見た目じゃない
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ーー宮治sideーー
●●は食べ終わってからも、相談事以外に昔話に花を咲かせた。
洗い物の片手間に返事をしていると、ふと静かになった。
カウンターを覗いてみると、●●は突っ伏して寝息を立てていた。
「……おい、こんなとこで寝たら風邪引くで」
声をかけても、返ってくるのは規則正しい寝息だけ。
「しゃあないな……」
濡れた手の水を切ってから、奥の部屋の仮眠室から持ってきたブランケットを肩にかけてやる。
起こすのも酷やし、そのまま寝かせておくことにして、俺は手早く店仕舞いを始めた。
片付けを終え、改めて●●の寝顔を覗き込む。
スヤスヤと気持ち良さそうに……。
本当 に、コイツはあの頃から何も変わってへん。
俺がどんな気持ちで毎朝お前の家に行っとるんか、これっぽっちも気付かんと。
こんな無防備に寝おって。
「……キス、したろか」
冗談半分、本気半分。
ゆっくりと顔を近付けていく。
まつ毛の長さが分かるくらいの距離。
あと数センチ。
そう思った時、
「……おにぎりと仲直りしたい……スー……スー」
「……ぷっ」
思わず吹き出した。
……コイツ、どんな夢見とんねん。
おにぎりと喧嘩するって、何をしたんや。
本当 面白 いヤツ。
一気にキスするような空気やなくなって、俺は身体を離した。
同時に、ふと思いつく。
コイツ、いつも前日の残りを朝と昼に食べとる言うとったな。
今日はここで寝落ちしたんやから、明日の用意、何もないんとちゃうか。
「特別サービスや……」
俺は再び調理場に立ち、とびきり旨いおにぎりを握り始めた。
……。
…………。
トントン、と小気味いい包丁の音が店内に響く中。
「はっ……ここどこ!?」
背後でガバッと勢いよく起き上がる気配がした。
「あ、起きたん?」
手を止めずに声をかけると、●●は周囲を見渡して、自分の状況を理解したらしい。
「え、どういうこと?私、寝てた?」
「見たまんまや。飯食うて、喋り倒して、気持ち良さそうに寝落ち」
「それはご迷惑をお掛けしました……」
顔を真っ赤にして、まだ寝ぼけとるんか声がボケボケしとる。
その締まりのない顔も、俺にとっては愛おしい。
……なんて、一生言わんけどな。
「起こす手間が省けてよかったで。ほら、これ持ってけ」
俺は、丁寧に包んだおにぎりを差し出した。
「常温でも大丈夫な具材にしといたから。明日、それ食べや」
「……ありがとう」
驚いたように目を見開いて受け取る●●。
「さ、俺はまだ仕込み残っとるから。起きたんなら帰った帰った」
本音を言えば、夜道が危ないから家まで送っていきたい。
けれど、今の俺にそんなことする資格はあれへん。
「あ、うん。ご馳走さまでした。……おやすみ、治」
「気 付けて帰りや」
閉まる扉の音を聞きながら、それが精一杯やった。
渡したおにぎりが、アイツの胃袋と一緒に、少しでも俺の方に心を動かしてくれたらええのに。
そう願いながら、俺はまた、独りになった厨房で包丁を動かし始めた。
●●は食べ終わってからも、相談事以外に昔話に花を咲かせた。
洗い物の片手間に返事をしていると、ふと静かになった。
カウンターを覗いてみると、●●は突っ伏して寝息を立てていた。
「……おい、こんなとこで寝たら風邪引くで」
声をかけても、返ってくるのは規則正しい寝息だけ。
「しゃあないな……」
濡れた手の水を切ってから、奥の部屋の仮眠室から持ってきたブランケットを肩にかけてやる。
起こすのも酷やし、そのまま寝かせておくことにして、俺は手早く店仕舞いを始めた。
片付けを終え、改めて●●の寝顔を覗き込む。
スヤスヤと気持ち良さそうに……。
俺がどんな気持ちで毎朝お前の家に行っとるんか、これっぽっちも気付かんと。
こんな無防備に寝おって。
「……キス、したろか」
冗談半分、本気半分。
ゆっくりと顔を近付けていく。
まつ毛の長さが分かるくらいの距離。
あと数センチ。
そう思った時、
「……おにぎりと仲直りしたい……スー……スー」
「……ぷっ」
思わず吹き出した。
……コイツ、どんな夢見とんねん。
おにぎりと喧嘩するって、何をしたんや。
一気にキスするような空気やなくなって、俺は身体を離した。
同時に、ふと思いつく。
コイツ、いつも前日の残りを朝と昼に食べとる言うとったな。
今日はここで寝落ちしたんやから、明日の用意、何もないんとちゃうか。
「特別サービスや……」
俺は再び調理場に立ち、とびきり旨いおにぎりを握り始めた。
……。
…………。
トントン、と小気味いい包丁の音が店内に響く中。
「はっ……ここどこ!?」
背後でガバッと勢いよく起き上がる気配がした。
「あ、起きたん?」
手を止めずに声をかけると、●●は周囲を見渡して、自分の状況を理解したらしい。
「え、どういうこと?私、寝てた?」
「見たまんまや。飯食うて、喋り倒して、気持ち良さそうに寝落ち」
「それはご迷惑をお掛けしました……」
顔を真っ赤にして、まだ寝ぼけとるんか声がボケボケしとる。
その締まりのない顔も、俺にとっては愛おしい。
……なんて、一生言わんけどな。
「起こす手間が省けてよかったで。ほら、これ持ってけ」
俺は、丁寧に包んだおにぎりを差し出した。
「常温でも大丈夫な具材にしといたから。明日、それ食べや」
「……ありがとう」
驚いたように目を見開いて受け取る●●。
「さ、俺はまだ仕込み残っとるから。起きたんなら帰った帰った」
本音を言えば、夜道が危ないから家まで送っていきたい。
けれど、今の俺にそんなことする資格はあれへん。
「あ、うん。ご馳走さまでした。……おやすみ、治」
「
閉まる扉の音を聞きながら、それが精一杯やった。
渡したおにぎりが、アイツの胃袋と一緒に、少しでも俺の方に心を動かしてくれたらええのに。
そう願いながら、俺はまた、独りになった厨房で包丁を動かし始めた。
