不器用ちゃんと世話焼き君
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部活を終え、体育館から外に出ると、夜の冷たい風が頬を撫でた。
ナオちゃんと一緒に帰ろうと歩き出した、その時。
「あ、◯◯さんたちも今帰り?」
聞き慣れた明るい声に心臓が跳ねる。
そこには、古森君と、縮こまっている佐久早君が立っていた。
どうして、よりによって今のタイミングなのよ……。
気まずさに私が黙り込んでしまうと、1番に口を開いたのは隣にいたナオちゃんだった。
「あ、私、今日は急いで帰らなきゃいけないんだった!古森、悪いけど私の代わりに●●と帰ってよ。じゃあね!」
「え、それは構わないけど……」
「よろしく!」
ナオちゃんは私にだけ見えるように素早くウインクをして、脱兎のごとく去っていった。
気を利かせたところで、告白なんてしないのに……。
そう心の中で呟いていると、今度は佐久早君が口を開いた。
「……俺も、今日は寄るところがあるから。先に行く」
「ドラッグストアだっけ?」
「……ああ。除菌アイテムが切れた」
そう言って、彼は私たちの帰り道とは反対の方向へ、足早に消えていった。
「行っちゃったね……」
「ごめんね、俺と2人きりになっちゃって」
「ううん、そんなことない! 」
むしろ嬉しい。
その言葉を飲み込んで、私は小さく首を振った。
「それならよかった。行こうか」
静かに並んで歩き出す。
せっかくの機会だ。
今、伝えないといけない。
もちろん、告白のことではない。
今かな……。
いや、次の角を曲がってから……。
今度こそ……。
いや、信号が青になったら……。
タイミングを計っているうちに、いつの間にか道が二手に分かれる角に辿り着いてしまった。
「じゃあ、俺こっちだから。また明日ね、◯◯さん」
「うん……あのっ!」
背を向けた彼のシャツの裾を、思わず掴みそうになる。
呼び止められた古森君は、不思議そうに立ち止まった。
「どうしたの?」
「あの……こんなこと言うの、心苦しいんだけど」
言葉が詰まる。
彼は急かすことなく、「ゆっくりでいいよ」と優しく微笑んで待ってくれた。
その優しさが、今は何よりも苦しい。
「古森君、もう私の世話を焼かなくていいよ」
「……え?」
「急にどうしたの?俺、お節介だった?」
「ううん。古森君は悪くないの。だけど、皆に親切にすると勘違いされちゃうよ。私みたいなのとかに……」
溢れ出した言葉に、古森君は呆然としたように目を見開いた。
そして、少しの沈黙の後、彼は小さく首を振った。
「俺、誰にでも優しいワケじゃないよ」
「え、だって佐久早君とか、今日のノートを運ぶのだって……」
「あれ、知らなかった?佐久早は俺の従兄弟。アイツ超ッッッ絶ネガティブだから、俺がフォローしてやらないといけないんだよ。今日のノートの件だって、頼まれたから運んだだけ。自分からやりたいなんて言ってないよ」
以前ナオちゃんが言いかけていたこと。
古森君と佐久早君の意外な関係。
そして、彼がみんなに親切なワケではないという事実。
「じゃあ、どうして私には……?」
「俺、◯◯さんと仲良くなりたくて。でも、どう話しかければいいか分からなかったから、キミが困るのを待って、世話を焼いてたんだ」
古森君は照れくさそうに頭を掻いた。
「打算的なんだよ、俺。好かれたいから、必死に尽くしてただけ。だから、◯◯さんが思ってるほど、親切なヤツじゃない」
「古森君……」
予想外の告白に、私の頭は真っ白になった。
打算。
仲良くなりたい。
好かれたい。
彼が私に向けていたのは、無差別の善意ではなく、私個人へのアプローチだったのだ。
「不器用なりに一生懸命な◯◯さんを、放っておけないなって思ったのは本当。……だからさ、これからも世話、焼かせてもらえないかな?」
彼は期待を込めた瞳で私を見つめる。
だけど、私は少しだけ胸を張って、笑って答えた。
「ありがとう。だけど、やっぱりお世話はもういいかな」
「そっか……」
あからさまに肩を落として、シュンとしてしまう古森君。
その姿に、私は慌てて言葉を付け足した。
「あのね!嫌じゃないの!むしろ嬉しいんだけど……頼りっぱなしだと私、成長できない気がして……」
古森君はゆっくりと顔を上げた。
「分かった。成長しようとしてるキミを邪魔したくないもんね。でも……」
彼は一歩だけ歩み寄り、私の目を真っ直ぐに見つめた。
「どうしても助けが必要になったら、真っ先に俺を呼んで」
「うん。その時は、よろしくね!」
これからは、古森君に恥じないよう、少しずつでも成長できたらいいな。
それは、不器用な私の小さな独立宣言だった。
ーーFinーー
ナオちゃんと一緒に帰ろうと歩き出した、その時。
「あ、◯◯さんたちも今帰り?」
聞き慣れた明るい声に心臓が跳ねる。
そこには、古森君と、縮こまっている佐久早君が立っていた。
どうして、よりによって今のタイミングなのよ……。
気まずさに私が黙り込んでしまうと、1番に口を開いたのは隣にいたナオちゃんだった。
「あ、私、今日は急いで帰らなきゃいけないんだった!古森、悪いけど私の代わりに●●と帰ってよ。じゃあね!」
「え、それは構わないけど……」
「よろしく!」
ナオちゃんは私にだけ見えるように素早くウインクをして、脱兎のごとく去っていった。
気を利かせたところで、告白なんてしないのに……。
そう心の中で呟いていると、今度は佐久早君が口を開いた。
「……俺も、今日は寄るところがあるから。先に行く」
「ドラッグストアだっけ?」
「……ああ。除菌アイテムが切れた」
そう言って、彼は私たちの帰り道とは反対の方向へ、足早に消えていった。
「行っちゃったね……」
「ごめんね、俺と2人きりになっちゃって」
「ううん、そんなことない! 」
むしろ嬉しい。
その言葉を飲み込んで、私は小さく首を振った。
「それならよかった。行こうか」
静かに並んで歩き出す。
せっかくの機会だ。
今、伝えないといけない。
もちろん、告白のことではない。
今かな……。
いや、次の角を曲がってから……。
今度こそ……。
いや、信号が青になったら……。
タイミングを計っているうちに、いつの間にか道が二手に分かれる角に辿り着いてしまった。
「じゃあ、俺こっちだから。また明日ね、◯◯さん」
「うん……あのっ!」
背を向けた彼のシャツの裾を、思わず掴みそうになる。
呼び止められた古森君は、不思議そうに立ち止まった。
「どうしたの?」
「あの……こんなこと言うの、心苦しいんだけど」
言葉が詰まる。
彼は急かすことなく、「ゆっくりでいいよ」と優しく微笑んで待ってくれた。
その優しさが、今は何よりも苦しい。
「古森君、もう私の世話を焼かなくていいよ」
「……え?」
「急にどうしたの?俺、お節介だった?」
「ううん。古森君は悪くないの。だけど、皆に親切にすると勘違いされちゃうよ。私みたいなのとかに……」
溢れ出した言葉に、古森君は呆然としたように目を見開いた。
そして、少しの沈黙の後、彼は小さく首を振った。
「俺、誰にでも優しいワケじゃないよ」
「え、だって佐久早君とか、今日のノートを運ぶのだって……」
「あれ、知らなかった?佐久早は俺の従兄弟。アイツ超ッッッ絶ネガティブだから、俺がフォローしてやらないといけないんだよ。今日のノートの件だって、頼まれたから運んだだけ。自分からやりたいなんて言ってないよ」
以前ナオちゃんが言いかけていたこと。
古森君と佐久早君の意外な関係。
そして、彼がみんなに親切なワケではないという事実。
「じゃあ、どうして私には……?」
「俺、◯◯さんと仲良くなりたくて。でも、どう話しかければいいか分からなかったから、キミが困るのを待って、世話を焼いてたんだ」
古森君は照れくさそうに頭を掻いた。
「打算的なんだよ、俺。好かれたいから、必死に尽くしてただけ。だから、◯◯さんが思ってるほど、親切なヤツじゃない」
「古森君……」
予想外の告白に、私の頭は真っ白になった。
打算。
仲良くなりたい。
好かれたい。
彼が私に向けていたのは、無差別の善意ではなく、私個人へのアプローチだったのだ。
「不器用なりに一生懸命な◯◯さんを、放っておけないなって思ったのは本当。……だからさ、これからも世話、焼かせてもらえないかな?」
彼は期待を込めた瞳で私を見つめる。
だけど、私は少しだけ胸を張って、笑って答えた。
「ありがとう。だけど、やっぱりお世話はもういいかな」
「そっか……」
あからさまに肩を落として、シュンとしてしまう古森君。
その姿に、私は慌てて言葉を付け足した。
「あのね!嫌じゃないの!むしろ嬉しいんだけど……頼りっぱなしだと私、成長できない気がして……」
古森君はゆっくりと顔を上げた。
「分かった。成長しようとしてるキミを邪魔したくないもんね。でも……」
彼は一歩だけ歩み寄り、私の目を真っ直ぐに見つめた。
「どうしても助けが必要になったら、真っ先に俺を呼んで」
「うん。その時は、よろしくね!」
これからは、古森君に恥じないよう、少しずつでも成長できたらいいな。
それは、不器用な私の小さな独立宣言だった。
ーーFinーー
