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先生の家は、私が想像していたよりもずっと質素だった。
リビングには必要最低限の家具と家電。
生活感はあるものの、男の1人暮らしといった感じだ。
「取り敢えず、先に風呂に入らせてくれ。クタクタなんだ」
先生の格好を改めて見ると、確かに汚れていた。
戦闘訓練が大変だったんだろう。
初めての家に足を踏み入れて戸惑う私を置いて、先生は着替えを持ってお風呂へ行ってしまった。
浴室の扉を閉める音が聞こえ、リビングにはシンとした静けさが戻る。
まさか、こんな形で先生の家に来ることになるなんて、思ってもみなかったな……。
ふと、デスクの上を見ると、乱雑に置かれたファイルに数枚の写真が挟まっているのが見えた。
その中から1枚手に取る。
「これ……」
先生が受け持ったクラスの集合写真だった。
意外と大切に取ってあるんだ……。
そう思うと同時に、たとえ卒業しても、私は先生にとっていつまでも生徒の1人に過ぎないのではないかという気がした。
しっかりした社会人……とは自信を持って言えないけれど、先生に今の私を見て欲しい。
あのときの子供じゃなくて、大人になった私を。
気付けば、浴室の扉の前に立っていた。
ほんの出来心。
でも心臓がドクドク鳴る。
そっと扉をノックしたけど反応がない。
私は身に付けているものを脱ぎ、そろりと扉を開けた。
「……先生」
私を見て、先生の視線がピクリと動いた。
「……なんだ、お前。どうした?」
勇気を振り絞って言葉を続ける。
「あの……お背中流そうかと思って……」
先生、私を女として見てよ……。
息がつまるような沈黙が流れる。
だけど先生は興味なさげに鋭い視線を向けた。
「……このクソガキ」
とても低く、怒ったような声。
ああ、これはヤバいヤツだ。
「ご、ごめんなさい」
慌てて謝り、浴室を後にしようとしたら、
「いい。もう出るから、そのまま使え」
先生は腰にタオルを巻き、そのまま浴室から出ていってしまった。
後悔しながら、熱いシャワーを顔に浴びせる。
すると、涙なのかお湯なのかわからないものが流れてきた。
ーーーー
しばらくしてリビングに戻ると、先生は何もなかったかのように鍋でお湯を沸かしていた。
「お風呂、ありがとうございました……」
気まずさを覚えながらお礼を言うと、
「腹、減ってるか」
先程のことにも触れず、テーブルの上に目配せした。
そこには2つのカップラーメン。
先生らしい、合理的なメニューだ。
「……食べます」
普段通りを装おうとしても、さっきの後悔がじわじわ染みてきて、うまく笑えなかった。
それなのに、先生は何も聞かずに、沸騰したお湯をカップに注ぐ。
なんの変哲もないただの醤油ラーメンなのに美味しい。
静かにラーメンを啜る音だけが、夜の部屋に響いた。
リビングには必要最低限の家具と家電。
生活感はあるものの、男の1人暮らしといった感じだ。
「取り敢えず、先に風呂に入らせてくれ。クタクタなんだ」
先生の格好を改めて見ると、確かに汚れていた。
戦闘訓練が大変だったんだろう。
初めての家に足を踏み入れて戸惑う私を置いて、先生は着替えを持ってお風呂へ行ってしまった。
浴室の扉を閉める音が聞こえ、リビングにはシンとした静けさが戻る。
まさか、こんな形で先生の家に来ることになるなんて、思ってもみなかったな……。
ふと、デスクの上を見ると、乱雑に置かれたファイルに数枚の写真が挟まっているのが見えた。
その中から1枚手に取る。
「これ……」
先生が受け持ったクラスの集合写真だった。
意外と大切に取ってあるんだ……。
そう思うと同時に、たとえ卒業しても、私は先生にとっていつまでも生徒の1人に過ぎないのではないかという気がした。
しっかりした社会人……とは自信を持って言えないけれど、先生に今の私を見て欲しい。
あのときの子供じゃなくて、大人になった私を。
気付けば、浴室の扉の前に立っていた。
ほんの出来心。
でも心臓がドクドク鳴る。
そっと扉をノックしたけど反応がない。
私は身に付けているものを脱ぎ、そろりと扉を開けた。
「……先生」
私を見て、先生の視線がピクリと動いた。
「……なんだ、お前。どうした?」
勇気を振り絞って言葉を続ける。
「あの……お背中流そうかと思って……」
先生、私を女として見てよ……。
息がつまるような沈黙が流れる。
だけど先生は興味なさげに鋭い視線を向けた。
「……このクソガキ」
とても低く、怒ったような声。
ああ、これはヤバいヤツだ。
「ご、ごめんなさい」
慌てて謝り、浴室を後にしようとしたら、
「いい。もう出るから、そのまま使え」
先生は腰にタオルを巻き、そのまま浴室から出ていってしまった。
後悔しながら、熱いシャワーを顔に浴びせる。
すると、涙なのかお湯なのかわからないものが流れてきた。
ーーーー
しばらくしてリビングに戻ると、先生は何もなかったかのように鍋でお湯を沸かしていた。
「お風呂、ありがとうございました……」
気まずさを覚えながらお礼を言うと、
「腹、減ってるか」
先程のことにも触れず、テーブルの上に目配せした。
そこには2つのカップラーメン。
先生らしい、合理的なメニューだ。
「……食べます」
普段通りを装おうとしても、さっきの後悔がじわじわ染みてきて、うまく笑えなかった。
それなのに、先生は何も聞かずに、沸騰したお湯をカップに注ぐ。
なんの変哲もないただの醤油ラーメンなのに美味しい。
静かにラーメンを啜る音だけが、夜の部屋に響いた。
