終わらない物語を終わらせよう

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「困りましたね」


彷徨う物語を探していたはずが、いつの間にか迷いの森を彷徨うことになってしまったクルトガ。

仕方がない、とすぐそこに見えている花畑で一休みすることにした。
ちょうど結末を奪われた物語も光り輝いていることだし。

花畑に腰を下ろすと、物語の方からクルトガの元へ近付いてきた。


『昔々お花を愛する少女がおりました。少女は醜い雑草を全て抜き、街中を美しい花でいっぱいにさせました。────』


物語はここで終わっている。


「せっかちさんですね。先にこの花畑を堪能させて欲しいものです」


クルトガは花畑に顔を近づけ、香を堪能した。
スー……ハァ……スー……ハァ……。


「うん、良い匂いだ」


インスピレーションが掻き立てられたのか、クルトガは筆を握った。


『昔々お花を愛する少女がおりました。少女は醜い雑草を全て抜き、街中を美しい花でいっぱいにさせました。しかし、色とりどりの美しい花に囲まれると、段々自身が醜く感じてしまいました。やがて、それが許せなくなった少女は自らの命も雑草と同じ運命を辿らせることにしたのでした。めでたしめでたし。』


物語の残留思念はすーっと弾けるように散っていった。


「花は脇役がいるからこそ美しく感じるものです」


そう言うと、綺麗に咲いている花をぐしゃっと踏み潰しながら、クルトガは迷いの森の出口を探し始めた。
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