探し人は誰ですか
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〜探し人は誰ですか〜
私は一目惚れをしてしまった。
遡ること1週間前。
仕事帰りに誰かにつけられている気がした。
街灯が少ない道だから恐怖感を煽られているのか、はたまた目的地がたまたま同じ方向なのか。
だけど、私が速歩きになれば後ろの人も速く歩き、靴紐を結び直すためにわざと止まると後ろの人も立ち止まる。
これは勘違いなどではない。
そしてついにその時がやってきた。
「あ、あの……すみません……」
「ひっ……はい、なんでしょうか」
話しかけられた。
生気がないような男性。
なぜかオドオドしており、視線が合わない。
ぱっと見た目は大人しそうな人だった。
右手に刃物を持っていること以外は。
それに気が付いてから声が出ない。
彼を刺激しないように逃げなければ。
本能では分かっているけれど、体が動かない。
そんな私に不審者はペラペラと語り始めた。
「ず、ずっと前からあなたを見ていました……。ぼ、僕は……あなたのことがすっ、……好きです。だけど……だけど、あなたは色んな男性に色目を使って……。僕という存在がありながら……」
何を言っているのか分からない。
初めて話す彼が私のことが好き?
そもそも色目って……。
ここ最近は職場の人かお店の店員さんとしか接していないのに。
「耐えられないんです。……あなたが、ぼっ……僕以外の人と喋るのが……。一層のことこの手で……ふひっ……。ねえ、いいよね?僕のことをこんなふうにさせた、キ、キミが悪いんだからね」
「あ……あっ……」
怖い……やばい……まずい……頭おかしい……。
逃げないと。
私の声よ、足よ、ちゃんとして!
「た……っ……助けて!」
ようやく声を発することができ、私は全力で走った。
が、しかし、直ぐに追いつかれて腕を掴まれてしまった。
「ねえ、何で逃げるの?だ……大丈夫。キ、キミを殺して……その後にちゃんと、……僕もそっちに行くから……ふひっ……」
「いやっ……」
振り上げられた刃物を持つ手。
殺される!
そう思ってぎゅっと目を閉じた。
そんなとき、
「もう大丈夫や!」
その声と共に目を開けると、頼もしい背中の男性が私と不審者の間に割って入り、刃物を持つ腕を押さえ込んでいた。
「だ、誰だお前!」
「こない物騒なもん持っとると危ないで!」
バシッと腕を手刀で叩くと、刃物が落とされた。
「ひっ!」
獲物がなくなった不審者は急に不安を覚えたのか、尻尾を巻いて逃げた。
「お、追わなくていいんですか」
「格好悪くて申し訳ないんやけど、俺一仕事終わった後にたまたま出会して、もう追いかける力が残ってへんのや」
「えっ……」
「ひとまず、お嬢さんを家まで送ることを優先させてくれへんか?」
「はいっ」
頼もしい背中、シュッとしたスタイル、どこか疲れたような表情だけどそれを感じさせないような明るい声。
その全てが素敵だった。
恋に落ちるには充分だった。
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