聞きたい、言えない
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〜聞きたい、言えない〜
冴えない私に春が来たのは、つい最近のこと。
それまでは、教室の隅でひっそりと読書をしたり、授業の予習をし、1人で過ごしていた。
「◯◯さん、また真面目ぶってるよ」
「必死すぎてウケる」
「ほっとけばいいじゃん」
ネガティブなクセに変なところで真面目さを発揮する私を、クラスメイトは遠巻きにし、時折冷たい言葉を投げかけた。
教室は私にとって、常に居心地の悪い場所だ。
そんな私に、同じクラスの古森元也君が告白してきたのは突然のことだった。
彼は、クラスの中心にいるような人。
背が高くて愛嬌もあって、誰にでも気さくに話しかけてくれる。
もちろん、こんな私にも優しく接してくれる彼に惹かれないワケもなく、私は二つ返事で告白を受けた。
ーーーー
それは、文化祭が終わり、片付け作業をしているときのこと。
一生懸命作った内装も、お祭りが終わればただのごみ。
それらをまとめ、体育館の裏にあるごみ捨て場へと運んでいた。
「●●ちゃん」
不意に声をかけられ振り返ると、そこには息をわずかに切らした古森君が立っていた。
私を探して、ここまで駆けてきてくれたのだろうか。
「どうしたの、古森君」
私は、手に持っていた段ボールを脇に置き、彼に向き直る。
「ちょっと話したいことがあるんだけど。今、時間ある?」
彼の真剣な雰囲気に、少し心臓が跳ねる。
話の内容が検討もつかず、戸惑いつつも頷いた。
「うん、大丈夫だよ」
彼は一度、周囲に人がいないかを確認するように視線を巡らせると、少し落ち着かない様子で私に向き直った。
その仕草が、普段の明るい彼とは違っていて、一層緊張が増す。
「単刀直入に言うね」
古森君は少し息を吸い込んだ。
その真っ直ぐな瞳が、私の目をしっかりと捉える。
「俺、●●ちゃんのことが好きです。俺と付き合ってください」
頭の中が真っ白になった。
信じられない。
人に好かれる要素なんて、1つもないはずなのに。
これは、私をからかうためのドッキリか、それともクラスの皆が仕組んだ罰ゲームなのか。
あるいは、文化祭という非日常の熱気に、彼自身が当てられてしまっただけなのか。
どちらにせよ、密かに想いを寄せていた彼からそんな言葉を聞くなんて、夢を見ているようだった。
戸惑いで声が出ない私に、彼は少し不安そうな表情を浮かべた。
「あの……、急で困らせてごめん。でも、ちゃんと●●ちゃんのことが好きなんだ。返事、聞かせてもらえるかな……?」
その真摯な眼差しに、私の迷いは一気に吹き飛んだ。
「……はい。私でよければ、お願いします」
私の返事に、彼の顔はパッと明るくなり、満面の笑顔になった。
その笑顔は、私に向けられた、今まで見た中で一番優しくて、少し照れたような笑みだった。
「本当に!?やった!ありがとう、●●ちゃん!」
彼は心の底から安堵し、喜んでいるようだった。
その姿を見て、私も胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
「こちらこそ……ありがとう」
私たちは、オレンジ色に染まる体育館を背景に、しばらくの間、言葉もなく見つめ合った。
その日、私は嬉しさと“なぜ”という拭えない疑問を抱えたまま、彼と恋人になった。
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