ゼロ日婚の果て
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〜ゼロ日婚の果て〜
私が相澤の名字になってから早数年。
子供にも恵まれて、傍から見たら順風満帆に見えるだろう。
だけど、私は決して消太と恋愛結婚したわけではない。
今では授かり婚なんてオブラートに言われているけれど、いわゆるデキ婚。
だから、結婚当初から恋愛感情がなく、子供がいるから一緒に暮らしている。
子供の父親。
そんな目でしか彼を見ていない。
いつも漠然と離婚したいと思っていた。
ーーーー
今から4年前。
その日は失恋の悲しみを紛らわすために居酒屋でお酒を煽っていた。
振られた理由は至ってシンプル。
彼氏の浮気だ。
思い出すだけで怒りが込み上がってくる。
手に持っていたおちょこのお酒を飲みきり、荒んだ声で追加注文した。
「大将!同じのをもう一杯!」
「お客さん、ちょっと飲み過ぎじゃない」
呂律の回らない私、テーブルの上の空の徳利の量。
それを見た大将は酒を渋ってきた。
黙って提供すればいいものを。
更にイライラする。
大将を一睨みしたところで、
「彼女は俺が送り届けるから、好きなだけ飲ませてやってくれ」
隣の席の男性がボソッそんなことを言ってきた。
ボサボサに伸びた髪、だらしない無精髭、疲れたような目。
全体的に暗い人だと思った。
送られるつもりは毛頭ないけれど、お酒が飲めるならなんでもよかった。
「アンタ誰」
「俺は相澤消太」
「ふーん」
名前を聞いておいて興味のない私は、返事もほどほどに配膳されたお酒をグビッと一口。
体に染み渡る。
その後、相澤と名乗った男は色々と話していたけれど、お酒にしか興味のない私は彼の話を右から左へと聞き流した。
何杯目かの酒瓶を空にしたところで、
「お客さん、そろそろラストオーダーです」
酒を提供してくれなかったことに文句は言ったけれど、ラストオーダーに難癖付けるほど非常識ではない。
伝票に手を伸ばそうとしたところで、何故か相澤が私の分の伝票も持ってレジへと向った。
「えっ、ちょっと」
伝票を奪え返そうにも、席を立つとよろめいてしまって真っ直ぐ歩けなかった。
モタモタしているうちにお会計は終わった。
「ほら、行くぞ」
相澤に腕を掴まれて一緒に店の外へと出る。
「自分の分は自分で払うのに」
素直にありがとう、ご馳走様と言えない私。
相澤はそんな私を後ろめたい気持ちにさせないようにか、
「じゃあ、もう一軒行くか。そっちの会計は任せる」
二軒目に誘ってきた。
「分かった。どこで飲み直す?」
だけど、時刻は0時過ぎ。
こんな時間に空いていると言えばバーくらいしかない。
バーみたいなオシャレなところは苦手だ。
相澤は少し悩んだ素振りを見せる。
「俺の家、ここから近くなんだけど、そこで飲み直すか」
バーより幾分マシだと思い、私は二つ返事をした。
途中通りかかったコンビニでお酒とツマミを調達し、相澤の家へと向かった。
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