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とある日の昼下がり、大切な話があるから、と上司に呼ばれた。
「実はな、事業が波に乗ってきたから、拡大しようと考えているんだ」
「はい」
「それで、新しい事務所の代表を◯◯に頼みたい。やってくれるよな?」
「……」
雄英高校を卒業してから今までお世話になった事務所。
頷くことしかできなかった。
こうして、ヒーロー事務所の事業拡大に伴って、新しい事務所への異動が決まった。
それは本来なら嬉しいはずのステップアップ。
でも、心の底からは喜べなかった。
新しい勤務地は、先生の家からだとどうしても通いづらい距離。
つまり、引っ越さなければいけない。
もともと無理を言って先生の家に転がり込ませてもらっていたんだし、引っ越せば先生の生活も元通りになる。
先生にとっても嬉しい話なんだろう。
でも……ほんの少しでも、寂しがってくれたらいいのに。
ーーーー
帰宅すると、いつもと変わらない先生の家。
リビングを覗くと、先生がソファで横になって眠っていた。
片腕を額に乗せて微かに寝息を立てている。
転がっていたブランケットをそっと先生に掛けた。
それから、横にしゃがみ込み顔を覗き込む。
普段は絶対見せない、無防備な寝顔。
目の下にはうっすらと隈が出ていて、顎には無精髭が生えている。
一目で、今日も忙しかったことがうかがえる。
「ねえ、先生……」
「……」
しっかりと寝ていることを確認してから、話を続けた。
「私、本当に先生のことが好きなの」
悲痛な叫び。
「先生はいつまで経っても、私のことを子供扱いするけど……もうお酒だって、タバコだって、けっ……結婚だって、できるんだよ?」
寝ている先生から返事があるはずもなく、静かな室内に私の声だけが落ちていく。
「私ね、異動で遠くの事務所に行かなきゃいけなくなったの。だから、この家も近々出ていくね」
寝ているときに言ったって意味がないのにね。
「先生、どうしたら私のこと、好きになってくれる?」
普段は絶対に口にできない本音を、眠っている先生にだけそっと打ち明ける。
心臓が苦しくて、吐き出すたびに涙がこぼれそうになる。
「ねえ、答えてよ。先生……」
実際、今ここで目を覚まされたら困るくせに。
勝手なことだって分かっているけど。
言わざるを得なかった。
先生は、相変わらず規則正しい寝息を立てている。
「スー……スー……」
そんな先生の頬に顔を近付け、ほんの少しだけ勇気を出して唇を触れさせた。
髭がチクチクして痛い。
「起きない先生が悪いんだからね」
そして、再度頬にキスを落とす。
本当は唇にしたかったけれど、今の私にはこれが精一杯だった。
それから、もう1度だけ先生の寝顔を見つめた。
「実はな、事業が波に乗ってきたから、拡大しようと考えているんだ」
「はい」
「それで、新しい事務所の代表を◯◯に頼みたい。やってくれるよな?」
「……」
雄英高校を卒業してから今までお世話になった事務所。
頷くことしかできなかった。
こうして、ヒーロー事務所の事業拡大に伴って、新しい事務所への異動が決まった。
それは本来なら嬉しいはずのステップアップ。
でも、心の底からは喜べなかった。
新しい勤務地は、先生の家からだとどうしても通いづらい距離。
つまり、引っ越さなければいけない。
もともと無理を言って先生の家に転がり込ませてもらっていたんだし、引っ越せば先生の生活も元通りになる。
先生にとっても嬉しい話なんだろう。
でも……ほんの少しでも、寂しがってくれたらいいのに。
ーーーー
帰宅すると、いつもと変わらない先生の家。
リビングを覗くと、先生がソファで横になって眠っていた。
片腕を額に乗せて微かに寝息を立てている。
転がっていたブランケットをそっと先生に掛けた。
それから、横にしゃがみ込み顔を覗き込む。
普段は絶対見せない、無防備な寝顔。
目の下にはうっすらと隈が出ていて、顎には無精髭が生えている。
一目で、今日も忙しかったことがうかがえる。
「ねえ、先生……」
「……」
しっかりと寝ていることを確認してから、話を続けた。
「私、本当に先生のことが好きなの」
悲痛な叫び。
「先生はいつまで経っても、私のことを子供扱いするけど……もうお酒だって、タバコだって、けっ……結婚だって、できるんだよ?」
寝ている先生から返事があるはずもなく、静かな室内に私の声だけが落ちていく。
「私ね、異動で遠くの事務所に行かなきゃいけなくなったの。だから、この家も近々出ていくね」
寝ているときに言ったって意味がないのにね。
「先生、どうしたら私のこと、好きになってくれる?」
普段は絶対に口にできない本音を、眠っている先生にだけそっと打ち明ける。
心臓が苦しくて、吐き出すたびに涙がこぼれそうになる。
「ねえ、答えてよ。先生……」
実際、今ここで目を覚まされたら困るくせに。
勝手なことだって分かっているけど。
言わざるを得なかった。
先生は、相変わらず規則正しい寝息を立てている。
「スー……スー……」
そんな先生の頬に顔を近付け、ほんの少しだけ勇気を出して唇を触れさせた。
髭がチクチクして痛い。
「起きない先生が悪いんだからね」
そして、再度頬にキスを落とす。
本当は唇にしたかったけれど、今の私にはこれが精一杯だった。
それから、もう1度だけ先生の寝顔を見つめた。
