聞きたい、言えない
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古森君と付き合い始めて数日が経ったけれど、未だに私はこの関係に現実味を感じられずにいた。
教室の隅でひっそりとしている私と、クラスの中心にいる彼。
そんな2人の距離が、たったの一度の告白で埋まるものではない。
そんな、ある日のお昼休みのこと。
私は廊下にあるロッカーへと向かい、使い終わった午前中の教科書をしまい、午後に使う予定の教科書を取り出していた。
重い教材を抱えながら振り向いた瞬間、派手にぶつかる衝撃がやってきた。
ジュースを飲みながら歩いてきた古森君に、気が付かなかったのだ。
「うわっ、ごめん!」
私の手に持っていたルーズリーフが、彼のジュースから飛び散った液体を含み、オレンジ色の斑点となって広がっていく。
「あ……」
私の口から小さな声が漏れた。
視線は、濡れて歪んだ紙の表面に釘付けになる。
「ごめん、●●ちゃん!本当に、どうしよう……」
古森君は顔色を変え、すぐに自分の制服の袖でルーズリーフを懸命に擦るけれど、当たり前のように、濡れた紙が元に戻るはずもない。
「えっと、大丈夫だよ。それ、何も書いてないやつだから」
私はボソリと答えた。
これがもし大事な課題や、授業のノートであれば書き直さないといけない。
不幸中の幸いか、何も書かれていない、ただの新しい紙の束だった。
被害は、濡れてしまったそのルーズリーフのみ。
だけど、思ったよりも私の声は不機嫌だった。
こんなところで几帳面故の融通が利かない一面が出てしまうとは。
すると、古森君は私のその様子を見て、すぐに察したようだった。
「ごめん、大丈夫じゃないよね。俺、本当に最悪なことした……」
彼はいつもの明るい笑顔を完全に消し、真剣な面持ちで私に向き直った。
「あのさ、これ、弁償させて。すぐに購買でルーズリーフ買ってくるから。じゃなきゃ、●●ちゃんの気が済まないでしょ?」
その言葉に、私はハッとした。
私の性質を彼は理解し、否定せずに受け入れてくれた。
それが嬉しい反面、たかがルーズリーフをダメにされたくらいで不機嫌になってしまう私のどこがいいのか、疑問は深まるばかり。
「そこまでしなくても……」
「いや、させて。じゃあ、同じのあるか分からないけど、すぐに買ってくるから」
そう言って、古森君は文字通り全力疾走で購買へと駆け出していった。
彼の背中が小さくなるまで、私はロッカーの前で立ち尽くしていた。
……。
…………。
数分後、息を切らして戻ってきた古森君の手には、全く同じ種類の新品のルーズリーフがあった。
「はい、これ。新しいやつ。本当にごめんね」
彼の汗と、私のために走ってくれた真摯な気持ちに、胸の内のネガティブな感情はすっと引いていった。
どうしてここまでするの?
なんで私なんかのために。
古森君に聞きたいけれど、今はそれを口にする時ではない。
目の前の好意と、彼の誠実を素直に受け止めないと。
「……ありがとう、古森君」
私は彼の手からルーズリーフを受け取った。
教室の隅でひっそりとしている私と、クラスの中心にいる彼。
そんな2人の距離が、たったの一度の告白で埋まるものではない。
そんな、ある日のお昼休みのこと。
私は廊下にあるロッカーへと向かい、使い終わった午前中の教科書をしまい、午後に使う予定の教科書を取り出していた。
重い教材を抱えながら振り向いた瞬間、派手にぶつかる衝撃がやってきた。
ジュースを飲みながら歩いてきた古森君に、気が付かなかったのだ。
「うわっ、ごめん!」
私の手に持っていたルーズリーフが、彼のジュースから飛び散った液体を含み、オレンジ色の斑点となって広がっていく。
「あ……」
私の口から小さな声が漏れた。
視線は、濡れて歪んだ紙の表面に釘付けになる。
「ごめん、●●ちゃん!本当に、どうしよう……」
古森君は顔色を変え、すぐに自分の制服の袖でルーズリーフを懸命に擦るけれど、当たり前のように、濡れた紙が元に戻るはずもない。
「えっと、大丈夫だよ。それ、何も書いてないやつだから」
私はボソリと答えた。
これがもし大事な課題や、授業のノートであれば書き直さないといけない。
不幸中の幸いか、何も書かれていない、ただの新しい紙の束だった。
被害は、濡れてしまったそのルーズリーフのみ。
だけど、思ったよりも私の声は不機嫌だった。
こんなところで几帳面故の融通が利かない一面が出てしまうとは。
すると、古森君は私のその様子を見て、すぐに察したようだった。
「ごめん、大丈夫じゃないよね。俺、本当に最悪なことした……」
彼はいつもの明るい笑顔を完全に消し、真剣な面持ちで私に向き直った。
「あのさ、これ、弁償させて。すぐに購買でルーズリーフ買ってくるから。じゃなきゃ、●●ちゃんの気が済まないでしょ?」
その言葉に、私はハッとした。
私の性質を彼は理解し、否定せずに受け入れてくれた。
それが嬉しい反面、たかがルーズリーフをダメにされたくらいで不機嫌になってしまう私のどこがいいのか、疑問は深まるばかり。
「そこまでしなくても……」
「いや、させて。じゃあ、同じのあるか分からないけど、すぐに買ってくるから」
そう言って、古森君は文字通り全力疾走で購買へと駆け出していった。
彼の背中が小さくなるまで、私はロッカーの前で立ち尽くしていた。
……。
…………。
数分後、息を切らして戻ってきた古森君の手には、全く同じ種類の新品のルーズリーフがあった。
「はい、これ。新しいやつ。本当にごめんね」
彼の汗と、私のために走ってくれた真摯な気持ちに、胸の内のネガティブな感情はすっと引いていった。
どうしてここまでするの?
なんで私なんかのために。
古森君に聞きたいけれど、今はそれを口にする時ではない。
目の前の好意と、彼の誠実を素直に受け止めないと。
「……ありがとう、古森君」
私は彼の手からルーズリーフを受け取った。
