啓悟の思惑通り、気を失うまで抱き潰された私は仕事を休んでしまった。
しかもそのせいで連絡を入れることもできず、結果無断欠勤扱い。

翌日出勤したら当たり前だけど上司や同僚から罵詈雑言の嵐。


「困るんだよね。真面目だけが取り柄だと思っていたのに」

「すみません…」

「こっちにしわ寄せが来たんだけど！」

「すみません……」


私が悪い……私が悪い……。

無断欠勤した罰だと言うことで危険な仕事は私に回され、怪我は増えるばかり。

私が悪い……これは仕方がないこと……。

しばらくはそう自分に言い聞かせて耐えた。

そんな私を見た啓悟は勿論心配をしてくれたけれど、無断欠勤のことがきっかけだと話すと、自分を責めてしまう可能性があるため、何でもない、と誤魔化すばかり。

そう、啓悟は悪くない……悪いのは要領が悪くて弱い私……。

徐々に私の精神はおかしくなった。
仕事に行こうとすると動悸が激しくなり、しばらく立てなくなる。

やがて自分に言い聞かせていた暗示も聞かなくなり、糸がぷつりと切れたように私は床にへたり込んだ。

もう……限界かもしれない。

私は退職届を書き殴っていた。


ーーーー


「うわ、びっくりした！部屋の電気が点いていないからいないのかと思った」


仕事から帰ってきた啓悟がリビングの電気を点けて、開幕そう言った。

私はと言うと朝出勤したけれど、昼間には家に帰っていた。
リビングの椅子に腰掛けて動けないでいたら、気付いたら夜になっていただけ。

啓悟が帰ってきたことにより、大分時間が経っていたことに気付かされた。


「……」

「今日は仕事終わるの早かったんだな」


着替えながら話しかけてくる啓悟の声を聞いて安堵したのか、涙が出てきてしまった。


「……っ……ひっく……けい、ご……」

「どうした？何かあった？どっか痛いのか？」

「仕事……辞めちゃった……ひっく……弱くてごめん…なさい…」


啓悟の隣に並んでも恥ずかしくない彼女になりたかったのに。


「んだ、そんなこと。むしろ辞めろっていつも言ってただろ」


逃げるように辞めたのに労わってくれる啓悟の言葉に、余計に涙が出てきてしまう。


「今までよく頑張ったな」

「……っ……」


抱きしめてくれる啓悟の肌が温かくて安心する。

そんな啓悟に抱きしめられながら、早く次の仕事を探さないと、と決心した。