敵わない人
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あれから数週間。
教室で授業の準備をしていると、西尾君がクラスメイトと部活の話をしているのが聞こえてきた。
「生意気な後輩がここ数週間来なくてよ。このままやめてくんねぇかなー」
生意気な後輩……。
もしかして京谷君のこと?
そう言えば部活に行っていないと言っていたけれど、てっきり委員会の当番の日だけだと思っていたのに、あれから行っていなかったの?
やっぱり西尾君と何かあったのかな?
でも、部外者の私が出しゃばるのも違う気がする。
だって、私と京谷君はただの委員会の同じ班の先輩と後輩。
それ以上でも以下でもない。
その関係になんだかもどかしさを覚えた。
ーーーー
さらに日が経ち、当番の日が回ってきた。
京谷君は……うん、ちゃんと来ている。
挨拶の声は適当だけど、そこを咎めるつもりはない。
その後の自転車整理も黙々とこなしている。
うーん、聞いていいものなのか。
頭を悩ませていると、
「なんだよ」
「え?」
不機嫌そうな京谷君が話しかけてきた。
「さっきからずっと見てきて」
「あ、いや……」
私ってそんなに見ていた?
完全に無自覚だ。
「京谷君、最近部活頑張ってるのかなーって……あはは」
あからさまに変な言い方をしてしまった。
「はぁ……大方、西尾あたりが俺のことをなんか言ってたんだろ」
呆れたように言う京谷君。
図星過ぎて困る。
「……」
「部活、あれから行ってない」
「そうなんだ」
予想が当たってしまった。
「……何も言わないのかよ」
「え?」
「だって◯◯先輩は真面目そうだから、俺みたいなの嫌いだろ」
「怒ってほしいの?」
説教をするつもりで聞いたわけではなかった。
それに、京谷君は私を買いかぶり過ぎだよ。
私だって課題を忘れることはあるし、朝起きるのが弱いから委員会の仕事をサボりたい時もある。
真面目なんかじゃない。
だけど、起きるのが苦手なりに当番を頑張れるのには理由がある。
「確かに部活をサボるのは良くないけど、そのお陰で一緒に委員会の仕事ができているワケだし、今だってこうしてお話ができる。だから、私はむしろ嬉しい。……なんて、思う私は最低かな?」
そう、京谷君に会えるから。
「やっぱりアンタには敵わないな」
「先輩ですから」
えっへんと冗談っぽく胸を張った。
「頼りないけどな」
「なんだってー!」
右手を振り上げて殴るふりをする。
もちろん本当に殴るわけではない。
「はははっ」
楽しそうに笑う京谷君。
初めて見た。こんな風に笑うんだ。
このときから私の中で京谷君はただの後輩ではなくなった。
教室で授業の準備をしていると、西尾君がクラスメイトと部活の話をしているのが聞こえてきた。
「生意気な後輩がここ数週間来なくてよ。このままやめてくんねぇかなー」
生意気な後輩……。
もしかして京谷君のこと?
そう言えば部活に行っていないと言っていたけれど、てっきり委員会の当番の日だけだと思っていたのに、あれから行っていなかったの?
やっぱり西尾君と何かあったのかな?
でも、部外者の私が出しゃばるのも違う気がする。
だって、私と京谷君はただの委員会の同じ班の先輩と後輩。
それ以上でも以下でもない。
その関係になんだかもどかしさを覚えた。
ーーーー
さらに日が経ち、当番の日が回ってきた。
京谷君は……うん、ちゃんと来ている。
挨拶の声は適当だけど、そこを咎めるつもりはない。
その後の自転車整理も黙々とこなしている。
うーん、聞いていいものなのか。
頭を悩ませていると、
「なんだよ」
「え?」
不機嫌そうな京谷君が話しかけてきた。
「さっきからずっと見てきて」
「あ、いや……」
私ってそんなに見ていた?
完全に無自覚だ。
「京谷君、最近部活頑張ってるのかなーって……あはは」
あからさまに変な言い方をしてしまった。
「はぁ……大方、西尾あたりが俺のことをなんか言ってたんだろ」
呆れたように言う京谷君。
図星過ぎて困る。
「……」
「部活、あれから行ってない」
「そうなんだ」
予想が当たってしまった。
「……何も言わないのかよ」
「え?」
「だって◯◯先輩は真面目そうだから、俺みたいなの嫌いだろ」
「怒ってほしいの?」
説教をするつもりで聞いたわけではなかった。
それに、京谷君は私を買いかぶり過ぎだよ。
私だって課題を忘れることはあるし、朝起きるのが弱いから委員会の仕事をサボりたい時もある。
真面目なんかじゃない。
だけど、起きるのが苦手なりに当番を頑張れるのには理由がある。
「確かに部活をサボるのは良くないけど、そのお陰で一緒に委員会の仕事ができているワケだし、今だってこうしてお話ができる。だから、私はむしろ嬉しい。……なんて、思う私は最低かな?」
そう、京谷君に会えるから。
「やっぱりアンタには敵わないな」
「先輩ですから」
えっへんと冗談っぽく胸を張った。
「頼りないけどな」
「なんだってー!」
右手を振り上げて殴るふりをする。
もちろん本当に殴るわけではない。
「はははっ」
楽しそうに笑う京谷君。
初めて見た。こんな風に笑うんだ。
このときから私の中で京谷君はただの後輩ではなくなった。