辛くて甘い
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ーーおまけ(爆豪side)ーー
中学に入ってすぐのことだ。
クソナードのデクが、興奮しながら余計な情報を運んできやがった。
「かっちゃん、知ってる?かっちゃんの個性に似ている子が同じ学年にいるらしいよ!」
「あ゛あ?知らねェよ、んなモブ!」
興味ねェふりをして突っぱねたが、内心では少しだけ好奇心が湧いていた。
どんな強個性だ、と。
だが、校内でそいつが個性を使っているところを見ることは1度もなかった。
つまんねェの。
期待外れだと吐き捨てて帰宅していたある日。
横切った公園で、そいつが1人で個性伸ばしをやってるのを見かけた。
観察のチャンスだ。
俺は足を止め、茂みの影から目を凝らす。
指を鳴らすと火花が散る。
確かに見た目は爆破に近い。
だが、威力がカスだ。
それに、指を鳴らす前に何か粉のようなものを撒いてやがる。
謎の粉、指を鳴らす動作、火花の威力……。
一目見て、俺はそいつの個性の正体を全て理解した。
可燃性のある粉を撒いて、それに摩擦を加えて爆発を起こすタイプ。
見た目こそ似ているが、全くの別物。
俺ならもっとマシに動ける。
粉の配合も、着火のタイミングも、全部が甘めェ。
気付いたら、俺はそいつの前に立っていた。
「テメェか、俺と似た個性を持っているって言うモブは」
「何か用……?」
「せっかくだから、色々と教えてやろうか」
柄にもねェ善意だった。
だが、そいつはあろうことか俺を真っ向から見据えて言い放ちやがった。
「いい。私は私のやり方で強くなるから」
……気に入らねェ。
弱いくせに生意気だ。
「へッ! そうかよ!」
吐き捨てて去ったが、胸の奥はざわついていた。
精々足掻いてろ。
似た個性だってんなら、お前が弱いままだと俺の個性まで見下される。
……とっとと強くなりやがれ。
けれど、俺は名前も知らねェモブに、無意識に期待を寄せていた。
ーーーー
次にまともに会話したのは、高校に入ってすぐだった。
食堂でメシを食っていると、面識のねェ女に絡まれた。その後ろで、縮こまって隠れているのが、あの時のモブ、●●だった。
「誰かと思えば、モブじゃねェか」
「ひ、久しぶり……爆豪君……」
なんだそのツラは。
あの時、俺を拒絶した強気な目はどこへ行った。
自信のねェ、陰気臭い顔。
本当にあの時と同じ奴かよ。
連れの女が「コツを教えろ」だの図々しいことを抜かしてきた。
腹が立って、俺は過去の意趣返しをぶつけてやった。
1度俺の善意を断った奴に、2度目はねェ。
だが、●●は怒るでもなく謝ってきやがった。
面白くねェ。
全然、面白くねェ。
1人残されたテーブルで、俺は苛立ちの正体を探した。
俺は●●にどうなって欲しいんだ。
強くなって欲しいのか、それとも……。
「あ゛あ!!クソ、分からねェ!!」
考えるより先に足が動いていた。
「おい、モブ!!」
「!?」
呼び止めた時の、心臓が口から出そうなほど驚いた顔。
「どうしても強くなりてェってんなら、教えてやらなくもねえ」
俺なりの精一杯の歩み寄り。
連れの女が勝手に返事をしたのが癪だが、まあいい。
「おう、じゃあ決まりな。さっそく今日の授業後に訓練場に来い」
あーあ、自分で言っておいて授業後に特訓とか面倒くせェ。
そう思いながらも、俺は満足げにその場を後にした。
ーーーー
逸る気持ちを抑えて訓練場へ向かったが、約束の時間を過ぎても●●は来ねェ。
……逃げたか。
あんな根性なしに成り下がったのか。
殺気がピークに達した頃、ようやくアイツが姿を現した。
「遅せェぞ!! モブ!! 舐めてんのか!!」
腹を押さえて猫背で歩く姿。
そんなに俺との特訓が嫌か。
知るか。
やるっつったらやるんだよ。
アイツのスタイルは相変わらず非効率だった。
指先だけの着火。
全身を使えと提案しても言い訳ばかり。
腹が立つが、なぜか放り出す気にはなれなかった。
見本を見せ、スピードを叩き込む。
「今日はこの辺にしてやる」
「あ、ありがとう……ゼェ……ございました……ゼェッ……」
ボロ雑巾のようになりながらも、アイツは最後まで付いてきた。
その根性がまだ死んでいなかったことが、妙に嬉しかった。
……嬉しかった?
よく分からねェ感情を振り払い、明日も強制的に特訓を取り付けた。
もっと一緒にいたい。
そう思った俺は、筋肉への栄養だの何だの、もっともらしい理屈を並べて飯に誘い出した。
ーーーー
連れて行ったのは、俺の行きつけ。
アイツは俺の勧めた麻婆豆腐を頼んだが、一口食うなり卓上の辛味パウダーをドバドバとかけやがった。
「お前……激辛党かよ」
呆れたふりをして言ったが、中学の頃のアイツがそんな食い方をしていた記憶はねェ。
俺自身辛い物好きだから、少しでも辛い物に定評があるやつには勝負を吹っかけていたから覚えているだけで、決してストーカーではない。
ただ、コイツの辛い物への執念は異常さを感じた。
もしかして……。
違和感の原因を確認したくて翌日も誘ったが、家庭の事情だの小遣いだので断られ続けた。
確かに、俺も昨日はババアに飯いらないなら連絡しろ、と殴られた。
「分かったよ」
それからも断られ続け1週間が経った。
動きは見違えるほど良くなったが、反比例するように顔色が悪くなっていく。
日に日に悪化していく様に我慢の限界が来て問い詰めると、アイツは「ちゃんとしてる証明」として俺を家に招きやがった。
願ってもねェ。
あんな異常な食生活を常にしてるのか、この目で確かめてやる。
別にそのためであって、こいつの作った飯が食えるのが嬉しいワケではない。
うん、そうだ。
自宅でのアイツは、手際よく料理を始めた。
制服の上からエプロンを締めた後ろ姿が、……妙に、可愛く見えた。
……チッ、今日の俺はどうかしてる。
邪念を振り払い、出された麻婆豆腐を食う。
「意外と旨ェ」
嘘、本当はめちゃくちゃ旨かった。
だが、案の定●●は、また赤い粉で皿を埋め尽くそうとしやがった。
かけ過ぎだと制しても聞かない。
「……いつからだ」
「え?」
「いつから、そんなに辛い物食うようになった」
「……雄英に入って、すぐかな」
確信した。
●●は好きで食ってるんじゃない。
痛覚を麻痺させて、ストレスを誤魔化してるだけだ。
「……ストレス、発散させてやろうか」
「爆豪君……?」
言葉の代わりに、唇を奪った。
柔らかくて、しっとりして、唐辛子のピリついた味がする。
「んっ……ぅ」
溢れた吐息に我に返る。
やりすぎたか、と思ったが、アイツの瞳には拒絶の色なんてなかった。
むしろ、もっと欲しがっているような……。
その顔をもっと見たい。
俺のことで頭をいっぱいにしたい。
そこでようやく、俺は自分の執着の正体に気付いた。
「……まだ足りない」
なんて、煽るようなことを抜かす●●に、俺は獲物を仕留める直前のような、凶悪な笑みを浮かべた。
中学に入ってすぐのことだ。
クソナードのデクが、興奮しながら余計な情報を運んできやがった。
「かっちゃん、知ってる?かっちゃんの個性に似ている子が同じ学年にいるらしいよ!」
「あ゛あ?知らねェよ、んなモブ!」
興味ねェふりをして突っぱねたが、内心では少しだけ好奇心が湧いていた。
どんな強個性だ、と。
だが、校内でそいつが個性を使っているところを見ることは1度もなかった。
つまんねェの。
期待外れだと吐き捨てて帰宅していたある日。
横切った公園で、そいつが1人で個性伸ばしをやってるのを見かけた。
観察のチャンスだ。
俺は足を止め、茂みの影から目を凝らす。
指を鳴らすと火花が散る。
確かに見た目は爆破に近い。
だが、威力がカスだ。
それに、指を鳴らす前に何か粉のようなものを撒いてやがる。
謎の粉、指を鳴らす動作、火花の威力……。
一目見て、俺はそいつの個性の正体を全て理解した。
可燃性のある粉を撒いて、それに摩擦を加えて爆発を起こすタイプ。
見た目こそ似ているが、全くの別物。
俺ならもっとマシに動ける。
粉の配合も、着火のタイミングも、全部が甘めェ。
気付いたら、俺はそいつの前に立っていた。
「テメェか、俺と似た個性を持っているって言うモブは」
「何か用……?」
「せっかくだから、色々と教えてやろうか」
柄にもねェ善意だった。
だが、そいつはあろうことか俺を真っ向から見据えて言い放ちやがった。
「いい。私は私のやり方で強くなるから」
……気に入らねェ。
弱いくせに生意気だ。
「へッ! そうかよ!」
吐き捨てて去ったが、胸の奥はざわついていた。
精々足掻いてろ。
似た個性だってんなら、お前が弱いままだと俺の個性まで見下される。
……とっとと強くなりやがれ。
けれど、俺は名前も知らねェモブに、無意識に期待を寄せていた。
ーーーー
次にまともに会話したのは、高校に入ってすぐだった。
食堂でメシを食っていると、面識のねェ女に絡まれた。その後ろで、縮こまって隠れているのが、あの時のモブ、●●だった。
「誰かと思えば、モブじゃねェか」
「ひ、久しぶり……爆豪君……」
なんだそのツラは。
あの時、俺を拒絶した強気な目はどこへ行った。
自信のねェ、陰気臭い顔。
本当にあの時と同じ奴かよ。
連れの女が「コツを教えろ」だの図々しいことを抜かしてきた。
腹が立って、俺は過去の意趣返しをぶつけてやった。
1度俺の善意を断った奴に、2度目はねェ。
だが、●●は怒るでもなく謝ってきやがった。
面白くねェ。
全然、面白くねェ。
1人残されたテーブルで、俺は苛立ちの正体を探した。
俺は●●にどうなって欲しいんだ。
強くなって欲しいのか、それとも……。
「あ゛あ!!クソ、分からねェ!!」
考えるより先に足が動いていた。
「おい、モブ!!」
「!?」
呼び止めた時の、心臓が口から出そうなほど驚いた顔。
「どうしても強くなりてェってんなら、教えてやらなくもねえ」
俺なりの精一杯の歩み寄り。
連れの女が勝手に返事をしたのが癪だが、まあいい。
「おう、じゃあ決まりな。さっそく今日の授業後に訓練場に来い」
あーあ、自分で言っておいて授業後に特訓とか面倒くせェ。
そう思いながらも、俺は満足げにその場を後にした。
ーーーー
逸る気持ちを抑えて訓練場へ向かったが、約束の時間を過ぎても●●は来ねェ。
……逃げたか。
あんな根性なしに成り下がったのか。
殺気がピークに達した頃、ようやくアイツが姿を現した。
「遅せェぞ!! モブ!! 舐めてんのか!!」
腹を押さえて猫背で歩く姿。
そんなに俺との特訓が嫌か。
知るか。
やるっつったらやるんだよ。
アイツのスタイルは相変わらず非効率だった。
指先だけの着火。
全身を使えと提案しても言い訳ばかり。
腹が立つが、なぜか放り出す気にはなれなかった。
見本を見せ、スピードを叩き込む。
「今日はこの辺にしてやる」
「あ、ありがとう……ゼェ……ございました……ゼェッ……」
ボロ雑巾のようになりながらも、アイツは最後まで付いてきた。
その根性がまだ死んでいなかったことが、妙に嬉しかった。
……嬉しかった?
よく分からねェ感情を振り払い、明日も強制的に特訓を取り付けた。
もっと一緒にいたい。
そう思った俺は、筋肉への栄養だの何だの、もっともらしい理屈を並べて飯に誘い出した。
ーーーー
連れて行ったのは、俺の行きつけ。
アイツは俺の勧めた麻婆豆腐を頼んだが、一口食うなり卓上の辛味パウダーをドバドバとかけやがった。
「お前……激辛党かよ」
呆れたふりをして言ったが、中学の頃のアイツがそんな食い方をしていた記憶はねェ。
俺自身辛い物好きだから、少しでも辛い物に定評があるやつには勝負を吹っかけていたから覚えているだけで、決してストーカーではない。
ただ、コイツの辛い物への執念は異常さを感じた。
もしかして……。
違和感の原因を確認したくて翌日も誘ったが、家庭の事情だの小遣いだので断られ続けた。
確かに、俺も昨日はババアに飯いらないなら連絡しろ、と殴られた。
「分かったよ」
それからも断られ続け1週間が経った。
動きは見違えるほど良くなったが、反比例するように顔色が悪くなっていく。
日に日に悪化していく様に我慢の限界が来て問い詰めると、アイツは「ちゃんとしてる証明」として俺を家に招きやがった。
願ってもねェ。
あんな異常な食生活を常にしてるのか、この目で確かめてやる。
別にそのためであって、こいつの作った飯が食えるのが嬉しいワケではない。
うん、そうだ。
自宅でのアイツは、手際よく料理を始めた。
制服の上からエプロンを締めた後ろ姿が、……妙に、可愛く見えた。
……チッ、今日の俺はどうかしてる。
邪念を振り払い、出された麻婆豆腐を食う。
「意外と旨ェ」
嘘、本当はめちゃくちゃ旨かった。
だが、案の定●●は、また赤い粉で皿を埋め尽くそうとしやがった。
かけ過ぎだと制しても聞かない。
「……いつからだ」
「え?」
「いつから、そんなに辛い物食うようになった」
「……雄英に入って、すぐかな」
確信した。
●●は好きで食ってるんじゃない。
痛覚を麻痺させて、ストレスを誤魔化してるだけだ。
「……ストレス、発散させてやろうか」
「爆豪君……?」
言葉の代わりに、唇を奪った。
柔らかくて、しっとりして、唐辛子のピリついた味がする。
「んっ……ぅ」
溢れた吐息に我に返る。
やりすぎたか、と思ったが、アイツの瞳には拒絶の色なんてなかった。
むしろ、もっと欲しがっているような……。
その顔をもっと見たい。
俺のことで頭をいっぱいにしたい。
そこでようやく、俺は自分の執着の正体に気付いた。
「……まだ足りない」
なんて、煽るようなことを抜かす●●に、俺は獲物を仕留める直前のような、凶悪な笑みを浮かべた。
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