~第一章〜 振り回すのはどっち
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コート上の徹は、まるで別人のように格好良かった。
激しいラリーの末、ホイッスルが鳴り響き、青葉城西の勝利が決まった。
準決勝進出だ。
接戦を制した青葉城西は対戦校と観客に向かって深々とお辞儀をした後に、控え席へと戻ってきた。
すると、待ってましたとばかりに、ファンの女の子たちがキャーキャーと黄色い声を上げながら、徹たちを囲っていく。
「及川さん!お疲れ様でした!格好良かったです」
「殺人サーブがキレキレでしたね!」
「素敵すぎて痺れちゃいました」
キラキラした笑顔を徹に向ける彼女たちを見て、私は一瞬たじろいだ。
徹に近付けない。
声をかけたかったけれど、やっぱり止めようかな……。
いや、ファンの子たちに圧倒されるな。
徹を信じるって決めたんでしょ。
誰かに「何あのおばさん」とヒソヒソ声で言われても気にせずに、私は女の子たちを掻き分けるようにして、少し乱暴に徹の目の前を陣取った。
「徹!」
名前を呼ぶと、徹は驚いたように目を丸くした後、すぐに笑顔を浮かべた。
「●●ちゃん……!ちょっと皆ごめんね~」
私の肩を抱いた徹は、周りの子たちに申し訳なさそうに謝り、そのまま人の少ない場所へと移動した。
……。
…………。
「ここならいいかな~」
連れてこられたのは、体育館のエントランス。
ちらほらと横を通る人はいても、誰も私たちのことは気にしていないだろう。
「●●ちゃん、応援に来てくれてたんだね」
そう言って私の方へ向き直して言う徹。
試合直後で疲れているはずなのに、なんでこんなにも爽やかなのだろう。
心做しか、汗の匂いさえもいい匂いに感じる。
……いけない、そんなことより労いの言葉を。
「お疲れ様。準決勝進出おめでとう」
「ありがとう!」
徹は優しく微笑む。
言うなら今だ。
「それと、私、徹に伝えたいことがあるの」
今、心臓が本当に激しくドキドキしている。
この正体が何なのか、思いを伝えたら分かるはずだ。
「あのね、徹。うまく話せないかもしれないんだけど……徹が以前私に言った“気付いたら好きになっていた”って気持ち、今なら分かる気がするの」
「●●ちゃん……」
徹の大きな瞳が、少し見開かれた。
「だって、ちゃんとした理由を言い表せないけど、私も徹のことが好きになっちゃったから……」
「はぁ〜」
私の告白を聞いた瞬間、徹はと大きなため息を吐いて、その場にしゃがみ込んでしまった。
「え?」
私も慌ててしゃがみ込み、彼の顔を伺う様に名前を呼んだ。
「徹?どうしたの?」
「何で先に言っちゃうかな!」
「え?」
「試合で格好良い姿を見せて、惚れさせてから告白しようと思っていたのに」
拗ねたような、悔しそうな声。
「ごめん」
「うーん」
徹は、子供みたいに唸る。
その姿が堪らなく愛おしい。
「どうしたら機嫌直る?」
その可愛い表情をもっと近くで見たくて、私は更に顔を近付けた。
次の瞬間、徹は顔を上げ、私の唇にチュッと一瞬だけ触れるような軽いキスをした。
「えっ……」
「機嫌直った」
呆気にとられている私を笑うように、徹は立ち上がった。
「さーて、ミーティングサボっちゃったから、そろそろ戻らないと」
「……」
「また後でちゃんとしたのをするから」
そう言って徹は、何の迷いもなくチームメイトの元へと戻って行った。
徹は高校生、徹は高校生。
振り回されてはダメ。
もし次があるなら、今度は私が振り回してやろう。
そう決意したものの、赤くなった顔が元に戻るまで、私はしばらくエントランスで動けないでいた。
ーーFinーー
激しいラリーの末、ホイッスルが鳴り響き、青葉城西の勝利が決まった。
準決勝進出だ。
接戦を制した青葉城西は対戦校と観客に向かって深々とお辞儀をした後に、控え席へと戻ってきた。
すると、待ってましたとばかりに、ファンの女の子たちがキャーキャーと黄色い声を上げながら、徹たちを囲っていく。
「及川さん!お疲れ様でした!格好良かったです」
「殺人サーブがキレキレでしたね!」
「素敵すぎて痺れちゃいました」
キラキラした笑顔を徹に向ける彼女たちを見て、私は一瞬たじろいだ。
徹に近付けない。
声をかけたかったけれど、やっぱり止めようかな……。
いや、ファンの子たちに圧倒されるな。
徹を信じるって決めたんでしょ。
誰かに「何あのおばさん」とヒソヒソ声で言われても気にせずに、私は女の子たちを掻き分けるようにして、少し乱暴に徹の目の前を陣取った。
「徹!」
名前を呼ぶと、徹は驚いたように目を丸くした後、すぐに笑顔を浮かべた。
「●●ちゃん……!ちょっと皆ごめんね~」
私の肩を抱いた徹は、周りの子たちに申し訳なさそうに謝り、そのまま人の少ない場所へと移動した。
……。
…………。
「ここならいいかな~」
連れてこられたのは、体育館のエントランス。
ちらほらと横を通る人はいても、誰も私たちのことは気にしていないだろう。
「●●ちゃん、応援に来てくれてたんだね」
そう言って私の方へ向き直して言う徹。
試合直後で疲れているはずなのに、なんでこんなにも爽やかなのだろう。
心做しか、汗の匂いさえもいい匂いに感じる。
……いけない、そんなことより労いの言葉を。
「お疲れ様。準決勝進出おめでとう」
「ありがとう!」
徹は優しく微笑む。
言うなら今だ。
「それと、私、徹に伝えたいことがあるの」
今、心臓が本当に激しくドキドキしている。
この正体が何なのか、思いを伝えたら分かるはずだ。
「あのね、徹。うまく話せないかもしれないんだけど……徹が以前私に言った“気付いたら好きになっていた”って気持ち、今なら分かる気がするの」
「●●ちゃん……」
徹の大きな瞳が、少し見開かれた。
「だって、ちゃんとした理由を言い表せないけど、私も徹のことが好きになっちゃったから……」
「はぁ〜」
私の告白を聞いた瞬間、徹はと大きなため息を吐いて、その場にしゃがみ込んでしまった。
「え?」
私も慌ててしゃがみ込み、彼の顔を伺う様に名前を呼んだ。
「徹?どうしたの?」
「何で先に言っちゃうかな!」
「え?」
「試合で格好良い姿を見せて、惚れさせてから告白しようと思っていたのに」
拗ねたような、悔しそうな声。
「ごめん」
「うーん」
徹は、子供みたいに唸る。
その姿が堪らなく愛おしい。
「どうしたら機嫌直る?」
その可愛い表情をもっと近くで見たくて、私は更に顔を近付けた。
次の瞬間、徹は顔を上げ、私の唇にチュッと一瞬だけ触れるような軽いキスをした。
「えっ……」
「機嫌直った」
呆気にとられている私を笑うように、徹は立ち上がった。
「さーて、ミーティングサボっちゃったから、そろそろ戻らないと」
「……」
「また後でちゃんとしたのをするから」
そう言って徹は、何の迷いもなくチームメイトの元へと戻って行った。
徹は高校生、徹は高校生。
振り回されてはダメ。
もし次があるなら、今度は私が振り回してやろう。
そう決意したものの、赤くなった顔が元に戻るまで、私はしばらくエントランスで動けないでいた。
ーーFinーー
