敵わない人
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〜敵わない人〜
外で蝉が煩いほど鳴いている中、冷房が効いている涼しい部屋で、私は彼氏の賢太郎とまったり過ごしている。
ただ、一緒の空間にいるからと言って同じことをしているワケでもなく、私はベッドに横になってスマホを弄り、賢太郎はそのベッドにもたれ掛かってゲームをしていた。
「ねえ、賢太郎」
「あ?」
各々スマホとゲーム機からは目を離さない。
「高校はもうすぐ夏休み終わるじゃん?課題は終わらせたの?」
8月も終わりがけ。
大学生の私は9月半ばまで休みだけど、賢太郎はそういうワケにもいかず、なんとなく聞いてみた。
「知らねぇ」
「知らないって……やらないと補習で私とのデート時間も減るぞー」
「けっ……。デートって言っても暑い暑いっ
「うっ……」
それは否めない。
だけど、そんな言い方をしなくてもいいじゃん。
唐突に出掛けたくなるかもしれないし。
「なんか、そんなに暑いって言われると余計に暑くなってくる」
私はベッドから起き上がり、アイスを取りにキッチンへ向かった。
一人暮らし用の決して大きくないキッチンに付いている小さな冷凍庫。
パカッと開けると白い冷気が出てきた。
「……」
中は冷凍ご飯と冷凍パスタ、製氷器のみ。
甘味になりそうなものは何もなかった。
昨日食べたアイスが最後だったか。
私はゲームから目を離さない賢太郎をチラッと見た。
「ねえ、賢太郎」
「今度はなんだよ」
「アイス食べたくない?」
「食べたくない」
「じゃあ、ハミチキは?」
「……」
この沈黙は悩んでいるな。
もう一押し。
「奢ってあげるから私のアイスも一緒に買ってきて」
「は?こんなクソ暑い中か」
「お願い!お願い!」
私は両手を合わせて賢太郎に必死に懇願した。
「ちっ、分かったよ」
「やったー!」
眉間にシワを寄せて、不機嫌そうにしているけど、なんだかんだ言って賢太郎は優しいんだよね。
私は財布から千円札を1枚取り出し、賢太郎に渡した。
「チョコ系でよろしく。あ、お釣りは返してね」
「へいへい」
お金を受け取ると、気だるげに外へ出た賢太郎。
その姿を見届けると、再度ベッドへと倒れ込んだ。
アイス、何を買ってきてくれるのかな。
「ふぁ〜」
大きなあくびが出る。
なんだか、ウトウトしてきた……。
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