不器用ちゃんと世話焼き君
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ーーおまけ(古森side)ーー
席替えをしてから気が付いたことがある。
それは後ろの席の◯◯さんが、驚くほど手先が不器用だってことに。
授業中、背後から「あ……っ」と焦るような声が聞こえたり、「ぐぬぬ……」と何かに苦戦する吐息が漏れてきたり。
気になって振り返れば、だいたい彼女はプリントを破いているか、指先に血を滲ませている。
あまりの頻度に放っておけなくて、つい手を出してしまう。
その度に、彼女は顔を真っ赤にして、消え入りそうな声で「ありがとう」と言った。
その反応がたまらなく可愛くて、俺はいつの間にか、彼女の些細な異変に誰よりも早く気付くようになった。
……さすがに、自分で投げたボールを自分の頭に当てる芸を見せられたときには、驚きすぎて助けるどころじゃなかったけれど。
ーーーー
最近、俺がやたらと◯◯さんの世話を焼いているせいか、クラスの女子たちからも頼られることが増えた。
「ちょっと古森君、これ運ぶの手伝ってくれない?」
「古森君、これ一緒にやってよ」
「古森、助けてー!!」
手が空いていれば断りはしないけれど、わざわざ俺を探し出してまで頼んでくるのは、少し違う気がした。
そのくらい、自分1人でもできるんじゃないの?
そう思いかけた瞬間、俺はハッとした。
◯◯さんのドジっぷりだって、客観的に見れば同じように感じる人がいるかもしれない。
でも、俺は彼女に対して煩わしいなんて、微塵も思ったことがなかった。
ああ、そうか……。
この感情は、ただの親切心だけじゃない。
世話を焼く名目がないと、彼女に話しかけるきっかけが作れないだけなんだ。
自分の恋心を自覚してからは、もう必死だった。
練習を切り上げて一緒に帰るチャンスを掴み、何か仲良くなるきっかけはないかと頭をフル回転させる。
けれど結局、気の利いた話題も見つからないまま、分かれ道に着いてしまった。
「じゃあ、俺こっちだから。また明日ね、◯◯さん」
残念な気持ちを隠して背を向けた、その時。
「……あのっ! 」
呼び止めた◯◯さんは、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
……きっと、いい話じゃない。
そう直感したけれど、俺は努めて穏やかに、彼女の言葉を待った。
「古森君、もう私の世話を焼かなくていいよ」
その言葉は、予想していたよりもずっと俺の胸に刺さった。
良かれと思っていた行動が、彼女には負担だったのか。
迷惑をかけて、こんな辛い顔をさせていたのか。
「俺、お節介だった?」
「古森君は悪くないの」
申し訳なさで胸が詰まる俺に、彼女は必死にフォローを入れる。
だけど、話を聞いていくうちに、どうやら彼女は大きな勘違いをしていることに気付いた。
俺が「みんなに優しい親切な人」?
……聖臣のフォローや、クラスメイトの頼み事を引き受けていたのを見て、そう思ったらしい。
だとして、なぜ彼女は「もう世話を焼かなくていい」なんて言ったんだ?
俺の勘違いでなければ、彼女も俺を意識してくれているからこそ、嫉妬したり、苦しくなったりしているんじゃないのか。
それなら、もう隠す必要はない。
「打算的なんだよ、俺。好かれたいから、必死に尽くしてただけ。だから、◯◯さんが思っているほど親切なヤツじゃない」
正直に白状した。
好かれたいから尽くしたこと。
仲良くなる方法が分からなかったこと。
そして、不器用なりに一生懸命な彼女に、心底惚れているということ。
「これからも世話、焼かせてもらえないかな?」
これは俺なりの、精一杯の告白だった。
なのに。
「ありがとう。だけど、やっぱりお世話はもういいかな」
……あれ?
もしかして、告白だって気付いていない?
あからさまにシュンとした俺を見て、彼女は慌てて言葉を継ぎ足した。
「嫌じゃないの!むしろ嬉しいんだけど……頼りっぱなしだと私、成長できない気がして……」
思わず笑いそうになった。
どこまでも彼女らしい。
そんな風に前を向いて頑張ろうとする強さに惹かれたんだってことを、再確認させられただけだった。
「分かった。成長しようとしているキミを邪魔したくないもんね。でも、どうしても助けが必要になったら、真っ先に俺を呼んで」
「うん。その時は、よろしくね!」
結局、彼女は最後まで俺の告白には気付かなかった。
手先だけじゃなくて、恋の駆け引きまで不器用なのかもしれない。
でも、そんなところも全部ひっくるめて愛おしいから、今はこれで充分。
それに、これからゆっくり口説いていけば良い。
遠ざかる彼女の背中を見送りながら、俺は少しだけ口角を上げた。
席替えをしてから気が付いたことがある。
それは後ろの席の◯◯さんが、驚くほど手先が不器用だってことに。
授業中、背後から「あ……っ」と焦るような声が聞こえたり、「ぐぬぬ……」と何かに苦戦する吐息が漏れてきたり。
気になって振り返れば、だいたい彼女はプリントを破いているか、指先に血を滲ませている。
あまりの頻度に放っておけなくて、つい手を出してしまう。
その度に、彼女は顔を真っ赤にして、消え入りそうな声で「ありがとう」と言った。
その反応がたまらなく可愛くて、俺はいつの間にか、彼女の些細な異変に誰よりも早く気付くようになった。
……さすがに、自分で投げたボールを自分の頭に当てる芸を見せられたときには、驚きすぎて助けるどころじゃなかったけれど。
ーーーー
最近、俺がやたらと◯◯さんの世話を焼いているせいか、クラスの女子たちからも頼られることが増えた。
「ちょっと古森君、これ運ぶの手伝ってくれない?」
「古森君、これ一緒にやってよ」
「古森、助けてー!!」
手が空いていれば断りはしないけれど、わざわざ俺を探し出してまで頼んでくるのは、少し違う気がした。
そのくらい、自分1人でもできるんじゃないの?
そう思いかけた瞬間、俺はハッとした。
◯◯さんのドジっぷりだって、客観的に見れば同じように感じる人がいるかもしれない。
でも、俺は彼女に対して煩わしいなんて、微塵も思ったことがなかった。
ああ、そうか……。
この感情は、ただの親切心だけじゃない。
世話を焼く名目がないと、彼女に話しかけるきっかけが作れないだけなんだ。
自分の恋心を自覚してからは、もう必死だった。
練習を切り上げて一緒に帰るチャンスを掴み、何か仲良くなるきっかけはないかと頭をフル回転させる。
けれど結局、気の利いた話題も見つからないまま、分かれ道に着いてしまった。
「じゃあ、俺こっちだから。また明日ね、◯◯さん」
残念な気持ちを隠して背を向けた、その時。
「……あのっ! 」
呼び止めた◯◯さんは、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
……きっと、いい話じゃない。
そう直感したけれど、俺は努めて穏やかに、彼女の言葉を待った。
「古森君、もう私の世話を焼かなくていいよ」
その言葉は、予想していたよりもずっと俺の胸に刺さった。
良かれと思っていた行動が、彼女には負担だったのか。
迷惑をかけて、こんな辛い顔をさせていたのか。
「俺、お節介だった?」
「古森君は悪くないの」
申し訳なさで胸が詰まる俺に、彼女は必死にフォローを入れる。
だけど、話を聞いていくうちに、どうやら彼女は大きな勘違いをしていることに気付いた。
俺が「みんなに優しい親切な人」?
……聖臣のフォローや、クラスメイトの頼み事を引き受けていたのを見て、そう思ったらしい。
だとして、なぜ彼女は「もう世話を焼かなくていい」なんて言ったんだ?
俺の勘違いでなければ、彼女も俺を意識してくれているからこそ、嫉妬したり、苦しくなったりしているんじゃないのか。
それなら、もう隠す必要はない。
「打算的なんだよ、俺。好かれたいから、必死に尽くしてただけ。だから、◯◯さんが思っているほど親切なヤツじゃない」
正直に白状した。
好かれたいから尽くしたこと。
仲良くなる方法が分からなかったこと。
そして、不器用なりに一生懸命な彼女に、心底惚れているということ。
「これからも世話、焼かせてもらえないかな?」
これは俺なりの、精一杯の告白だった。
なのに。
「ありがとう。だけど、やっぱりお世話はもういいかな」
……あれ?
もしかして、告白だって気付いていない?
あからさまにシュンとした俺を見て、彼女は慌てて言葉を継ぎ足した。
「嫌じゃないの!むしろ嬉しいんだけど……頼りっぱなしだと私、成長できない気がして……」
思わず笑いそうになった。
どこまでも彼女らしい。
そんな風に前を向いて頑張ろうとする強さに惹かれたんだってことを、再確認させられただけだった。
「分かった。成長しようとしているキミを邪魔したくないもんね。でも、どうしても助けが必要になったら、真っ先に俺を呼んで」
「うん。その時は、よろしくね!」
結局、彼女は最後まで俺の告白には気付かなかった。
手先だけじゃなくて、恋の駆け引きまで不器用なのかもしれない。
でも、そんなところも全部ひっくるめて愛おしいから、今はこれで充分。
それに、これからゆっくり口説いていけば良い。
遠ざかる彼女の背中を見送りながら、俺は少しだけ口角を上げた。
7/7ページ
