辛くて甘い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
1日の授業が終わった。
いつもなら真っ直ぐ帰路につけるはずなのに、今日はそういうワケにはいかない。
隣の席のアンナを見ると、「ファイト!」と言わんばかりの表情でウインクを飛ばしてきた。
他人事だと思って……。
ため息を飲み込み、重い腰を上げる。
お昼にタバスコをかけすぎたせいか、はたまた爆豪君に会うのが億劫だからか、胃がキリキリと痛む。
お腹を押さえながら、トロトロと牛歩のごとく訓練場に向かうと、着いた頃には約束の時間を数分過ぎていた。
「遅せェぞ!!モブ!!舐めてんのか!!」
「ご、ごめん……」
案の定、既に準備を終えていた爆豪君の怒号が響く。
彼は苛立たしげに指の関節を鳴らすと、一切の猶予をくれなかった。
「んじゃ、さっそく始めんぞ。構えろ」
地獄のような特訓が始まった。
……。
…………。
「チマチマ指で摩擦を起こすから弱 ェんだよ。使えるもんはなんでも使え。腕でも脚でも摩擦起こせんだろ!」
「だって……」
私の戦闘スタイルは、片手で可燃性の粉塵を撒き、もう片方の指パッチンで引火させるものだ。
それが1番スピーディーで、確実。
けれど、彼はその効率すらも生温いと切り捨てる。
「黙れ、言い訳禁止だ!」
そんな無茶な……。
仕方がなく言われた通り、粉塵を散らしながら腕や脚を激しく擦り合わせて着火を試みる。
だけど、やはり慣れない動きは俊敏性に欠け、隙だらけになってしまう。
ほら、やっぱり思った通りじゃない……。
そう心中で毒づいた瞬間、彼の視線がさらに鋭くなった。
「違 ェ!!モブてめェわざとか?!動きが鈍すぎる!!」
「わざとじゃ……」
反論する余裕すら奪われる。
それからは、個性の使い方というよりも、地獄のようなスピード強化の反復練習だった。
こんなことなら、やっぱり頼まなければよかった。
後悔が頭をよぎるけれど、止まることは許されない。
「今日はこの辺にしてやる」
「あ、ありがとう……ゼェ……ございました……ゼェッ……」
地面に手をつき、酸素を吸うのでやっとの私に、彼は冷めた目で見下ろした。
「クソダセェな、この程度でへばんなよ」
悔しいけれど、言葉が出ない。
見本として動いた彼は、私以上の運動量をこなしながら、呼吸1つ乱れていないのだ。
これがヒーロー科。
これが、爆豪勝己。
「明日もやるからな。遅れるなよ」
「えー……いつまでやるつもり?」
「お前ができるようになるまでだ」
「……暇なの?」という言葉を飲み込む。
なぜここまで執着されるのか分からないけれど、彼の眼差しには、中学の時のような単なる見下しではない、奇妙な熱が混じっている気がした。
「返事は?!」
「はい……っ」
「よし。じゃあ飯食いに行くぞ。立て」
「え、いいよ別に。疲れたし帰りたい……」
「あ゛あ?壊れた筋肉に栄養を吸収させるまでが訓練のセットだ。来い」
もっともらしい理由を突き付けられて、私はボロボロの体のまま、彼に連れられて夜の飲食街へと向かった。
……。
…………。
「俺の行きつけの店だ」
連れてこられたのは、年季の入った町中華屋さん。
香ばしい油とスパイスの匂いが鼻をくすぐり、空腹を刺激する。
辛いものが食べたいと思っていた今の気分には、ちょうどいいかもしれない。
私は彼の勧めるまま、看板メニューの麻婆豆腐を注文した。
「わー、美味しそう……」
「美味そうじゃねェ。美味ぇんだよ。食え」
一口、蓮華ですくって口に運ぶ。
……確かに美味しい。
だけど、今の私の疲労を吹き飛ばすには、まだ足りない。
私は卓上にあった辛味パウダーを手に取ると、真っ赤な麻婆豆腐の上へ、山になるくらい振りかけた。
「お前……激辛党かよ」
爆豪君が、初めて見るような引いた表情で私を見ている。
「え? 普通だよ。この方が美味しいし」
私は平然と、劇物のような色に変貌した麻婆豆腐を口に運んだ。
舌が、喉が、胃が、強烈な刺激に歓喜する。
これくらい痛くないと、食べた気がしない。
「……ふぅ。ごちそうさま」
あっという間に完食した私を見て、爆豪君は一瞬だけ呆れたように鼻を鳴らす。
だけど、少しだけ口角が上がっているように見えた。
いつもなら真っ直ぐ帰路につけるはずなのに、今日はそういうワケにはいかない。
隣の席のアンナを見ると、「ファイト!」と言わんばかりの表情でウインクを飛ばしてきた。
他人事だと思って……。
ため息を飲み込み、重い腰を上げる。
お昼にタバスコをかけすぎたせいか、はたまた爆豪君に会うのが億劫だからか、胃がキリキリと痛む。
お腹を押さえながら、トロトロと牛歩のごとく訓練場に向かうと、着いた頃には約束の時間を数分過ぎていた。
「遅せェぞ!!モブ!!舐めてんのか!!」
「ご、ごめん……」
案の定、既に準備を終えていた爆豪君の怒号が響く。
彼は苛立たしげに指の関節を鳴らすと、一切の猶予をくれなかった。
「んじゃ、さっそく始めんぞ。構えろ」
地獄のような特訓が始まった。
……。
…………。
「チマチマ指で摩擦を起こすから
「だって……」
私の戦闘スタイルは、片手で可燃性の粉塵を撒き、もう片方の指パッチンで引火させるものだ。
それが1番スピーディーで、確実。
けれど、彼はその効率すらも生温いと切り捨てる。
「黙れ、言い訳禁止だ!」
そんな無茶な……。
仕方がなく言われた通り、粉塵を散らしながら腕や脚を激しく擦り合わせて着火を試みる。
だけど、やはり慣れない動きは俊敏性に欠け、隙だらけになってしまう。
ほら、やっぱり思った通りじゃない……。
そう心中で毒づいた瞬間、彼の視線がさらに鋭くなった。
「
「わざとじゃ……」
反論する余裕すら奪われる。
それからは、個性の使い方というよりも、地獄のようなスピード強化の反復練習だった。
こんなことなら、やっぱり頼まなければよかった。
後悔が頭をよぎるけれど、止まることは許されない。
「今日はこの辺にしてやる」
「あ、ありがとう……ゼェ……ございました……ゼェッ……」
地面に手をつき、酸素を吸うのでやっとの私に、彼は冷めた目で見下ろした。
「クソダセェな、この程度でへばんなよ」
悔しいけれど、言葉が出ない。
見本として動いた彼は、私以上の運動量をこなしながら、呼吸1つ乱れていないのだ。
これがヒーロー科。
これが、爆豪勝己。
「明日もやるからな。遅れるなよ」
「えー……いつまでやるつもり?」
「お前ができるようになるまでだ」
「……暇なの?」という言葉を飲み込む。
なぜここまで執着されるのか分からないけれど、彼の眼差しには、中学の時のような単なる見下しではない、奇妙な熱が混じっている気がした。
「返事は?!」
「はい……っ」
「よし。じゃあ飯食いに行くぞ。立て」
「え、いいよ別に。疲れたし帰りたい……」
「あ゛あ?壊れた筋肉に栄養を吸収させるまでが訓練のセットだ。来い」
もっともらしい理由を突き付けられて、私はボロボロの体のまま、彼に連れられて夜の飲食街へと向かった。
……。
…………。
「俺の行きつけの店だ」
連れてこられたのは、年季の入った町中華屋さん。
香ばしい油とスパイスの匂いが鼻をくすぐり、空腹を刺激する。
辛いものが食べたいと思っていた今の気分には、ちょうどいいかもしれない。
私は彼の勧めるまま、看板メニューの麻婆豆腐を注文した。
「わー、美味しそう……」
「美味そうじゃねェ。美味ぇんだよ。食え」
一口、蓮華ですくって口に運ぶ。
……確かに美味しい。
だけど、今の私の疲労を吹き飛ばすには、まだ足りない。
私は卓上にあった辛味パウダーを手に取ると、真っ赤な麻婆豆腐の上へ、山になるくらい振りかけた。
「お前……激辛党かよ」
爆豪君が、初めて見るような引いた表情で私を見ている。
「え? 普通だよ。この方が美味しいし」
私は平然と、劇物のような色に変貌した麻婆豆腐を口に運んだ。
舌が、喉が、胃が、強烈な刺激に歓喜する。
これくらい痛くないと、食べた気がしない。
「……ふぅ。ごちそうさま」
あっという間に完食した私を見て、爆豪君は一瞬だけ呆れたように鼻を鳴らす。
だけど、少しだけ口角が上がっているように見えた。
