食べたい、食べられたい
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家に帰ってから治君のことを考えないようにしていたけれど、ベッドに入り目を瞑るとどうしても脳裏に浮かんでしまう。
“俺、◯◯さんのこと好きやねん”
耳元に残る低くて甘い残響。
冗談でそんなことを言う人じゃないとは分かっているけれど、肝心の「付き合ってほしい」という言葉はなかった。
私たちは、一体どういう関係なんだろう……。
答えの出ない問いを抱えたまま、私は逃げるように眠りについた。
ーーーー
翌朝。
警戒しながら登校したけれど、治君はいつも通りだった。
「おはよう、●●ちゃん」
「おはよ……治君」
挨拶だけ済ませると、彼はヒラヒラと手を振って男友達の輪へと消えていった。
………あれ?
今、私のことを下の名前で呼んだ?
ずっと呼ばれたかったはずなのに、いざ現実になると嬉しさよりも戸惑いが大きかった。
……。
…………。
嵐の前の静けさだろうか。
午前中の授業中も、彼から特別なアクションはない。
だけど、どうしても同じ空間で小さなお弁当箱を開く勇気が出なくて、私は逃げるように教室を抜け出した。
「●●ちゃんどこに行くん?」
背後から降ってきた声に、肩が跳ねる。
「は、え!?……治君」
「驚きすぎやろ」
彼はそう言って、悪戯っぽく口角を上げた。
油断した。
まさか、移動するタイミングを見られていただなんて。
「で、どこ行くん?」
「……空き教室で、お昼食べようかと思って」
「ちょうどええやん。俺も一緒に行くわ」
彼の大きな手には、いつもより一回りも二回りも大きな保冷バッグが握られていた。
……って、これじゃあ、いつものサイズを把握しているみたいじゃない。
しているけども。
そもそも治君を避けたくて場所移動をしようとしているのに、本人が来たら意味がない。
「北村君はいいの?いつも一緒に食べてるじゃない」
せめてもの抵抗で、クラスメイトの名前を出してみる。
「北村?アイツはええよ。……それより早う行こうや。休み時間終わってまうで」
拒否権なんて、最初からなかった。
治君の大きな掌が私の背中に添えられ、グイグイと促される。
私は治君に連れられるまま、静かな空き教室へと足を踏み入れた。
“俺、◯◯さんのこと好きやねん”
耳元に残る低くて甘い残響。
冗談でそんなことを言う人じゃないとは分かっているけれど、肝心の「付き合ってほしい」という言葉はなかった。
私たちは、一体どういう関係なんだろう……。
答えの出ない問いを抱えたまま、私は逃げるように眠りについた。
ーーーー
翌朝。
警戒しながら登校したけれど、治君はいつも通りだった。
「おはよう、●●ちゃん」
「おはよ……治君」
挨拶だけ済ませると、彼はヒラヒラと手を振って男友達の輪へと消えていった。
………あれ?
今、私のことを下の名前で呼んだ?
ずっと呼ばれたかったはずなのに、いざ現実になると嬉しさよりも戸惑いが大きかった。
……。
…………。
嵐の前の静けさだろうか。
午前中の授業中も、彼から特別なアクションはない。
だけど、どうしても同じ空間で小さなお弁当箱を開く勇気が出なくて、私は逃げるように教室を抜け出した。
「●●ちゃんどこに行くん?」
背後から降ってきた声に、肩が跳ねる。
「は、え!?……治君」
「驚きすぎやろ」
彼はそう言って、悪戯っぽく口角を上げた。
油断した。
まさか、移動するタイミングを見られていただなんて。
「で、どこ行くん?」
「……空き教室で、お昼食べようかと思って」
「ちょうどええやん。俺も一緒に行くわ」
彼の大きな手には、いつもより一回りも二回りも大きな保冷バッグが握られていた。
……って、これじゃあ、いつものサイズを把握しているみたいじゃない。
しているけども。
そもそも治君を避けたくて場所移動をしようとしているのに、本人が来たら意味がない。
「北村君はいいの?いつも一緒に食べてるじゃない」
せめてもの抵抗で、クラスメイトの名前を出してみる。
「北村?アイツはええよ。……それより早う行こうや。休み時間終わってまうで」
拒否権なんて、最初からなかった。
治君の大きな掌が私の背中に添えられ、グイグイと促される。
私は治君に連れられるまま、静かな空き教室へと足を踏み入れた。
