終わらない物語を終わらせよう
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「やっと村に着いた」
教会から丸半日歩き続けて、クルトガは小さな村に着いた。
今晩はここで泊まるようだ。
宿を探していると、
「痛っ!」
走ってきた男の子とぶつかってしまった。
「ごめんな、ケガはないかい?」
「……」
尻もちをついた男の子に手を差し伸べたが、大丈夫だとも、ごめんさいとも言わずに無言で立ち上がり、また走り出した。
その代わりに一つの物語を落としていった。
クルトガは男の子の姿が見えなくなるのを確認すると、その小さな残留思念をつまみ上げた。
『昔々一人の子供がおりました。────』
物語はここで終わっている。
いつもよりも短い物語。
さくっと結末を書き足そうと筆を取り出そうとしたが、探しても探しても見当たらない。
その他のものはあるのに、よりによって筆だけが。
「やられた」
先程ぶつかってきた男の子にスられたようだ。
クルトガは仕方ない、と男の子が走っていった方へと歩き出した。
その道中で落ちている、小さな残留思念を拾い上げながら。
さながらヘンゼルとグレーテルの様。
『子供にとって世の中は不思議なことばかり。────』
物語の内容的に、男の子から落ちた物語に違いない。
『どうして?なぜ?どうやって?───』
『一つの謎が解ければ二つの謎が生まれます。───』
四つ目の残留思念を拾い上げると、小屋の前にたどり着いた。
男の子はこの中だろう。
ギイィと軋む扉を開けると、そこには誰もいなかった。
カビ臭い室内に埃を被った家具。
その中心部には光を失った空っぽの残留思念の器と、一本の筆。
クルトガはそれに触れると、今まで拾い上げた残留思念が一つに合わさり、器に入り込んだ。
『昔々一人の子供がおりました。子供にとって世の中は不思議なことばかり。どうして?なぜ?どうやって?一つの謎が解ければ二つの謎が生まれます。────』
「なるほど、これの続きを書け、と」
お望み通り書いて差し上げましょう。
クルトガは筆を取り、空に物語を紡いだ。
『昔々一人の子供がおりました。子供にとって世の中は不思議なことばかり。どうして?なぜ?どうやって?一つの謎が解ければ二つの謎が生まれます。この繰り返しで数え切れない謎が生まれました。いつしか子供は謎に飲み込まれてしまいました。めでたしめでたし。』
しかし、物語を終わらせたのに残留思念は消え散らない。
それどころか光の強さが増してきたかと思えば部屋にあった割れた姿見の中へ入っていった。
割れた姿見は正気を帯びたように輝きを取り戻した。
まるで鏡の中へ入ってこいと言わんばかりに。
「誘われているのか」
クルトガは少しだけ口角を上げて、躊躇なく鏡の中へと入っていった。
教会から丸半日歩き続けて、クルトガは小さな村に着いた。
今晩はここで泊まるようだ。
宿を探していると、
「痛っ!」
走ってきた男の子とぶつかってしまった。
「ごめんな、ケガはないかい?」
「……」
尻もちをついた男の子に手を差し伸べたが、大丈夫だとも、ごめんさいとも言わずに無言で立ち上がり、また走り出した。
その代わりに一つの物語を落としていった。
クルトガは男の子の姿が見えなくなるのを確認すると、その小さな残留思念をつまみ上げた。
『昔々一人の子供がおりました。────』
物語はここで終わっている。
いつもよりも短い物語。
さくっと結末を書き足そうと筆を取り出そうとしたが、探しても探しても見当たらない。
その他のものはあるのに、よりによって筆だけが。
「やられた」
先程ぶつかってきた男の子にスられたようだ。
クルトガは仕方ない、と男の子が走っていった方へと歩き出した。
その道中で落ちている、小さな残留思念を拾い上げながら。
さながらヘンゼルとグレーテルの様。
『子供にとって世の中は不思議なことばかり。────』
物語の内容的に、男の子から落ちた物語に違いない。
『どうして?なぜ?どうやって?───』
『一つの謎が解ければ二つの謎が生まれます。───』
四つ目の残留思念を拾い上げると、小屋の前にたどり着いた。
男の子はこの中だろう。
ギイィと軋む扉を開けると、そこには誰もいなかった。
カビ臭い室内に埃を被った家具。
その中心部には光を失った空っぽの残留思念の器と、一本の筆。
クルトガはそれに触れると、今まで拾い上げた残留思念が一つに合わさり、器に入り込んだ。
『昔々一人の子供がおりました。子供にとって世の中は不思議なことばかり。どうして?なぜ?どうやって?一つの謎が解ければ二つの謎が生まれます。────』
「なるほど、これの続きを書け、と」
お望み通り書いて差し上げましょう。
クルトガは筆を取り、空に物語を紡いだ。
『昔々一人の子供がおりました。子供にとって世の中は不思議なことばかり。どうして?なぜ?どうやって?一つの謎が解ければ二つの謎が生まれます。この繰り返しで数え切れない謎が生まれました。いつしか子供は謎に飲み込まれてしまいました。めでたしめでたし。』
しかし、物語を終わらせたのに残留思念は消え散らない。
それどころか光の強さが増してきたかと思えば部屋にあった割れた姿見の中へ入っていった。
割れた姿見は正気を帯びたように輝きを取り戻した。
まるで鏡の中へ入ってこいと言わんばかりに。
「誘われているのか」
クルトガは少しだけ口角を上げて、躊躇なく鏡の中へと入っていった。