名前を聞くのを忘れていたし、ヒーローには詳しくない。
ヒーロービルボードチャートを見てもそれらしき人はいなかった。

だけど、どうしても……もう一度彼に会いたい。


「そういう訳で、彼を探してください！」


私は今、人探しの依頼をするためにファットガム事務所に来ている。


「よっしゃー！任しとき！」


この事務所を選んだ理由は、助けてくれた彼もファットガムさん同様関西弁だったから。

それに、他にも事務所を訪れたけれど、一目惚れした相手を探してほしいと話した途端門前払い。

やっと引き受けてもらえたのだ。


「よろしくお願いします！」

「せやけど、意気込んだはええけど、ヒーロービルボードチャートにも載ってなかったんやろ？どう思う環？」


ファットガムさんは一緒に話を聞いていた助手のような男性に話を振った。

後で聞いた話によるとインターンに来ている雄英高校の学生さんらしい。


「雄英とか士傑高校の学生の可能性もあるんじゃないですか？」

「一里ある！ほな、●●ちゃん行こうか！」

「え、私も行くんですか？」

「そらそうやろ。手がかりは●●ちゃんの記憶なんやから」


こうして私はファットガムさんとその助手さんの3人でヒーロー科のある高校へと足を運んだ。


ーーーー


1つ目はファットガム事務所から近い士傑高校へ向かった。


「士傑高校は俺の母校なんや！」

「そうなんですね」


ファットガムさんの母校。
ヒーローに詳しくないとは言え、全国に数あるヒーロー科の中でも、雄英高校と並び称されるほどの名門校だという話は聞いたことがある。

虱潰しに生徒たちに聞くのは大変なので、まずは職員室に寄った。


「邪魔するでー！」

「邪魔するなら帰ってやー！」

「はーい……ってなんでや！」


職員室に入るやいなや繰り広げられたファットガムさんと先生のコント。
関西ってこんなノリなのかと驚いた。

だけど、


「ふふっ」


思わず笑ってしまうほどファットガムさんがユーモアに溢れた方なんだって分かった。