食べると言う字
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ーーおまけ②(福永side)ーー
高校を卒業してからお笑いの養成所へ入った。
そこでお笑いの基礎、発音発声を学んだ。
仲間もできた。
だけど、どうやら俺とコンビを組むのは難しいらしく、ソロの道を選ぶことにした。
1年ほどで卒業した後、若手としてデビュー。
養成所では先生に良い評価をもらっていたから、デビューしてもやっていける。
そんな自信があった。
だけど現実はそう甘くはない。
ライブや営業の稼ぎだけでは苦しい日々を送る。
ときには、大して為にならない先輩のご飯会に参加して食費を浮かせることも。
ただ、嫌なことばかりでもない。
その日のライブはいつもよりウケた。
だから自分へのご褒美として、よく先輩に連れて行かれる居酒屋に1人で行くことに。
すると、
「今日は1人なんですね」
たまに見かける店員さんにそんなことを言われてしまった。
制服に付いている名札を見ると◯◯と書かれていた。
「今日はウケたから、自分へのご褒美」
きっと今日の俺は浮かれていたんだ。
普段ならこんなこと絶対に言わない。
だからか、彼女は続けて話題を振ってきた。
「お酒は飲まれないんですか?……あ、ほらいつもいらっしゃるとき飲まれないので、ご褒美のときくらいは……」
「俺、まだ19」
そんなに老けて見えるだろうか。
「え、あ、すみません!未成年にお酒を勧めたの、内緒にしてください!なんて、私もまだ未成年なんですけど、アハハ……。えっと、お料理、直ぐに用意しますね!」
そう言うと、彼女は深く頭を下げて厨房へと行ってしまった。
しばらく待っていると、彼女が料理を運んてきた。
「お待たせ致しました。ご注文のお品と……さっき失礼なことを言っちゃったお詫びです」
美味しそうなお刺身。
別に失礼だとは思っていないけれど、頂けるならありがたく食べる。
ライブはウケるし、お刺身はサービスしてもらえたし、今日はいい日だ。
ーーーー
後日行われたライブで◯◯さんと会った。
本当は打ち上げに誘うつもりはなかったけれど、先日のお刺身のことを思い出して誘うことにした。
これを機に彼女は度々俺のライブに来てくれるようになり、俺も彼女のバイト先の居酒屋を個人的にも利用するようになった。
行くと毎回彼女は何かしらのサービスをしてくれる。
いつしかそれが楽しみになっていた。
「いつもありがとうございます。それとこれ……」
今日のサービスは煮卵だった。
「実は私が仕込んだんですけど、全部固茹でになっちゃって……」
あはは、と苦笑いをする◯◯さん。
周りを見渡すと、今日は俺だけでなく他の客のテーブルにも煮卵が置いてあった。
俺だけが特別だと思っていたのに。
なんだか面白くない。
そんなモヤモヤを引きずったのか、その後のライブは失敗続き。
いつもご褒美と称して利用していた居酒屋。
それなのに、失敗した今日も何故か自然と足が出向いていた。
そんな俺を◯◯さんはお店に入るや否やいち早く気付いた。
「今日は元気ないですね」
話すつもりなんてなかったのに。
格好悪いところなんて見せたくないのに。
彼女の前ではお喋りになってしまう。
「今日は全くウケなかった。ションボリおしぼり」
ギャグの切れだって悪い。
彼女の中の俺は、いつまでも面白い俺でいて欲しいのに。
うじうじしているうちに、彼女が料理を運んできた。
「お待たせ致しました」
注文した料理とは別にいつものサービスの小鉢。
今日の小鉢は……納豆?
すると彼女は、
「仕事はこの納豆の様に粘り強くするものですよ!」
なんてファイティングポーズをする。
納豆……ネバネバ……ネバーギブアップ。
ふふ……。
彼女の言う通り、もう少し頑張ってみるか。
そのために、まずはお笑い1本でやってけると思っているプライドを捨ててバイトを探そう。
そうだ、ネタで使っているパエリアを作れる場所がいい。
それで、少しでも自分が許せるようになったら、彼女にお礼と俺の想いを伝えよう。
タイムリミットは9月29日。
俺の20歳の誕生日。
高校を卒業してからお笑いの養成所へ入った。
そこでお笑いの基礎、発音発声を学んだ。
仲間もできた。
だけど、どうやら俺とコンビを組むのは難しいらしく、ソロの道を選ぶことにした。
1年ほどで卒業した後、若手としてデビュー。
養成所では先生に良い評価をもらっていたから、デビューしてもやっていける。
そんな自信があった。
だけど現実はそう甘くはない。
ライブや営業の稼ぎだけでは苦しい日々を送る。
ときには、大して為にならない先輩のご飯会に参加して食費を浮かせることも。
ただ、嫌なことばかりでもない。
その日のライブはいつもよりウケた。
だから自分へのご褒美として、よく先輩に連れて行かれる居酒屋に1人で行くことに。
すると、
「今日は1人なんですね」
たまに見かける店員さんにそんなことを言われてしまった。
制服に付いている名札を見ると◯◯と書かれていた。
「今日はウケたから、自分へのご褒美」
きっと今日の俺は浮かれていたんだ。
普段ならこんなこと絶対に言わない。
だからか、彼女は続けて話題を振ってきた。
「お酒は飲まれないんですか?……あ、ほらいつもいらっしゃるとき飲まれないので、ご褒美のときくらいは……」
「俺、まだ19」
そんなに老けて見えるだろうか。
「え、あ、すみません!未成年にお酒を勧めたの、内緒にしてください!なんて、私もまだ未成年なんですけど、アハハ……。えっと、お料理、直ぐに用意しますね!」
そう言うと、彼女は深く頭を下げて厨房へと行ってしまった。
しばらく待っていると、彼女が料理を運んてきた。
「お待たせ致しました。ご注文のお品と……さっき失礼なことを言っちゃったお詫びです」
美味しそうなお刺身。
別に失礼だとは思っていないけれど、頂けるならありがたく食べる。
ライブはウケるし、お刺身はサービスしてもらえたし、今日はいい日だ。
ーーーー
後日行われたライブで◯◯さんと会った。
本当は打ち上げに誘うつもりはなかったけれど、先日のお刺身のことを思い出して誘うことにした。
これを機に彼女は度々俺のライブに来てくれるようになり、俺も彼女のバイト先の居酒屋を個人的にも利用するようになった。
行くと毎回彼女は何かしらのサービスをしてくれる。
いつしかそれが楽しみになっていた。
「いつもありがとうございます。それとこれ……」
今日のサービスは煮卵だった。
「実は私が仕込んだんですけど、全部固茹でになっちゃって……」
あはは、と苦笑いをする◯◯さん。
周りを見渡すと、今日は俺だけでなく他の客のテーブルにも煮卵が置いてあった。
俺だけが特別だと思っていたのに。
なんだか面白くない。
そんなモヤモヤを引きずったのか、その後のライブは失敗続き。
いつもご褒美と称して利用していた居酒屋。
それなのに、失敗した今日も何故か自然と足が出向いていた。
そんな俺を◯◯さんはお店に入るや否やいち早く気付いた。
「今日は元気ないですね」
話すつもりなんてなかったのに。
格好悪いところなんて見せたくないのに。
彼女の前ではお喋りになってしまう。
「今日は全くウケなかった。ションボリおしぼり」
ギャグの切れだって悪い。
彼女の中の俺は、いつまでも面白い俺でいて欲しいのに。
うじうじしているうちに、彼女が料理を運んできた。
「お待たせ致しました」
注文した料理とは別にいつものサービスの小鉢。
今日の小鉢は……納豆?
すると彼女は、
「仕事はこの納豆の様に粘り強くするものですよ!」
なんてファイティングポーズをする。
納豆……ネバネバ……ネバーギブアップ。
ふふ……。
彼女の言う通り、もう少し頑張ってみるか。
そのために、まずはお笑い1本でやってけると思っているプライドを捨ててバイトを探そう。
そうだ、ネタで使っているパエリアを作れる場所がいい。
それで、少しでも自分が許せるようになったら、彼女にお礼と俺の想いを伝えよう。
タイムリミットは9月29日。
俺の20歳の誕生日。
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