真面目ちゃんと不良君
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~真面目ちゃんと不良君~
やってしまった……。
授業の開始を知らせるチャイムの音は、とうの昔に鳴り終わった。
それなのに、私は教室の椅子ではなく、中庭の芝生の上で膝を抱えて縮こまっている。
もちろん、他の教室からは死角になっており、誰の目にも触れない場所。
「……何やってるんだろう、本当に」
平々凡々である私の唯一のアイデンティティは、真面目さだった。
提出物は期限厳守、遅刻欠席もなし。
そんな私が、人生で初めて授業をサボっている。
じわじわと罪悪感が胸の奥に押し寄せてくる。
その重苦しさを出すように、私は深くため息を吐いた。
「はぁ~……」
見上げた空は、私の沈んだ気持ちとは正反対の、雲1つない快晴だった。
しばらくぼーっとその青い空を眺めていると、唐突に視界が遮られた。
「おい」
「ひっ!」
すぐ横から覗き込んできた誰かに、心臓が跳ね上がる。
叫びそうになる口を咄嗟に両手で押さえ、必死に呼吸を整えた。
恐る恐る焦点を合わせると、そこには鋭い目つきをした男子生徒が立っていた。
隈取のような目元に、金髪坊主を刈り上げた2本線が特徴的な髪型をしている。
威圧感を放つ彼は、去年同じクラスだった京谷賢太郎君だ。
「授業、始まってんだろ。こんなところで何やってんだよ」
低く、ぶっきらぼうな声。
それを言うなら、あなただってサボりじゃない。
……なんて反論できるはずもなく、私は怯えながらも正直に白状した。
「クラスに馴染めなくて……逃げてきちゃった……」
「ふーん」
聞いておいて、彼は興味なさげに鼻を鳴らした。
もっと小言を言われて笑われるかと思ったけれど、彼は何も言わずに私の隣へドカッと寝転がった。
「……ここで寝るの?京谷君こそ授業は?」
「面倒だからサボってる。それ以外の理由があるかよ」
京谷君は腕を頭の後ろで組み、不機嫌そうに目を閉じた。
そういえば去年も、彼はよく授業中に姿を消していたっけ。
あの時も、こうしてここで寝に来ていたのだろうか。
沈黙が流れる。
でも、不思議と怖さは消えていた。
すると、彼が閉じていた片目を薄っすらと開けて、こちらを見た。
「……◯◯」
名前を呼ばれて、心臓が小さく跳ねる。
話したこともほとんどないのに、彼は私の名前を覚えていた。
「せっかくサボったなら、横になれば?」
そう言って、彼は自分の隣のスペースをポンポンと叩いた。
「あ……うん。お邪魔します……」
促されるまま、私は体育座りを解いて、芝生に背中を預けた。
芝生の青い匂い、頬を撫でる涼しい風。
それらがとても心地よかった。
数分前まで、あんなに重かった罪悪感が、嘘のように薄れていく。
きっと、隣から聞こえる京谷君の規則正しい呼吸のせいかもしれない。
そんな気恥ずかしいことを考えて、私はこっそり隣を盗み見た。
鋭かった彼の表情は、驚くほど穏やかな寝顔に変わっていた。
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