〜第一章〜 歪みの城へようこそ
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~第一章~ 歪みの城へようこそ
晴れた空。
こんな日は洗濯物がよく乾く。
町外れの一軒家の庭で、背伸びをしながら一人分の洗濯物を干している小柄な女性。
名前はピアニシモ・スラー。
周りからは“ピアノ”という愛称で呼ばれている。
「これだけ天気が良ければ、すぐに乾きそう」
誰に話すでもないのに、人と会話をしているのとさほど変わらないトーンで独り言を言う。
洗濯物を済ませると、部屋の掃除へと移った。
掃き掃除に拭き掃除、手際よくこなしていると、自動二輪車の音が聞こえてきた。
郵便配達員さんだ。
「ピアニシモさーん、小包です」
「はーい、今行きます」
急いで身なりを整えて、玄関先へと向かった。
「サインお願いします」
「はい」
サラサラとサインを書くと、小包を受け取った。
一つは長方形、もう一つは正方形。
どちらも手のひらサイズの軽い箱だ。
「では、確かに」
「ありがとうございました」
郵便配達員さんを見送ると、リビングへと戻る。
さっそく長方形の箱から開けることにした。
包装用紙を破り、蓋を開けると中には綺麗なネックレスが入っていた。
「綺麗……」
ネックレスを手に取り、まじまじと眺める。
チェーンの部分はシンプルだが、一つの大きな赤色のジュエリーが施されていた。
「誰がこれを……」
ピアノは今更ながら送り主の確認をしようとして、あることに気が付いた。
差出人不明で、自分宛てではない荷物だということに。
確認をせずに開けたピアノも悪いが、郵便配達員もずいぶんいい加減な仕事をするものだ。
だけど、開けてしまった事実には変わりない。
机の上には正方形の箱と、開けてしまった長方形の箱、そしてビリビリに破れた包装用紙が。
どう足掻いても元に戻せない。
「どうしよう……」
途方に暮れているとドアがノックされ、再び誰かがピアノの家を訪れた。
田舎なのに、今日はお客が多い日だ。
「あ、はーい」
ピアノは返事をすると、とっさにネックレスをポケットへとしまった。
ひとまず荷物のことは後回しにして、玄関へと向かう。
ドアを開けると、そこにはお隣さんのアレグロ・モデラートおばさんがいた。
お隣と言っても、目視できる距離には家がなく、かなりの距離が開いている。
田舎ならではの距離感だ。
「アレグロおばさん!どうしたんですか?」
アレグロの手にはバスケットが握られていた。
「庭で育てているベリーでジャムを作ったんだけど、量が多いからお裾分けに来たの」
そう話すと、アレグロはバスケットを開けて、中に入っている赤紫色のジャムが詰められた瓶をピアノに渡した。
「うわあー!こんなにもたくさん!ありがとうございます」
「いいのよ。息子も出て行ってしまったし、私と主人だけでは食べきれないから」
「アンダンテ兄さんは元気ですか?」
「さあね、出ていってから連絡を取っていないの」
「そうですか……」
アレグロの息子アンダンテは、ピアノより少し年上の青年である。
ピアノが幼い頃は、よく一緒に遊んでいた。
「それよりも、聞いてよ!」
「なんですか?」
女性特有の長話が始まった。
こうなってしまえば、誰かが止めるまで話し続けるのが女性の性というものだ。
