敵わない人
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翌日の休み時間。
「なあ、お前。休部届出したらしいじゃんか。もう潔く退部しろよ」
廊下を曲がろうとしたら、西尾君が京谷君に絡んでいる声が聞こえてきた。
何食わぬ顔で通ればいいのに、私は咄嗟に隠れてしまった。
「話ってそれだけっすか?」
「あ゛あ?」
うわー、火に油を注ぐような言い方をしちゃって。
さすがに止めた方がいいかな。
「経験者だかなんだか知んねぇけど、先輩に楯突く気か?!」
「それなら、もっと尊敬される先輩になってくださいよ」
「てめぇ……」
売り言葉に買い言葉。
これは非常にまずい。
「ねえ、2人とも!!」
私は言い争いを止めるために京谷君と西尾君の間に入った。
しかしタイミングが悪くて、西尾君は京谷君に殴りかかろうと腕を振り下ろしていたところに入ってしまった。
「っあ!」
西尾君も急に私が出てきたから振り下ろす腕を止めることができない。
殴られる!
次の瞬間、私の頭に鈍い痛みが走った。
「〜〜〜!!」
痛すぎて声が出ない。
初めて人に殴られた。
こんなに痛いものなんだ。
私は思わず頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「◯◯!すまん、大丈夫か!」
先程まで額に血管を浮かばせていた西尾君もあたふたしている。
だけど彼よりも、
「◯◯先輩!」
京谷君の方が血相をかいていた。
「◯◯先輩になんてことを……」
今度は京谷君が西尾君に殴りかかろうとした。
そうはさせまいと、私は急いで京谷君に抱きつく形で制した。
「京谷君!私は大丈夫だから!」
「……っ、だけど!」
「いいから!ほら、西尾君も!」
「ちっ!」
私を殴った手前、強く出れないのか西尾君は引き下がってくれた。
「今日は◯◯に免じて許してやるから」
「ありがとう」
そう言うと西尾君は去っていった。
「◯◯先輩、なんで止めたんだよ」
「私、初めて人から殴られたんだけど、凄く痛かった。だからきっと殴る方も同じくらい痛いんじゃないかって」
「……」
「京谷君の手は人を殴るためじゃなくて、バレーをするためにあるんでしょ?」
私は包み込むように京谷君の手を握った。
温かくて、ゴツゴツしていて、大きな手。
突き指をしたのか、ところどころテーピングが巻いてある。
昨日は巻いていなかったテーピング。
きっと部活は行っていなくても、他の場所でバレーをしていることが分かる。
「バレーを続けたいから退部届じゃなくて休部届を出したんだよね?」
「聞いてたのかよ」
「へへへ」
「やっぱりアンタには敵わないな」
「先輩ですから」
前みたいに、えっへんと冗談っぽく胸を張った。
それで、きっと京谷君も頼りないけどなって返してくれる。
そう思っていたのに、
「ああ、頼りになる。そう言うところが好きだ」
「え、あ……え?!」
思いがけない返しの上、京谷君が私のことを好きだと言ってきた。
動揺が隠せない。
「ははは、変な顔」
そんな気も知らずに楽しそうに笑う京谷君。
悔しい。
「わ、私だって京谷君のことが好きだし!」
「え、マジかよ……」
手で口元を隠して顔を逸らした京谷君。
これなら京谷君だって私みたいに動揺するはず。
そんな顔を拝んでやろうと逸らした方へと回り込むと、
「え、顔真っ赤なんだけど」
「うっせぇ!」
予想外の反応すぎて私まで赤が移りそう。
「●●だって顔赤いだろ!」
「なっ!」
移りそうなのではなく、どうやら移っていたらしい。
「てか名前、呼び捨て!」
このあと、どちらが先に顔が赤くなっただの下らない言い合いがあったけれど、私たちは付き合うことになった。
高校3年生の夏休みに入る前の出来事。
「なあ、お前。休部届出したらしいじゃんか。もう潔く退部しろよ」
廊下を曲がろうとしたら、西尾君が京谷君に絡んでいる声が聞こえてきた。
何食わぬ顔で通ればいいのに、私は咄嗟に隠れてしまった。
「話ってそれだけっすか?」
「あ゛あ?」
うわー、火に油を注ぐような言い方をしちゃって。
さすがに止めた方がいいかな。
「経験者だかなんだか知んねぇけど、先輩に楯突く気か?!」
「それなら、もっと尊敬される先輩になってくださいよ」
「てめぇ……」
売り言葉に買い言葉。
これは非常にまずい。
「ねえ、2人とも!!」
私は言い争いを止めるために京谷君と西尾君の間に入った。
しかしタイミングが悪くて、西尾君は京谷君に殴りかかろうと腕を振り下ろしていたところに入ってしまった。
「っあ!」
西尾君も急に私が出てきたから振り下ろす腕を止めることができない。
殴られる!
次の瞬間、私の頭に鈍い痛みが走った。
「〜〜〜!!」
痛すぎて声が出ない。
初めて人に殴られた。
こんなに痛いものなんだ。
私は思わず頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「◯◯!すまん、大丈夫か!」
先程まで額に血管を浮かばせていた西尾君もあたふたしている。
だけど彼よりも、
「◯◯先輩!」
京谷君の方が血相をかいていた。
「◯◯先輩になんてことを……」
今度は京谷君が西尾君に殴りかかろうとした。
そうはさせまいと、私は急いで京谷君に抱きつく形で制した。
「京谷君!私は大丈夫だから!」
「……っ、だけど!」
「いいから!ほら、西尾君も!」
「ちっ!」
私を殴った手前、強く出れないのか西尾君は引き下がってくれた。
「今日は◯◯に免じて許してやるから」
「ありがとう」
そう言うと西尾君は去っていった。
「◯◯先輩、なんで止めたんだよ」
「私、初めて人から殴られたんだけど、凄く痛かった。だからきっと殴る方も同じくらい痛いんじゃないかって」
「……」
「京谷君の手は人を殴るためじゃなくて、バレーをするためにあるんでしょ?」
私は包み込むように京谷君の手を握った。
温かくて、ゴツゴツしていて、大きな手。
突き指をしたのか、ところどころテーピングが巻いてある。
昨日は巻いていなかったテーピング。
きっと部活は行っていなくても、他の場所でバレーをしていることが分かる。
「バレーを続けたいから退部届じゃなくて休部届を出したんだよね?」
「聞いてたのかよ」
「へへへ」
「やっぱりアンタには敵わないな」
「先輩ですから」
前みたいに、えっへんと冗談っぽく胸を張った。
それで、きっと京谷君も頼りないけどなって返してくれる。
そう思っていたのに、
「ああ、頼りになる。そう言うところが好きだ」
「え、あ……え?!」
思いがけない返しの上、京谷君が私のことを好きだと言ってきた。
動揺が隠せない。
「ははは、変な顔」
そんな気も知らずに楽しそうに笑う京谷君。
悔しい。
「わ、私だって京谷君のことが好きだし!」
「え、マジかよ……」
手で口元を隠して顔を逸らした京谷君。
これなら京谷君だって私みたいに動揺するはず。
そんな顔を拝んでやろうと逸らした方へと回り込むと、
「え、顔真っ赤なんだけど」
「うっせぇ!」
予想外の反応すぎて私まで赤が移りそう。
「●●だって顔赤いだろ!」
「なっ!」
移りそうなのではなく、どうやら移っていたらしい。
「てか名前、呼び捨て!」
このあと、どちらが先に顔が赤くなっただの下らない言い合いがあったけれど、私たちは付き合うことになった。
高校3年生の夏休みに入る前の出来事。