聞きたい、言えない
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古森君と気持ちを通わせたあの日から、不安は完全になくなったワケではないけれど、少しだけ軽くなった気がする。
そして、心境の変化も訪れた。
古森君が私の全部を好きと言ってくれたように、古森君が「凄い」と尊敬している佐久早君を、偏見で避けることなく、少しでも理解したいと思い始めた。
それが、彼の愛情に応える一つの方法だと感じたから。
ある日の休み時間、私は勇気を振り絞って古森君に話しかけた。
「ねえ、古森君……」
「何?●●ちゃん」
古森君は机の上で作業をしていた手を止めて、こちらに振り向いた。
「あのね、前に佐久早君のことが苦手って言って話を遮っちゃったことが気がかりで……。よかったら、またお話聞かせてくれないかな?」
古森君は一瞬驚いた表情を浮かべたけれど、直ぐに笑顔で承諾してくれた。
「もちろんだよ!」
身振り手振りで、佐久早君のバレーボールに対するストイックさや、普段の潔癖なエピソードを伝えてくる。
佐久早君のことを話す古森君は、本当に楽しそうだった。
こんなに生き生きとした彼の発言を前回遮ってしまったことが、申し訳なく思えてくるほどに。
「────って感じで、近寄り難いって思われてるけど、なんだかんだ放っておけないんだよな、アイツ」
古森君は楽しそうに言葉を締めくくった。
「そうなんだ」
「あ、そうだ!今日も居残り練習するから、よかったら見に来てよ」
「……考えておくね」
佐久早君のことを理解したいと決意したけれど、今日の今日で会うのはさすがに心の準備ができていない。
私は曖昧な返事しかできなかった。
だけど、休み時間が終わり、授業を受けながらも、考えるのは古森君のことばかり。
時間が経つに連れ、彼の嫌なことから目を逸らさない、真っ直ぐな姿勢を見習わないと、という気持ちが強くなってきた。
……。
…………。
部活が終わった後、私は体育館へと向かった。
体育館に近付くにつれ、大きくなるボールの弾む音。
入り口をそっと覗き込むと、中では古森君の言っていた通り、佐久早君と2人きりで、居残り練習に打ち込んでいた。
佐久早君の鋭いスパイクを、古森君が華麗にレシーブする。
全く違う性格の2人だけれど、バレーにおいては息がぴったり合っていた。
その真剣な練習を、私はしばらくの間、扉の陰から静かに見つめていた。
すると、古森君がこちらに気付き、満面の笑顔で手を振ってくれた。
「●●ちゃん!来てくれたんだ?」
古森君は私に向かって走り寄ってきたけれど、佐久早君は、それを咎めるように声を上げる。
「古森!まだ練習中だ!」
たった一瞬よそ見をしただけなのに、佐久早君は厳しい言葉を放つ。
その徹底した真面目さに、私は改めて彼のストイックさを感じた。
「ごめんごめん!だけど、ちょっとくらいいいだろ?」
古森君は佐久早君の強い口調にも全く動じず、構わず私に話しかけてくる。
「来ないと思ってたから、嬉しいよ!」
「あ……うん」
「よかったら中に入って見てってよ」
「そうしようかな……」
しばらく他愛もないお喋りをしていると、体育館の扉から、同じクラスの男子生徒が顔を覗かせた。
「あ、古森残っててよかったよ。英語の久保先生が探してたぞ?」
「え、なんだろう。ごめん、ちょっと行ってくる」
古森君は私に、
「すぐ戻るから待ってて!」
と言い残し、呼びに来た生徒と一緒に、慌ただしく体育館を出ていった。
途端に静寂が訪れる。
私は広い体育館の隅で、佐久早君と2人きりになった。
彼の整然とした存在感が、空気を重くしている気がした。
その居心地の悪さから、逃げてしまいたくなりそうな衝動に駆られたけれど、古森君から「待ってて」と言われた手前、動けなかった。
それに、今日は佐久早君のことを知りたくてここまでやってきたんだ。
私は緊張で声が震えながらも、佐久早君に話しかけた。
「あの、佐久早君……」
彼はボールを1つ手に取り、ゆっくりと私の方を見た。
「何だ」
その声は予想通りぶっきらぼうで、私は一度言葉を詰まらせた。
「えっと……佐久早君って、やっぱり凄く真面目だよね。いつも古森君と居残り練習しているんだよね?」
「アイツがお節介なだけだ。大袈裟なくらい。それに……」
「それに?」
佐久早君は、ボールを指で転がしながら、少し視線を外した。
「古森も言っていた、お前のこと、真面目すぎて放っておけない、と」
その言葉にハッとさせられた。
古森君は佐久早君に対しても“放っておけない”と言っていた。
もしかして古森君は、私が佐久早君と似ていると感じていたからこそ、構ってくれたのかもしれない。
佐久早君は、目を細めて話を続けた。
「アイツは才能だとか結果よりも、一生懸命な人間に目を奪われるんだ」
「目を……奪われる」
ネガティブ、几帳面、そして真面目さ。
私が嫌いだと思っていた部分は、古森君が放っておけないと感じる私の本質だった。
その事実に、私の胸は歓喜で震えた。
目の前の佐久早君は、相変わらず無愛想だったけれど、彼の言葉は古森君の気持ちを最も正確に代弁してくれていた。
「本人が気付いているかは知らないがな」
「そっか……。ありがとう、佐久早君」
私がようやくそう言うと、佐久早君は、
「別に」
とだけ答え、1人壁打ちを始めた。
その時、体育館の扉が開き、古森君が戻ってきた。
少し息を切らしている。
「ごめん、待たせた!大した用じゃなかった!……って、あれ?2人、なんだか仲良くなっていない?」
古森君は、不思議そうに私たちを交互に見た。
私は佐久早君を見て、そっと微笑んだ。
「うん。私と佐久早君は似ているねって話をしていたの」
私の言葉に、佐久早君は一瞬だけ目を丸くしたけれど、すぐにいつもの無表情に戻し、古森君に声をかけた。
「古森。早く練習に戻るぞ」
「お、おう」
古森君は首を傾げながらも、満面の笑顔で私の隣を離れた。
私は、もう二度と古森君の気持を疑うことはないだろう。
だって、古森君が私のことを好きになった最初のきっかけが“放っておけない”であったにせよ、今は私の全部を好きだと言ってくれたのだから。
その言葉があれば、私にはもう充分だった。
ーーFinーー
そして、心境の変化も訪れた。
古森君が私の全部を好きと言ってくれたように、古森君が「凄い」と尊敬している佐久早君を、偏見で避けることなく、少しでも理解したいと思い始めた。
それが、彼の愛情に応える一つの方法だと感じたから。
ある日の休み時間、私は勇気を振り絞って古森君に話しかけた。
「ねえ、古森君……」
「何?●●ちゃん」
古森君は机の上で作業をしていた手を止めて、こちらに振り向いた。
「あのね、前に佐久早君のことが苦手って言って話を遮っちゃったことが気がかりで……。よかったら、またお話聞かせてくれないかな?」
古森君は一瞬驚いた表情を浮かべたけれど、直ぐに笑顔で承諾してくれた。
「もちろんだよ!」
身振り手振りで、佐久早君のバレーボールに対するストイックさや、普段の潔癖なエピソードを伝えてくる。
佐久早君のことを話す古森君は、本当に楽しそうだった。
こんなに生き生きとした彼の発言を前回遮ってしまったことが、申し訳なく思えてくるほどに。
「────って感じで、近寄り難いって思われてるけど、なんだかんだ放っておけないんだよな、アイツ」
古森君は楽しそうに言葉を締めくくった。
「そうなんだ」
「あ、そうだ!今日も居残り練習するから、よかったら見に来てよ」
「……考えておくね」
佐久早君のことを理解したいと決意したけれど、今日の今日で会うのはさすがに心の準備ができていない。
私は曖昧な返事しかできなかった。
だけど、休み時間が終わり、授業を受けながらも、考えるのは古森君のことばかり。
時間が経つに連れ、彼の嫌なことから目を逸らさない、真っ直ぐな姿勢を見習わないと、という気持ちが強くなってきた。
……。
…………。
部活が終わった後、私は体育館へと向かった。
体育館に近付くにつれ、大きくなるボールの弾む音。
入り口をそっと覗き込むと、中では古森君の言っていた通り、佐久早君と2人きりで、居残り練習に打ち込んでいた。
佐久早君の鋭いスパイクを、古森君が華麗にレシーブする。
全く違う性格の2人だけれど、バレーにおいては息がぴったり合っていた。
その真剣な練習を、私はしばらくの間、扉の陰から静かに見つめていた。
すると、古森君がこちらに気付き、満面の笑顔で手を振ってくれた。
「●●ちゃん!来てくれたんだ?」
古森君は私に向かって走り寄ってきたけれど、佐久早君は、それを咎めるように声を上げる。
「古森!まだ練習中だ!」
たった一瞬よそ見をしただけなのに、佐久早君は厳しい言葉を放つ。
その徹底した真面目さに、私は改めて彼のストイックさを感じた。
「ごめんごめん!だけど、ちょっとくらいいいだろ?」
古森君は佐久早君の強い口調にも全く動じず、構わず私に話しかけてくる。
「来ないと思ってたから、嬉しいよ!」
「あ……うん」
「よかったら中に入って見てってよ」
「そうしようかな……」
しばらく他愛もないお喋りをしていると、体育館の扉から、同じクラスの男子生徒が顔を覗かせた。
「あ、古森残っててよかったよ。英語の久保先生が探してたぞ?」
「え、なんだろう。ごめん、ちょっと行ってくる」
古森君は私に、
「すぐ戻るから待ってて!」
と言い残し、呼びに来た生徒と一緒に、慌ただしく体育館を出ていった。
途端に静寂が訪れる。
私は広い体育館の隅で、佐久早君と2人きりになった。
彼の整然とした存在感が、空気を重くしている気がした。
その居心地の悪さから、逃げてしまいたくなりそうな衝動に駆られたけれど、古森君から「待ってて」と言われた手前、動けなかった。
それに、今日は佐久早君のことを知りたくてここまでやってきたんだ。
私は緊張で声が震えながらも、佐久早君に話しかけた。
「あの、佐久早君……」
彼はボールを1つ手に取り、ゆっくりと私の方を見た。
「何だ」
その声は予想通りぶっきらぼうで、私は一度言葉を詰まらせた。
「えっと……佐久早君って、やっぱり凄く真面目だよね。いつも古森君と居残り練習しているんだよね?」
「アイツがお節介なだけだ。大袈裟なくらい。それに……」
「それに?」
佐久早君は、ボールを指で転がしながら、少し視線を外した。
「古森も言っていた、お前のこと、真面目すぎて放っておけない、と」
その言葉にハッとさせられた。
古森君は佐久早君に対しても“放っておけない”と言っていた。
もしかして古森君は、私が佐久早君と似ていると感じていたからこそ、構ってくれたのかもしれない。
佐久早君は、目を細めて話を続けた。
「アイツは才能だとか結果よりも、一生懸命な人間に目を奪われるんだ」
「目を……奪われる」
ネガティブ、几帳面、そして真面目さ。
私が嫌いだと思っていた部分は、古森君が放っておけないと感じる私の本質だった。
その事実に、私の胸は歓喜で震えた。
目の前の佐久早君は、相変わらず無愛想だったけれど、彼の言葉は古森君の気持ちを最も正確に代弁してくれていた。
「本人が気付いているかは知らないがな」
「そっか……。ありがとう、佐久早君」
私がようやくそう言うと、佐久早君は、
「別に」
とだけ答え、1人壁打ちを始めた。
その時、体育館の扉が開き、古森君が戻ってきた。
少し息を切らしている。
「ごめん、待たせた!大した用じゃなかった!……って、あれ?2人、なんだか仲良くなっていない?」
古森君は、不思議そうに私たちを交互に見た。
私は佐久早君を見て、そっと微笑んだ。
「うん。私と佐久早君は似ているねって話をしていたの」
私の言葉に、佐久早君は一瞬だけ目を丸くしたけれど、すぐにいつもの無表情に戻し、古森君に声をかけた。
「古森。早く練習に戻るぞ」
「お、おう」
古森君は首を傾げながらも、満面の笑顔で私の隣を離れた。
私は、もう二度と古森君の気持を疑うことはないだろう。
だって、古森君が私のことを好きになった最初のきっかけが“放っておけない”であったにせよ、今は私の全部を好きだと言ってくれたのだから。
その言葉があれば、私にはもう充分だった。
ーーFinーー
