脂肪=幸せの量
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失恋の傷は、案外すぐに忘れることができた。
それは、勤め先の小ぢんまりとした定食屋に訪れる、常連さんのおかげである。
「●●ちゃんおるー?今日も来たでー!」
暖簾をくぐって現れたのは、太陽のような笑顔を浮かべた豊満太志郎さんだ。
丸っこくふくよかで、いつも明るくて、どことなくソースの香りを漂わせている。
彼が店に入ってくると、それだけで店内の空気が安心感に包まれる。
「太志郎さん!いらっしゃい!」
カウンター越しに挨拶を交わす。
いつもお昼を過ぎた時間に来るため、雑談がてら一度だけお仕事について尋ねたことがある。
そのときは「まあ、体張る仕事やねん」とはにかんで濁されてしまった。
名前は教えてくれたのに仕事は内緒なんだ、と思ったけれど、不思議と詮索する気は起きなかった。
「注文は何にしますか?」
「今日は日替わり定食にしようかな」
「ご飯特盛りサービスしますね」
「いつもありがとさん!」
二カッと白い歯を見せて笑う彼に、私の心臓がトクンと跳ねる。
厨房で個性を使い、料理を作っていく。
彼のためなら、1グラムの妥協もしたくない。
「はい、お待たせしました!」
運ばれてきた料理を、太志郎さんは本当に幸せそうに見つめた。
「いただきます!」
威勢の良い声と共に、大きな口でレバニラ炒めを頬張る。
「ほんま、●●ちゃんが作る飯は絶品や!」
「またまた〜!料理長のレシピ通りに作っているだけですよ」
「それならいつか●●ちゃんのオリジナルの料理が食うてみたいわ」
彼は箸を動かしながら、心底待ち遠しそうにそう言った。
元カレは、私の料理のせいで「太った」と文句をつけてきた。
だけど、太志郎さんは、私の作るものを全て受け止めてくれるような気がした。
そんな彼だから、私は思わず、手元のお盆で顔を半分隠しながら口にしていた。
「じゃあ……今度、うちに来ます?」
上目遣いで様子を窺う。
冗談ではない、1人の女性としての勇気を振り絞った誘い。
太志郎さんは一瞬、噛んでいた箸を止め、それから弾けるような笑顔を見せた。
「ええの?!行く!今度と言わずに今からでも!」
「え、今からですか?!今はちょっと、仕事中なので……」
あまりの食いつきぶりに、思わず焦って後退りしてしまう。
「あはは、堪忍な!ついつい嬉しゅうて。ほな、また時間あるときに誘ってぇや。楽しみにしてるから!」
「ご馳走様!」と綺麗に空になった皿を残し、彼は満足げに店を後にした。
去り際の大きな背中を見送りながら、私の鼓動はトクントクンと鳴り続けていた。
あんなにふくよかな人に抱きつかれたら、きっとマシュマロみたいに柔らかくて、太陽のように温かいんだろうな……。
「……私ったら、何考えてるんだろ」
はしたない妄想に頬を赤らめるけれど、止まらない。
だって、太志郎さんの体格は、私にとってそれほど魅力的だったから。
それは、勤め先の小ぢんまりとした定食屋に訪れる、常連さんのおかげである。
「●●ちゃんおるー?今日も来たでー!」
暖簾をくぐって現れたのは、太陽のような笑顔を浮かべた豊満太志郎さんだ。
丸っこくふくよかで、いつも明るくて、どことなくソースの香りを漂わせている。
彼が店に入ってくると、それだけで店内の空気が安心感に包まれる。
「太志郎さん!いらっしゃい!」
カウンター越しに挨拶を交わす。
いつもお昼を過ぎた時間に来るため、雑談がてら一度だけお仕事について尋ねたことがある。
そのときは「まあ、体張る仕事やねん」とはにかんで濁されてしまった。
名前は教えてくれたのに仕事は内緒なんだ、と思ったけれど、不思議と詮索する気は起きなかった。
「注文は何にしますか?」
「今日は日替わり定食にしようかな」
「ご飯特盛りサービスしますね」
「いつもありがとさん!」
二カッと白い歯を見せて笑う彼に、私の心臓がトクンと跳ねる。
厨房で個性を使い、料理を作っていく。
彼のためなら、1グラムの妥協もしたくない。
「はい、お待たせしました!」
運ばれてきた料理を、太志郎さんは本当に幸せそうに見つめた。
「いただきます!」
威勢の良い声と共に、大きな口でレバニラ炒めを頬張る。
「ほんま、●●ちゃんが作る飯は絶品や!」
「またまた〜!料理長のレシピ通りに作っているだけですよ」
「それならいつか●●ちゃんのオリジナルの料理が食うてみたいわ」
彼は箸を動かしながら、心底待ち遠しそうにそう言った。
元カレは、私の料理のせいで「太った」と文句をつけてきた。
だけど、太志郎さんは、私の作るものを全て受け止めてくれるような気がした。
そんな彼だから、私は思わず、手元のお盆で顔を半分隠しながら口にしていた。
「じゃあ……今度、うちに来ます?」
上目遣いで様子を窺う。
冗談ではない、1人の女性としての勇気を振り絞った誘い。
太志郎さんは一瞬、噛んでいた箸を止め、それから弾けるような笑顔を見せた。
「ええの?!行く!今度と言わずに今からでも!」
「え、今からですか?!今はちょっと、仕事中なので……」
あまりの食いつきぶりに、思わず焦って後退りしてしまう。
「あはは、堪忍な!ついつい嬉しゅうて。ほな、また時間あるときに誘ってぇや。楽しみにしてるから!」
「ご馳走様!」と綺麗に空になった皿を残し、彼は満足げに店を後にした。
去り際の大きな背中を見送りながら、私の鼓動はトクントクンと鳴り続けていた。
あんなにふくよかな人に抱きつかれたら、きっとマシュマロみたいに柔らかくて、太陽のように温かいんだろうな……。
「……私ったら、何考えてるんだろ」
はしたない妄想に頬を赤らめるけれど、止まらない。
だって、太志郎さんの体格は、私にとってそれほど魅力的だったから。
