったの」
差し入れなんて考えたことなかった。
それが普通なのだろうか。
取り敢えず分かったことは、思ったよりミヤコがお笑い芸人が好きだということ。
「遅れた身で言うのもなんだけど、時間押してるから行こうか」
「そうだね」
私は先導して歩くミヤコの半歩後ろに付いて行った。
会場に着くと既に観客でいっぱいだった。
チケットを確認して座席へと座る。
場所は下手 側の前から1桁列目。
割と見やすい場所だった。
始まるのを待っている間、ミヤコはお目当ての芸人さんの話をしてくれた。
今日の差し入れもその人にあげるものだと言っている。
ほどなくして照明が薄暗くなった。
軽快な音楽とともに入場する芸人さんたちは次々とネタを披露する。
「ふふっ」
知らない芸人さんたちだったけれど、思わず笑ってしまうくらいには面白かった。
若手と言え芸人。
ネタもトークもしっかりしている。
特にあのネタが……と感想を頭の中で整理していると、次に登壇した芸人さんの顔に見覚えがあった。
バイト先で先日も会った猫背に猫目の彼だ。
芸人さんなのは知っていたけれど、この目で見るまではどこか半信半疑だった。
「どうもー、マウンティングキング・福永です」
それが彼の芸名。
長い、長すぎる。
だけど、後半部分の福永は本名かしら。
「3分でパエリア作ります……ってここでは火気厳禁でした。作ろうもんならスプリンクラーが作動して雑炊になっちゃいますね」
こんなに饒舌に話す彼を初めて見た。
その後も福永さんは渾身のネタを連発して会場を沸かせた。
こうしてライブは大繁盛で終わった。
「あー!面白かったー!●●はどうだった?」
「私も面白かった。誘ってくれてありがとうね」
「いえいえ、お安い御用よ。さて、じゃあ出待ちしますか」
一度会場を後にして、芸人さんたちが出てくるであろう裏口へと回る。
ほどなくして、そこから先ほどネタを披露していた芸人さんがチラホラと出てきた。
「あっ!」
もちろんミヤコのお目当ての芸人さんも。
彼女は真っ先に彼の元へ駆け寄り、労いの言葉と共に差し入れが入った手提げ袋を渡した。
それを受け取る芸人と何やら楽しそうに話し始める。
内容までは聞こえないけれど、私はその様子を離れて見ていた。
しばらく眺めていると、遅れて1人の芸人さんが裏口から出てきた。
「あ、福永さん……」
で、名前合っているよね?
ひとり言のつもりで呟いたつもりだったのに、どうやら聞こえていたらしく、彼は足を止めてこちらに振り向いてくれた。
「……居酒屋の」
覚えていてくれたんだ、嬉しい。
「あ、はい、そうです。今日は友達に誘われて来たんですけど、まさか福永さんに会えるなんて……」
せっかくだから感想を伝えたい。
「ネタとても面白かったです!特に────のところなんか────で、────が……って私、喋りすぎですよね。あはは……」
伝えたい思いばかりが先行して、上手くまとまらなかった。
それなのに、福永さんは満更でもない顔で一言お礼を言ってくれた。
「ありがとう」
舞台上の彼とは打って変わって普段通りの無口な彼になっている。
だけど、それは決して不機嫌だからとかではない。
これが彼の通常運転なのだ。
「これから打ち上げ。◯◯さんも来ますか?」
「え、なんで私の名前……」
「名札」
ああ、なるほど。
バイトの制服に付いている名札を見たからか。
「友達も一緒にいいですか?」
福永さんはミヤコと彼女が話をしている芸人さんをチラリと見ると、無言で頷いた。
晴れた良い日だった。
お目当ての場所は室内施設だけれど、雨が降らないに越したことはない。
駅近くの噴水の前で待っていると、
「ごめんね、遅れた!」
「ううん、大丈夫」
約束の時間から10分遅刻してミヤコがやってきた。
何やら紙袋を手にぶら下げて。
「その袋何?」
「芸人さんへの差し入れ。ここに来る途中買ったから遅れちゃったの」
差し入れなんて考えたことなかった。
それが普通なのだろうか。
取り敢えず分かったことは、思ったよりミヤコがお笑い芸人が好きだということ。
「遅れた身で言うのもなんだけど、時間押してるから行こうか」
「そうだね」
私は先導して歩くミヤコの半歩後ろに付いて行った。
会場に着くと既に観客でいっぱいだった。
チケットを確認して座席へと座る。
場所は
割と見やすい場所だった。
始まるのを待っている間、ミヤコはお目当ての芸人さんの話をしてくれた。
今日の差し入れもその人にあげるものだと言っている。
ほどなくして照明が薄暗くなった。
軽快な音楽とともに入場する芸人さんたちは次々とネタを披露する。
「ふふっ」
知らない芸人さんたちだったけれど、思わず笑ってしまうくらいには面白かった。
若手と言え芸人。
ネタもトークもしっかりしている。
特にあのネタが……と感想を頭の中で整理していると、次に登壇した芸人さんの顔に見覚えがあった。
バイト先で先日も会った猫背に猫目の彼だ。
芸人さんなのは知っていたけれど、この目で見るまではどこか半信半疑だった。
「どうもー、マウンティングキング・福永です」
それが彼の芸名。
長い、長すぎる。
だけど、後半部分の福永は本名かしら。
「3分でパエリア作ります……ってここでは火気厳禁でした。作ろうもんならスプリンクラーが作動して雑炊になっちゃいますね」
こんなに饒舌に話す彼を初めて見た。
その後も福永さんは渾身のネタを連発して会場を沸かせた。
こうしてライブは大繁盛で終わった。
「あー!面白かったー!●●はどうだった?」
「私も面白かった。誘ってくれてありがとうね」
「いえいえ、お安い御用よ。さて、じゃあ出待ちしますか」
一度会場を後にして、芸人さんたちが出てくるであろう裏口へと回る。
ほどなくして、そこから先ほどネタを披露していた芸人さんがチラホラと出てきた。
「あっ!」
もちろんミヤコのお目当ての芸人さんも。
彼女は真っ先に彼の元へ駆け寄り、労いの言葉と共に差し入れが入った手提げ袋を渡した。
それを受け取る芸人と何やら楽しそうに話し始める。
内容までは聞こえないけれど、私はその様子を離れて見ていた。
しばらく眺めていると、遅れて1人の芸人さんが裏口から出てきた。
「あ、福永さん……」
で、名前合っているよね?
ひとり言のつもりで呟いたつもりだったのに、どうやら聞こえていたらしく、彼は足を止めてこちらに振り向いてくれた。
「……居酒屋の」
覚えていてくれたんだ、嬉しい。
「あ、はい、そうです。今日は友達に誘われて来たんですけど、まさか福永さんに会えるなんて……」
せっかくだから感想を伝えたい。
「ネタとても面白かったです!特に────のところなんか────で、────が……って私、喋りすぎですよね。あはは……」
伝えたい思いばかりが先行して、上手くまとまらなかった。
それなのに、福永さんは満更でもない顔で一言お礼を言ってくれた。
「ありがとう」
舞台上の彼とは打って変わって普段通りの無口な彼になっている。
だけど、それは決して不機嫌だからとかではない。
これが彼の通常運転なのだ。
「これから打ち上げ。◯◯さんも来ますか?」
「え、なんで私の名前……」
「名札」
ああ、なるほど。
バイトの制服に付いている名札を見たからか。
「友達も一緒にいいですか?」
福永さんはミヤコと彼女が話をしている芸人さんをチラリと見ると、無言で頷いた。
