辛くて甘い
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体育祭に向けて、私は友達のアンナに頼み、個性訓練に付き合ってもらった。
「アンナ、付き合ってくれてありがとう。助かったよ」
「気にしないで! 練習、またいつでも誘ってね。応援してるんだから!」
アンナの屈託のない笑顔に救われる。
だけど、私の心の内にある焦りまでは拭い去れない。
そんなとり留めのない話をしながら食堂へ向かうと、既に他クラスの生徒が利用していた。
「あ、A組だ……。やっぱりオーラが違うね」
アンナの視線の先は一段と騒がしかった。
その中心にいる彼を見つけて、アンナが声を弾ませる。
「あの爆豪勝己って人、●●と個性が似ているよね」
「……そうかな」
短く答えて、視線を逸らす。
ああ、まただ。
何度このやり取りを繰り返せばいいんだろう。
私の個性は『摩擦』。
指先を擦り合わせ、火打ち石のように火花を散らす。
それ自体は小さな灯りに過ぎない。
だけど、空気中に浮遊する可燃性の粉塵があれば、それを火種に引火させて、強力な爆発を引き起こすことができる。
対して、爆豪君の個性は『爆破』。
掌からニトロのような汗を出し、自ら爆発の要因を作り出せる、自己完結した完全な力。
外から見れば同じ爆発でも、私のは条件が揃わなければ成立しない借り物の威力。
彼のは、彼自身が起点となる圧倒的な暴力。
その違いを、誰よりも痛感しているのは私自身だ。
「そうだ、彼に爆破のコツでも教えてもらったら?」
「ご飯中だし、今じゃなくても……」
「頼んでみないと分からないじゃない。ほら、一緒に行ってあげるから!」
「あ、ちょっ!」
止める間もなかった。
強引に腕を引かれ、私はA組のテーブルへと連行される。
「ねえ、アナタ」
アンナが躊躇なく、爆豪君の視界に割り込む。
「あ゛あ?」
箸を止めた彼が、獲物を睨むような鋭い眼光を向けてくる。
私はその顔が苦手だ。
反射的に、アンナの背中に隠れてしまった。
「私の友達も爆発を起こさせるの個性なんだけど、よかったらコツとか教えてくれないかな?」
アンナが私の腕を掴み、無理やり彼の前へと引きずり出す。
逃げ場を失った私の視線が、彼の真っ赤な瞳とぶつかった。
「誰かと思えば、モブじゃねェか」
「ひ、久しぶり……爆豪君……」
「え!なになに2人共知り合いだったの?!」
アンナの驚く声が響く。
無理もない。
爆豪君の話は私にとってはタブー。
彼への劣等感で押し潰されそうになるから、名前すら出したことがなかったのだ。
「知らねェようだから教えてやるよ」
爆豪君は椅子の背もたれに深く体重を預け、嘲笑うように口角を上げた。
「コイツは1度、俺の善意を断ってんだわ。だから、俺はコイツに教える義理なんて微塵もねえ」
「……」
中学の時の、あの公園でのやり取り。
覚えているどころか、根に持っていた。
誤解を解いた方がいいのか。
だけど、この険悪な空気を見れば、さすがのアンナも諦めてくれるはず。
そう期待した私を余所に、アンナはさらに一歩踏み込んだ。
「え〜!昔のことは知らないけど、今は同じ雄英生。お互いヒーローを目指す者同士、仲良くしようよ!」
「アンナ、もういいって……!」
冷や汗が止まらない。
このままでは、彼の堪忍袋の緒が切れて、あらゆる物が爆破され兼ねない。
「爆豪君、いきなりごめんね。行こう、アンナ」
私は背中に刺すような彼の視線を感じながら、逃げ出すようにアンナの手を引いてその場を離れた。
「アンナ、付き合ってくれてありがとう。助かったよ」
「気にしないで! 練習、またいつでも誘ってね。応援してるんだから!」
アンナの屈託のない笑顔に救われる。
だけど、私の心の内にある焦りまでは拭い去れない。
そんなとり留めのない話をしながら食堂へ向かうと、既に他クラスの生徒が利用していた。
「あ、A組だ……。やっぱりオーラが違うね」
アンナの視線の先は一段と騒がしかった。
その中心にいる彼を見つけて、アンナが声を弾ませる。
「あの爆豪勝己って人、●●と個性が似ているよね」
「……そうかな」
短く答えて、視線を逸らす。
ああ、まただ。
何度このやり取りを繰り返せばいいんだろう。
私の個性は『摩擦』。
指先を擦り合わせ、火打ち石のように火花を散らす。
それ自体は小さな灯りに過ぎない。
だけど、空気中に浮遊する可燃性の粉塵があれば、それを火種に引火させて、強力な爆発を引き起こすことができる。
対して、爆豪君の個性は『爆破』。
掌からニトロのような汗を出し、自ら爆発の要因を作り出せる、自己完結した完全な力。
外から見れば同じ爆発でも、私のは条件が揃わなければ成立しない借り物の威力。
彼のは、彼自身が起点となる圧倒的な暴力。
その違いを、誰よりも痛感しているのは私自身だ。
「そうだ、彼に爆破のコツでも教えてもらったら?」
「ご飯中だし、今じゃなくても……」
「頼んでみないと分からないじゃない。ほら、一緒に行ってあげるから!」
「あ、ちょっ!」
止める間もなかった。
強引に腕を引かれ、私はA組のテーブルへと連行される。
「ねえ、アナタ」
アンナが躊躇なく、爆豪君の視界に割り込む。
「あ゛あ?」
箸を止めた彼が、獲物を睨むような鋭い眼光を向けてくる。
私はその顔が苦手だ。
反射的に、アンナの背中に隠れてしまった。
「私の友達も爆発を起こさせるの個性なんだけど、よかったらコツとか教えてくれないかな?」
アンナが私の腕を掴み、無理やり彼の前へと引きずり出す。
逃げ場を失った私の視線が、彼の真っ赤な瞳とぶつかった。
「誰かと思えば、モブじゃねェか」
「ひ、久しぶり……爆豪君……」
「え!なになに2人共知り合いだったの?!」
アンナの驚く声が響く。
無理もない。
爆豪君の話は私にとってはタブー。
彼への劣等感で押し潰されそうになるから、名前すら出したことがなかったのだ。
「知らねェようだから教えてやるよ」
爆豪君は椅子の背もたれに深く体重を預け、嘲笑うように口角を上げた。
「コイツは1度、俺の善意を断ってんだわ。だから、俺はコイツに教える義理なんて微塵もねえ」
「……」
中学の時の、あの公園でのやり取り。
覚えているどころか、根に持っていた。
誤解を解いた方がいいのか。
だけど、この険悪な空気を見れば、さすがのアンナも諦めてくれるはず。
そう期待した私を余所に、アンナはさらに一歩踏み込んだ。
「え〜!昔のことは知らないけど、今は同じ雄英生。お互いヒーローを目指す者同士、仲良くしようよ!」
「アンナ、もういいって……!」
冷や汗が止まらない。
このままでは、彼の堪忍袋の緒が切れて、あらゆる物が爆破され兼ねない。
「爆豪君、いきなりごめんね。行こう、アンナ」
私は背中に刺すような彼の視線を感じながら、逃げ出すようにアンナの手を引いてその場を離れた。
