仮面売りの少女
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〜仮面売りの少女〜
今日も人通りが多い駅前の歩道に、簡易な折りたたみ机と作品を並べている。
手作りの指輪、ピアス、ブレスレット。
そして、ほんの気まぐれで作ってみた仮面。
自分なりの処女作だった。
だけど、通り過ぎていく人は今日も、チラリと目を向けるだけ。
ネット販売もしているけど、競争も激しくて注文はまばら。
それでも私は、誰かに見てもらいたくて、良い作品だと思ってもらいたくて、淡い期待を抱きながら販売する。
ーーーー
夕方の薄暗さが時間の経過を知らせる。
今日も1つも売れなかった。
がっかりしながら、そろそろ片付けようかと立ち上がろうとした、その瞬間だった。
1人の男性が近寄ってきた。
「失礼、見ても?」
「え、あ、はい!どうぞごゆっくり!」
彼はベージュのトレンチコートを身に纏い、黒のシルクハットを深く被っていた。
顔は半分も見えていない。
それなのに、どこか品のある仕草で私の仮面に手を伸ばす。
白地に黒の線で引かれた口と目のような模様で、表面はツルンとしたシンプルな仮面。
「これは、君の手作りかい?」
不思議と落ち着いた声に、私は少し緊張しながらも頷く。
「はい、全部自分で作ってます。中でもその仮面は初めて作ったもので……」
彼は両手で仮面をそっと持ち上げて眺めた。
着け心地を確かめるでもなく、面の内側や細工をじっくり観察している。
「もしよければ、試着してください」
私は小さな勇気を振り絞って声をかけた。
彼は1度私を見た後、静かに仮面を顔に当てる。
似合っていると言っていいのか分からないけれど、自分の作った作品なのだから贔屓目で見ても良いと思う。
しばらく無言のまま、彼は視線を前に向けていたが、やがて静かに問いかけてきた。
「……目元に穴が空いていないけど、なぜ前が見えるのかね?」
その質問を聞いた瞬間、少しだけ誇らしくなった。
彼が着けた仮面には、目や口のような模様はあるものの、実際の穴はない。
でも、彼の言うとおり、視界を遮るものはなく、見渡す限りクリアだ。
それは、私の個性のおかげ。
「私の個性『透過』の力を仮面に施しているんです」
「ほお……。素晴らしい……これを頂こう」
そう言って、彼は丁寧に代金を支払った。
「ありがとうございます!」
彼はシルクハットを軽くつまみ、お辞儀をして立ち去っていった。
「売れた……」
初めて仮面が誰かの手に渡った。
それだけで、今日という日が私にとって特別となった。
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