Interview with HERO
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取材2日目。
昨晩の作業のせいで、寝不足に加え肩凝りが治らない。
試しに昨日の15分間をコマ送りの無音動画に編集してみたけれど、結論から言えば、二度とやりたくない。
膨大な視覚データを脳から出力し、不慣れな編集ソフトと格闘するのは、想像を絶する重労働だった。
「ふぁ……あ……」
大きなあくびを噛み殺しながら、私はいつもの屋上で彼を待つ。
……。
…………。
ところが、約束の時間を過ぎてもホークスは現れなかった。
「仕事が立て込んでるのかな……」
まあ、No.3ともなれば多忙なのは当たり前。
1週間も時間を割いてくれること自体が、奇跡みたいなことだったのだ。
あと10分待って来なければ撤収しよう。
そう決めると、私は手持ち無沙汰を紛らわせるために双眼鏡を覗き込んだ。
「……おっ?」
少し離れた低層ビルから、細い黒煙が立ち上っているのが見えた。
火災か、それとも事件か。
カメラマンの血が騒ぐ。
ひょっとして、ホークス、あそこにいるのかしら……。
しばらく観察を続けると、消防車のサイレンが遠くに響き、迅速な消火活動によって火の手は収まった。
幸い、大きな火事にはならなかったようだけれど、現場周辺は騒然としている。
「さて、あそこまで行く価値はあるかしら……」
この程度のボヤなら、スマホを手にした野次馬たちが腐るほど写真を撮っているはずだ。
私がわざわざ記憶する必要はない。
だけれど、私は経験上知っている。
こういった騒動に乗っかり、強盗や引ったくりなどの二次被害が起こる可能性があることを。
私は双眼鏡のピントを絞り、現場の群衆を舐めるように追った。
……その時。
「あっ!」
赤いキャップを深く被り、マスクで顔を隠した男が、野次馬の1人の鞄から鮮やかな手つきで財布を抜き取った。
「逃さない……」
男の背丈、服装、逃走経路、全てを私の眼に焼き付ける。
証拠を固め、双眼鏡を顔から離そうとしたその瞬間、背後から突風が吹き抜けた。
「ホークス!?」
振り返ると、そこには彼がいた。
いつも涼しげなその姿は、所々黒く汚れ、微かに灰の匂いが漂っている。
自慢の赤い羽も、救助に使ったのか心なしかボリュームが減っているように見えた。
あの現場から、一直線に飛んできたのだ。
「……撮った!?」
開口一番、彼は鋭い声で尋ねた。
主語はなかったけれど、私には分かった。
スリの現場を捉えたかと聞いているのだ。
「中肉中背、赤いキャップに、黒のマスク。北へ逃げた」
余計な説明は省き、事実だけを突きつける。
それだけで、彼には充分だった。
「でかした!」
短く、弾むような声。
彼は一瞬だけニカッと笑うと、再び空へと羽ばたいた。
その速度は凄まじく、屋上のフェンスがガタガタと悲鳴を上げる。
「……本当に。忙しい男ね」
ゴシップを撮って金を稼ぐのは嫌いじゃない。
だけど、こうして良いことに役立てる写真を撮ることも、悪い気はしない。
「空が青いや……」
数分前と同じ空なのに、なぜこうも鮮やかに見えるのか。
私は鉄製のフェンスに背を預け、彼が消えていった空を、双眼鏡を使わずにしばらく見上げていた。
昨晩の作業のせいで、寝不足に加え肩凝りが治らない。
試しに昨日の15分間をコマ送りの無音動画に編集してみたけれど、結論から言えば、二度とやりたくない。
膨大な視覚データを脳から出力し、不慣れな編集ソフトと格闘するのは、想像を絶する重労働だった。
「ふぁ……あ……」
大きなあくびを噛み殺しながら、私はいつもの屋上で彼を待つ。
……。
…………。
ところが、約束の時間を過ぎてもホークスは現れなかった。
「仕事が立て込んでるのかな……」
まあ、No.3ともなれば多忙なのは当たり前。
1週間も時間を割いてくれること自体が、奇跡みたいなことだったのだ。
あと10分待って来なければ撤収しよう。
そう決めると、私は手持ち無沙汰を紛らわせるために双眼鏡を覗き込んだ。
「……おっ?」
少し離れた低層ビルから、細い黒煙が立ち上っているのが見えた。
火災か、それとも事件か。
カメラマンの血が騒ぐ。
ひょっとして、ホークス、あそこにいるのかしら……。
しばらく観察を続けると、消防車のサイレンが遠くに響き、迅速な消火活動によって火の手は収まった。
幸い、大きな火事にはならなかったようだけれど、現場周辺は騒然としている。
「さて、あそこまで行く価値はあるかしら……」
この程度のボヤなら、スマホを手にした野次馬たちが腐るほど写真を撮っているはずだ。
私がわざわざ記憶する必要はない。
だけれど、私は経験上知っている。
こういった騒動に乗っかり、強盗や引ったくりなどの二次被害が起こる可能性があることを。
私は双眼鏡のピントを絞り、現場の群衆を舐めるように追った。
……その時。
「あっ!」
赤いキャップを深く被り、マスクで顔を隠した男が、野次馬の1人の鞄から鮮やかな手つきで財布を抜き取った。
「逃さない……」
男の背丈、服装、逃走経路、全てを私の眼に焼き付ける。
証拠を固め、双眼鏡を顔から離そうとしたその瞬間、背後から突風が吹き抜けた。
「ホークス!?」
振り返ると、そこには彼がいた。
いつも涼しげなその姿は、所々黒く汚れ、微かに灰の匂いが漂っている。
自慢の赤い羽も、救助に使ったのか心なしかボリュームが減っているように見えた。
あの現場から、一直線に飛んできたのだ。
「……撮った!?」
開口一番、彼は鋭い声で尋ねた。
主語はなかったけれど、私には分かった。
スリの現場を捉えたかと聞いているのだ。
「中肉中背、赤いキャップに、黒のマスク。北へ逃げた」
余計な説明は省き、事実だけを突きつける。
それだけで、彼には充分だった。
「でかした!」
短く、弾むような声。
彼は一瞬だけニカッと笑うと、再び空へと羽ばたいた。
その速度は凄まじく、屋上のフェンスがガタガタと悲鳴を上げる。
「……本当に。忙しい男ね」
ゴシップを撮って金を稼ぐのは嫌いじゃない。
だけど、こうして良いことに役立てる写真を撮ることも、悪い気はしない。
「空が青いや……」
数分前と同じ空なのに、なぜこうも鮮やかに見えるのか。
私は鉄製のフェンスに背を預け、彼が消えていった空を、双眼鏡を使わずにしばらく見上げていた。
