一番可能性が高い士傑高校。
先生に話を聞いたところ、助けてもらった日は半数以上の生徒が海外研修に行っており、残っていた生徒たちも名簿を見たところ違った。


「士傑高校もその他の関西の高校も違いましたね」


調査をした高校名簿のリストにチェックを入れていく環さん。

時間的に今日はここまで。

私たちは来た道を折り返す。


「●●ちゃん、そないヘコまんといて！明日は関東を探そか！なっ？」

「はい……」


結構な時間と労力をかけたのにも関わらず何の成果も得られなかった。
それなのにファットガムさんは終始嫌な顔を見せず、なんなら道中ギャグを挟んで楽しませようとしてくれた。

ヒーローってもっと派手な活躍や事件を解決しているものばかりで、こんな地味な調査をするイメージがなかったから、本当にファットガムさんのような存在はありがたかった。


「明日行こうと思う雄英高校は環の高校なんやで！そこで見つかるとええな！」

「はい……」


そもそも私は見つけてどうする気なんだろう。

だって、私は社会人なのに相手は高校生。
恋愛に発展するはずない。

たった一言お礼を言うためだけにここまでしてもらうことが申し訳なくなってきた。

もちろん金銭は発生しているけれど、一般的な探偵事務所に頼むより格安。
本当に生計が成り立つのだろうか、と素人ながら心配になる。


「もう遅いし、家まで送るわ！環はこのまま上がってええで！」

「え、悪いですよ！私も一人で帰れます」

「いやいや、●●ちゃん先週ストーカー被害に遭ったばかりやろ？遅らしてぇよ」

「でも……」


私が渋っている間にも環さんはお疲れ様です、とさっさと帰ってしまい、2人残されてしまった。

いつまでも押し問答しても仕方がない。


「それじゃあ……お願いします……」

「んっ！ほな行くで！」


私は道案内しながら自分の家へと向かった。


「次の角を右です」


横並びになってファットガムさんと歩く。
あの一目惚れした彼とは似てもに使わない体型だけれど、大きくて丸っこいフォルムはどこか安心感を与えてくれる。

そう思っていると、ファットガムさんがポロッと独り言を溢した。


「なんか、この道知っとる気が……」

「そうなんですか？」


この辺りは住宅地のため、基本的に住んでいる人以外は通らない道。


「ん〜なんでやろ？」


腕を組んで真剣に悩むファットガムさん。


「似たような道がありますし、そこと間違えているんじゃないですか？」

「そうかもしれへんな！」


そのときはファットガムさんの発言をあまり気にせずに帰宅した。