見た目じゃない
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仕事帰りの夜風が心地いい。
私はおにぎり宮の暖簾をくぐり、引き戸を開けた。
「治~、来たよ~」
「おー、●●か。いらっしゃい。適当なとこ座って」
厨房の奥から顔を出した治は、「宮」と書かれたキャップを被り、おにぎりのマークがプリントされた黒いTシャツを身に纏っていた。
今朝のだらしない雰囲気とは違います、職人の顔をしていた。
カウンター席に座り、お品書きに目をやれば、以前はなかった創作メニューがいくつか並んでいる。
「何にする?いつもご馳走なっとるで、なんでも好きな物 言いや」
「ん~悩む。そうだな~、オススメのやつ2個ほど見繕って。あとお味噌汁」
「任しとき」
治の手が迷いなく動く。
お米の形を三角に整え、丁寧に海苔を巻いていく。
その所作は、見惚れるほどに無駄がない。
差し出されたのは、ネギトロとおかかチーズ。
なんだか、双子の侑君が好きそうな具材ばっかりだ。
まあ、美味しいからいいんだけど。
私はおにぎりを一口頬張り、熱い味噌汁でご飯を流し込んでから、本題を切り出した。
「──それでね、今まで意識していない人から好意みたいなものを感じたら、どうすればいい?」
治は手を止めずに鼻で笑った。
「んー。ひとまず様子見やろ、そんなん。職場仲間として仲良うなりたいんか、それとも1人の女としてなんか、まだ分からんしな」
「そっか……。それもそうか」
治の的確なアドバイスに、浮ついていた心がすっと落ち着いていく。
確かに、自意識過剰で空回りするのは一番格好悪い。
納得して、私はまたおにぎりをもぐもぐと口に運んだ。
噛み締めるほどに、米の甘みが広がる。
「あ、これ……美味しい」
「せやろ!どこぞの誰かと違 ぉて見た目も気 遣 ぉとるからな」
今朝の私の茶色い朝食を揶揄するような言い草に、私は即座に言い返した。
「治のは金銭が発生している商売だから当たり前でしょ。いつもタダ飯食べに来るクセに」
「●●だって、今日はタダ飯やろ」
「またお世話になるわ」
「少しは遠慮しぃ」
「それはお互い様。ご馳走様でした」
最後の一口を飲み込み、お茶を啜る。
結局、答えは出なかったけれど、治の握るおにぎりのおかげで、明日も普通に木村君と接することができそうな気がした。
「相談したいことできたら、また来るね」
「店が潰れん程度に来 いや。あ、サービスは今日だけやからな」
口ではそう言いながらも、治は少しだけ満足げに目を細めた。
私はおにぎり宮の暖簾をくぐり、引き戸を開けた。
「治~、来たよ~」
「おー、●●か。いらっしゃい。適当なとこ座って」
厨房の奥から顔を出した治は、「宮」と書かれたキャップを被り、おにぎりのマークがプリントされた黒いTシャツを身に纏っていた。
今朝のだらしない雰囲気とは違います、職人の顔をしていた。
カウンター席に座り、お品書きに目をやれば、以前はなかった創作メニューがいくつか並んでいる。
「何にする?いつもご馳走なっとるで、なんでも好きな
「ん~悩む。そうだな~、オススメのやつ2個ほど見繕って。あとお味噌汁」
「任しとき」
治の手が迷いなく動く。
お米の形を三角に整え、丁寧に海苔を巻いていく。
その所作は、見惚れるほどに無駄がない。
差し出されたのは、ネギトロとおかかチーズ。
なんだか、双子の侑君が好きそうな具材ばっかりだ。
まあ、美味しいからいいんだけど。
私はおにぎりを一口頬張り、熱い味噌汁でご飯を流し込んでから、本題を切り出した。
「──それでね、今まで意識していない人から好意みたいなものを感じたら、どうすればいい?」
治は手を止めずに鼻で笑った。
「んー。ひとまず様子見やろ、そんなん。職場仲間として仲良うなりたいんか、それとも1人の女としてなんか、まだ分からんしな」
「そっか……。それもそうか」
治の的確なアドバイスに、浮ついていた心がすっと落ち着いていく。
確かに、自意識過剰で空回りするのは一番格好悪い。
納得して、私はまたおにぎりをもぐもぐと口に運んだ。
噛み締めるほどに、米の甘みが広がる。
「あ、これ……美味しい」
「せやろ!どこぞの誰かと
今朝の私の茶色い朝食を揶揄するような言い草に、私は即座に言い返した。
「治のは金銭が発生している商売だから当たり前でしょ。いつもタダ飯食べに来るクセに」
「●●だって、今日はタダ飯やろ」
「またお世話になるわ」
「少しは遠慮しぃ」
「それはお互い様。ご馳走様でした」
最後の一口を飲み込み、お茶を啜る。
結局、答えは出なかったけれど、治の握るおにぎりのおかげで、明日も普通に木村君と接することができそうな気がした。
「相談したいことできたら、また来るね」
「店が潰れん程度に
口ではそう言いながらも、治は少しだけ満足げに目を細めた。
