やってきた浮気捏造作戦当日。
私は子供を実家に預けてから夫に連絡を入れた。


“体調が悪いから今日は夜ご飯を外で済ませてきて“


休憩時間だったのか、返事は直ぐに返ってきた。


“大丈夫か。何か買って帰るけど”


結婚してから今まで体調を崩したことがなかったけれど、意外と気の利くことが言えるんだ。
初めて知った。

だけど、ここでそれをお願いすると作戦が崩れる。

私は続けて返事を返した。


“子供は実家に預けたし、私は食欲ないから。久しぶりにあの居酒屋でも行ってきたら？”


あの居酒屋とは夫の行きつけの居酒屋のこと。
私と初めて会ったあの場所。


“分かった。なるべく早く帰る”


ゆっくりでいいよ、と思いながらもさすがにそこまで言うと不自然のため、それ以上返信はしなかった。


ーーーー


ヒトミと居酒屋の入口が見えるカフェで張り込み。

私は気付かれないように眼鏡と帽子で変装。
ヒトミは夫を誘惑してもらわないといけないから、下品にならない程度には露出のある服装で来てもらった。


「なんだかワクワクするね！」


張り切っているヒトミに対して、私は不安でしかなかった。


「そろそろだと思うんだけど……」


飲み物を啜っていると、見覚えのある男性が居酒屋に入っていった。


「夫だ……」

「じゃあ、私行ってくるね」

「うん、夫の席の場所連絡してね。私も後から気付かれないように入るから」


ヒトミを送り出してから程なくして、彼女から連絡が来た。

夫が座った場所の写真。
そこは幸いにも入り口から死角で、私が入っても気付かれない場所だった。
その上、写真を見た限り意外と席が空いているため、好きなところを選べそうだ。

私は帽子を深く被り直してから、居酒屋へと向かった。