真面目ちゃんと不良君
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あの日、私が授業をサボったのは、後にも先にもあの1回きり。
幸運なことに、私は体調不良で保健室で寝ていたことになっていた。
たまたま、その時間は保健室の先生が不在だったため、実際に利用していないことがバレなかったのだ。
これまでの真面目な行いが、思わぬ形で私を救ってくれたのかもしれない。
一方、京谷君はといえば、放課後の職員室でこってり絞られたらしい。
それでも彼は、私の名前を一切出さなかった。
あんなに怖そうに見えるのに、口が固くて意外と義理堅い。
そのことを知ったのは、翌日のお昼休みのこと。
吸い寄せられるようにあの中庭へ向かうと、案の定、彼は昨日と同じ場所で寝そべっていた。
「……京谷君。先生に内緒にしておいてくれて、ありがとう」
私は彼の隣に腰を下ろし、そっとお礼を伝えた。
「別に。言ったところで、俺が怒られるのには変わりねぇし」
目も開けずに、彼は鼻先で小さく笑う。
相変わらず素っ気ないけれど、その言葉の裏にある不器用な優しさが、今の私には少しだけ分かる気がした。
仰向けに寝転ぶ京谷君の顔を、横から覗き込む。
閉じられた瞼。
いつも周囲を威嚇している鋭い目つきが隠れると、驚くほど整った顔立ちをしていることに気付く。
ふと、彼の耳元が目に入った。
「……ピアス、開けてないんだね」
「ん?ああ……」
意外だった。
着けていても不思議ではないのに、彼の耳たぶは穴すら開いていなかった。
「なんで?似合いそうなのに」
「……ピアス開けると、バランス感覚が狂うし、引っ掛けて怪我するかもしれねぇだろ」
「バランス感覚?怪我?」
「バレー」
短く返された言葉に、私は瞬きを繰り返した。
バレー部。
確か、うちの学校のバレー部は県内でも指折りの強豪のはずだ。
そこに京谷君も所属していたんだ。
怪我を気にするのは分かるけど、バランス感覚まで……。
案外、京谷君って繊細なんだ。
そう思うと、同時に1つの疑問が頭をよぎる。
確か彼は、去年の1年生の頃から部活に行っていなかったはずだ。
帰宅部だった私が授業後に校門へ向かうとき、同じように真っ直ぐ帰る彼の後ろ姿を何度も見かけていた。
強豪校のバレー部が、そんなに早く帰れるはずがない。
どうして……?
喉元まで出かかった言葉を、慌てて飲み込んだ。
今の彼には、これ以上踏み込んではいけない気がしたから。
だけど、いつか彼がバレーをしているところを見てみたい。
もしそんなことを言ったら、彼は無視するだろうか。
それとも、部活へ行ってくれるのだろうか。
その言葉を口にできる日が来るのを想像しながら、私は青空の下で隣に座り続けた。
私はまだ、京谷君のことを、本当の意味では何も知らない。
幸運なことに、私は体調不良で保健室で寝ていたことになっていた。
たまたま、その時間は保健室の先生が不在だったため、実際に利用していないことがバレなかったのだ。
これまでの真面目な行いが、思わぬ形で私を救ってくれたのかもしれない。
一方、京谷君はといえば、放課後の職員室でこってり絞られたらしい。
それでも彼は、私の名前を一切出さなかった。
あんなに怖そうに見えるのに、口が固くて意外と義理堅い。
そのことを知ったのは、翌日のお昼休みのこと。
吸い寄せられるようにあの中庭へ向かうと、案の定、彼は昨日と同じ場所で寝そべっていた。
「……京谷君。先生に内緒にしておいてくれて、ありがとう」
私は彼の隣に腰を下ろし、そっとお礼を伝えた。
「別に。言ったところで、俺が怒られるのには変わりねぇし」
目も開けずに、彼は鼻先で小さく笑う。
相変わらず素っ気ないけれど、その言葉の裏にある不器用な優しさが、今の私には少しだけ分かる気がした。
仰向けに寝転ぶ京谷君の顔を、横から覗き込む。
閉じられた瞼。
いつも周囲を威嚇している鋭い目つきが隠れると、驚くほど整った顔立ちをしていることに気付く。
ふと、彼の耳元が目に入った。
「……ピアス、開けてないんだね」
「ん?ああ……」
意外だった。
着けていても不思議ではないのに、彼の耳たぶは穴すら開いていなかった。
「なんで?似合いそうなのに」
「……ピアス開けると、バランス感覚が狂うし、引っ掛けて怪我するかもしれねぇだろ」
「バランス感覚?怪我?」
「バレー」
短く返された言葉に、私は瞬きを繰り返した。
バレー部。
確か、うちの学校のバレー部は県内でも指折りの強豪のはずだ。
そこに京谷君も所属していたんだ。
怪我を気にするのは分かるけど、バランス感覚まで……。
案外、京谷君って繊細なんだ。
そう思うと、同時に1つの疑問が頭をよぎる。
確か彼は、去年の1年生の頃から部活に行っていなかったはずだ。
帰宅部だった私が授業後に校門へ向かうとき、同じように真っ直ぐ帰る彼の後ろ姿を何度も見かけていた。
強豪校のバレー部が、そんなに早く帰れるはずがない。
どうして……?
喉元まで出かかった言葉を、慌てて飲み込んだ。
今の彼には、これ以上踏み込んではいけない気がしたから。
だけど、いつか彼がバレーをしているところを見てみたい。
もしそんなことを言ったら、彼は無視するだろうか。
それとも、部活へ行ってくれるのだろうか。
その言葉を口にできる日が来るのを想像しながら、私は青空の下で隣に座り続けた。
私はまだ、京谷君のことを、本当の意味では何も知らない。
